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挑戦し続ける俳優カン・ドンウォン、『ベイビー・ブローカー』は「一番自然な演技を披露した作品かも」IUとの“観覧車”名シーンの舞台裏も明かす

  • 2022.6.26
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「『やっぱり!』と思いました。僕が誰よりも早く立ち上がったんですよ。ソン・ガンホさんよりも早かったです(笑)」。カン・ドンウォンは、第75回カンヌ国際映画祭にて、ソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞した瞬間を思い出しながらこう語った。

【写真を見る】地味めなファッションでも隠し切れないカン・ドンウォンのイケメンぶり。撮影現場でソン・ガンホと、弾けんばかりの笑顔

『ベイビー・ブローカー』(公開中)は“赤ちゃんポスト”をきっかけに、ひょんなことから赤ん坊の実母と男たちが養父母探しの旅に出る姿を描く。是枝裕和監督特有の、心に沁みるストーリーテリングやキャストたちの好演で話題となっている。MOVIE WALKER PRESSでは、IUことイ・ジウンのインタビューに続き、カン・ドンウォンのロングインタビューをお届け。

赤ん坊を盗んだ男たちが、ひょんなことから赤ん坊の実母と共に養父母探しの旅に出る姿を描く『ベイビー・ブローカー』 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
赤ん坊を盗んだ男たちが、ひょんなことから赤ん坊の実母と共に養父母探しの旅に出る姿を描く『ベイビー・ブローカー』 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

『ベイビー・ブローカー』は、第71回カンヌ国際映画祭にて『万引き家族』(18)で映画祭の最高賞であるパルム・ドールを獲得した是枝裕和監督が初めて手掛けた韓国映画だ。カン・ドンウォンは借金まみれのクリーニング屋店主サンヒョン(ソン・ガンホ)と共に、赤ん坊を養父母に結び付けるブローカーのドンス役を演じた。

「シナリオ作業にも参加できた、とても意味深い作品です」

元々是枝監督と面識があったカン・ドンウォンは、『ベイビー・ブローカー』のシナリオを韓国の製作・配給会社に届けるなど、プロデューサーとしての役割もしっかり果たした。「シナリオ作業から参加して、プロヂュースさせて頂いたのは初めてでした。とても楽しくて、意味深い時間でしたね」と振り返ったカン・ドンウォンは、「是枝監督の現場での撮り方が独特で新鮮でした」と語っていた。

【写真を見る】地味めなファッションでも隠し切れないカン・ドンウォンのイケメンぶり。撮影現場でソン・ガンホと、弾けんばかりの笑顔 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
【写真を見る】地味めなファッションでも隠し切れないカン・ドンウォンのイケメンぶり。撮影現場でソン・ガンホと、弾けんばかりの笑顔 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

「韓国で撮影したので、現場の雰囲気はいつもとあまり変わらない感じでしたが、是枝監督がモニターを見ていないのがおもしろいと思いました。たまに隣に立って僕の演技をがんがん見てくる時もあって、『ちょっとやりづらい』と思ったことも正直ありますね(笑)。是枝監督は感情をディティールにわたって捉えてくださる方なので、『モニターには映らないところを隣で直接見ているんだ』と思いました。だからこそ映画館のスクリーンで観た時、役者の感情がより生々しく伝わってくると思います。といっても、動線以外には、『こういう風に演技して』というディレクションがほぼなかったですけどね。そこも印象的でした」

第75回カンヌ国際映画祭に参加した是枝監督とキャストたち Photographs by Earl Gibson III / HFPA
第75回カンヌ国際映画祭に参加した是枝監督とキャストたち Photographs by Earl Gibson III / HFPA

初めての日本の監督との撮影は特に大きな問題等もなく順調だったが、強いて言うなら、是枝監督と美味しいものを食べに行けなかったのが心残りだったという。

「是枝監督もずっと韓国に滞在していたので、撮影がない日は『監督はなにをやっているんだろう、ちゃんと美味しいものを食べていてほしいな』と思ったりしました。僕のおすすめグルメ情報もいくつか紹介しました(笑)。外国人の友達が一人で韓国に来ていると、すごく気になるんじゃないですか。同じ感覚で、『本当は寂しがっているのではないかな』というのが、一番心配でした。ちょうど新型コロナウイルスの感染者が増えている時期に撮影が行われたので、一度も会食ができなかったのもすごく残念でした」

「いままでで一番力を抜いたけど、一番真心を尽くして演技しました」

『ベイビー・ブローカー』のドンスは児童養護施設で育った人物で、自分と似た境遇にいる子どもたちを養父母とつなぐためにブローカーとして活動する。同作でカン・ドンウォンは、共演するキャストたちを輝かせる役割も果たした。主役級のキャストが集った本作、なかには「カン・ドンウォンの演技をもっと観たい!」という人もいるかも知れないが、彼は自分が主役になることにこだわらない。それがカン・ドンウォンの役者としての心構えである。

カン・ドンウォンは児童養護施設で育ち、子どもたちを養父母とつなぐブローカーとして活動するドンス役を演じた [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
カン・ドンウォンは児童養護施設で育ち、子どもたちを養父母とつなぐブローカーとして活動するドンス役を演じた [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

「いままでで一番力を抜いて、自然な演技を披露した作品かも知れません。個人的には、こんなキャラクターが結構好きなんです。かっこよく見えたいとか、特別な人に見えたいとか、そういうのはまったくないので、プレッシャーとかストレスもないですしね。ただ、“完全にドンスになりきる”ということにはこだわっていました。児童養護施設出身の方々に会っていろんなお話を伺いながら、ドンスの心の痛みと悲しみを理解できるように努力しました。その方々にも映画を観ていただいたのですが、ソヨン(イ・ジウン)がサンヒョンとドンス、ヘジン(イム・スンス)に『生まれてくれてありがとう』と伝えるシーンが一番良かったと言われました。『皆で手をつないで泣いてしまいました。本当にありがとうございます』と。『生まれてくれてありがとう』は、おそらく、誰よりもドンスが一番聞きたかった言葉じゃないかと思います」

いつも和気あいあいだった撮影現場 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
いつも和気あいあいだった撮影現場 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

ほかにも是枝監督を含め、たくさんの観客があげた名場面の一つがドンスとソヨンの“観覧車シーン”である。カン・ドンウォンは「観覧車の中がかなり狭かったので、ホン・ギョンピョ撮影監督と僕とイ・ジウンさんの3人しか乗れなかったんです。高くなればなるほどトランシーバーの音も聞き取りにくくなってしまって、観覧車の下で待っていた是枝監督が『どんな風に撮影しているのだろう』と、居ても立っても居られない状態だったという話を後から聞きました(笑)。

初めて未婚の母役を演じたイ・ジウン。カン・ドンウォン演じるドンスが次第に心をほぐしていく [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
初めて未婚の母役を演じたイ・ジウン。カン・ドンウォン演じるドンスが次第に心をほぐしていく [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

監督のディレクションがなかったので少し不安はありましたが、ドンスが自ら自分の過去について語る唯一なシーンなので、真心を尽くして演技しなければならないと思いました。特にドンスがソヨンの目を手で隠すシーンを、意味深い感じに完成させたかったんです。ソヨンの涙が流れる直前に淡々と目元を隠したかったですが、タイミングがぴったり合って、まるで魔法のようなシーンが生まれました。是枝監督も大満足してくださって、とてもうれしかったです」と、ビハインドストーリーを明かした。

カン・ドンウォンが撮影現場で子役たちの保護者を自任したのも、もう一つのビハインドストーリー。イ・ジウンが「思わず私とも遊んでくださいとお願いするところでした」と語るほど、子役たちとまるで友達のように仲良くしていたという。

「現場のスタッフってみんなすごく忙しいんじゃないですか。子役の面倒をみたり一緒に遊んだりするのは、当然自分がやるべきことだと思いました。劇中ヘジンとは途中からずっと一緒にいるので、『仲良くしなきゃ!』と思ったのもありますけどね(笑)。子役たちはわいわい盛り上がっていればいるほど、リアルで自然な演技ができますしね。みんな本当に可愛くていい子たちで、とても癒されました」

「ハリウッド進出と映画製作など、挑戦したいことはまだいっぱいあります」

赤ん坊を盗んだ男たちが、ひょんなことから赤ん坊の実母と共に養父母探しの旅に出る姿を描く『ベイビー・ブローカー』 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
赤ん坊を盗んだ男たちが、ひょんなことから赤ん坊の実母と共に養父母探しの旅に出る姿を描く『ベイビー・ブローカー』 [c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

子役たち以外にも、意外なつながりが明らかになった。BTS(防弾少年団)のメンバーで“テテ”ことVが、アメリカでのスケジュール中、帰国予定を前倒しにして『ベイビー・ブローカー』のプレミア試写会に参加したのだ。「Vとは共通の知り合いがいて仲良くなりました。『カン・ドンウォンさんに会いたい、紹介して』ってお願いしたそうです。同郷ではないですが、割と故郷が近くて、『小さい頃から町でカン・ドンウォンさんの話をたくさん聞きました』と言っていました(笑)。実は僕はプレミア試写会はあまり好きじゃないんです。招待できる人数にも制限があって、呼びたくても呼べない人もたくさんいますしね。でもVが遠くから祝いに来てくれたすごくうれしかったです」

第75回カンヌ国際映画祭に参加したカン・ドンウォン [c]2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
第75回カンヌ国際映画祭に参加したカン・ドンウォン [c]2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

今年デビュー20周年を迎えたカン・ドンウォンは、新しい一歩を踏み出すための準備をしている。アメリカのクリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)とマネジメント契約を締結し、ハリウッド進出を目前にしている。また、映画製作にも本格的に挑戦する予定だ。

「前からシナリオは着実に書いていて、今年の夏に自分がシナリオを担当した映画が公開される予定で、来年の下半期にもう一本を披露できるかも知れないです。勿論僕も役者として出演します。基本、自分のことを考えながらシナリオを書いていますので(笑)。俳優としては中堅になってきましたが、まだまだチャレンジしたいことがいっぱいあります。おもしろいプロジェクトもたくさん企画していますので、楽しみにしてください」

取材・文/柳志潤

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