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仲間由紀恵、松雪泰子、松嶋菜々子 母親から朝ドラヒロインに受け継がれる“バトン”

  • 2022.6.23
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『ちむどんどん』写真提供=NHK

「どうせうちは幸せになれない。うちなんか死んでしまった方がいい」

幼い頃から悩み続けている“熱”の原因が東京の病院に行っても不明。どうしてうちだけ……?

塞ぎ込む娘・比嘉歌子(上白石萌歌)の言葉を聞いて、母の優子(仲間由紀恵)は一瞬、手を上げそうになるが、すぐに抱きしめる。そして「幸せになることを諦めないで生きていかないといけないわけ。そうしたら必ず『生きていてよかった』って思える時が来る」と諭した。『ちむどんどん』(NHK総合)第50話の冒頭シーンだ。

今まで、優子が感情をあらわにする描写がなかったため、この行動には驚いたが、1944年の沖縄大空襲を経験し、最愛の夫・賢三(大森南朋)も亡くした彼女にとって、簡単に「死」を口にした娘を許せなかったのかもしれない。優子が手を振り上げたときの表情は、怒りではなく、寂しさ・悲しみが刻まれていたように思う。

今回優子が歌子に発した「みんなうまくいかないことがある」といった言葉のチョイスや(歌子とみんなをくらべるのはちょっと……)、そもそもダメ兄貴の賢秀(竜星涼)に甘すぎる件など、ツッコミどころも多い彼女だが、本作では、おおらかで明るい優子を、仲間が好演しているのが印象的だ。時には泣かされたり、時には明るい気持ちになったり、あるいは「お母ちゃん何やってんの!」と注意したくなったり……。その類まれなる演技力とポテンシャルを生かして優子を見事に演じ切っている。

仲間といえば『TRICK(トリック)』(2000年~/テレビ朝日系)シリーズや、『ごくせん』(2002年~/日本テレビ系)シリーズなど、20代から名作に出演し続けてきた現在42歳の俳優。朝ドラでは、そんな彼女のように、20代の頃からドラマ・映画で主役クラスを張っていた俳優たちが、時を経て母親役を演じるケースも多々ある。年月が過ぎれば当たり前のことなのだが、なにか感慨深いものを感じる。

『半分、青い。』(2018年/NHK総合)で、ヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の母親・晴を演じたのは、松雪泰子(当時45歳)。東京に行って漫画家になると言ってきかない鈴愛に反対しながらも、最終的には認めることに。晴は、嬉しそうな娘を見て「あんたは楽しいばっかりでいいね。お母ちゃんは寂しくてたまらん。あんたはもう18かもしれんけど、お母ちゃんの中には3つのあんたも、5つのあんたも、13歳のあんたも全部いる。もう大人やって言われても……」と顔をくしゃくしゃにして涙を流した。彼女の溢れ出す言葉一つひとつに感情が揺さぶられた人も多くいただろう。

広瀬すずがヒロインを務めた『なつぞら』(2019年/NHK総合)では、育ての母・柴田富士子を松嶋菜々子(当時45歳)が熱演。東京にいる本当の家族に手紙を出したい幼い頃のなつ(粟野咲莉)が、申し訳なさそうに10銭を貸してほしいと懇願すると「なっちゃんは自分の思っていることを素直に言えばいいのよ。いくらでも手紙を出しなさい。書きなさい。謝らないで。お金のことなんて気にしないで」と伝えた。なつの言葉に目を赤らめる彼女の表情と訴えには、血のつながり以上のものを感じた。

こうした大事なシーンで、視聴者の魂を震わせる演技ができるのは、彼女たちの演技力や努力の賜物だが、若手の頃、先輩俳優が演じた“母親”と対峙した経験も作用しているのではないかと思う。

たとえば、松雪主演の『白鳥麗子でございます!』(1993年/フジテレビ系)にて麗子の母・花代を演じたのは水野久美、朝ドラ『ひまわり』(1996年/NHK総合)でヒロイン・南田のぞみ(松嶋菜々子)の母親・あづさを演じたのは夏木マリ、そして『TRICK(トリック)』では、野際陽子さんが山田奈緒子(仲間由紀恵)の母・里見を演じた。どの役者も言わずと知れた名優ばかりだ。20代の仲間たちにとって、先輩たちの演技を娘となって体感し、打ち返す作業は、何ものにも代えがたい出来事だったと予想する。

今回、松雪が『半分、青い。』ヒロインの永野に、松嶋が『なつぞら』ヒロインの広瀬に、そして仲間が『ちむどんどん』ヒロインの黒島結菜に……母から娘へと演技のバトンを渡しているが、上述したように母親役の3人も、もともとはバトンを受け取ってきた側なのである。

ここでは、先輩俳優と共演することで得られるものを、あえて“バトン”と表現したが、言うまでもなく、仲間たちがお役御免するという意味ではない。そのバトンには、役者として歩む中で、必要不可欠なものが詰まっているだろうし、母親役を務めた3人も持ち続けているものだと思う。親子関係という近い存在だからこそ、得られるものもあったはずなのだ。

永野、広瀬、黒島にとって、朝ドラという国民的作品の中で、先輩俳優とバトンの受け渡しができたのは貴重な経験になったに違いない。数十年後、そのバトンは彼女たちの手によって次世代の役者に受け継がれていくーー。(浜瀬将樹)

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