1. トップ
  2. 説明不可能、説明不要。伊豆の珍奇スポット『まぼろし博覧会』へようこそ!

説明不可能、説明不要。伊豆の珍奇スポット『まぼろし博覧会』へようこそ!

  • 2022.6.18
  • 2394 views
まぼろし博覧会 聖徳太子像
旗を振って去りゆく来館者を見送るセーラちゃん
『まぼろし博覧会』館長。出版社を経営する傍ら、伊豆エリアで『まぼろし博覧会』のほか、『ねこの博物館』、『怪しい少年少女博物館』を運営。セーラー服に身を包んだセーラちゃんとして、自ら来訪者をもてなす。写真は全力で旗を振って去りゆく来館者を見送るセーラちゃん。

現実社会だってカオスじゃないですか

『まぼろし博覧会』はね、現実世界のあらゆるデータを集めて圧縮した博物館なんです。言い方を変えれば、この100年の間を生きてきた人にとっての思い出のアルバムを現物で作っているようなものです。しかし、 しかし、人の価値観はそれぞれ違うし、生きてきた空間も場所も違う。

ならば、なんでも全部集めちゃったらいいんじゃないかと思ったんですよ。そうすれば、きっとどれかが心に引っかかる。そうして、昔のことを思い出して懐かしくなったり、元気になったりしてくれればいい。テーマは現実社会だから何が陳列されていてもいいんです。

よく『まぼろし博覧会』はカオスだって言われるけど現実社会だってカオスじゃないですか。

エントランス
『まぼろし博覧会』のエントランス

『まぼろし博覧会』では展示物に何の説明も加えていません。それが何かなんていう説明はどうでもいい。勝手に理解すればいいし、作った側の意図と違うとらえ方をされたって全然いいんです。そもそもコンセプトなんて作ってないですからね。

博物館なんて見に行ってもしょうがないんです。大英博物館に並んでる古代のものなんて全部、現代社会で必要とされなくなったもので誰の役にも立たないでしょう?一部の研究家以外、得るものなんかない。僕からすればフィギュアの人形を集めてるのと何も変わらないですよ。

聖徳太子像
「大仏殿」。元熱帯植物園だった建物の温室に高さ12メートルの巨大な聖徳太子像頭部や古代遺跡にまつわる品々が展示されている。
仁王像
ビジュアル系バンドのR指定から寄贈された、対の仁王像。ツアーのステージで使用されたものだという。
一体ずつ個性があるマネキン
至る所にマネキンが置かれている。「マネキンは全部、昭和時代のもの。今の大量生産のマネキンは似たり寄ったりで面白くないんですよ」。
古代エジプトの像のレプリカ
なぜか古代エジプトの像のレプリカが。見て回っているうちに、理由などどうでもよくなる。
牛頭馬頭神輿
東京藝術大学の学生が学園祭のために作った大迫力の「牛頭馬頭神輿」。制作したグループが引き取り手を探していたときに、『まぼろし博覧会』が名乗りを上げたという。

お宝なんてないですよ。でも、戻ってきたくなる

「昭和のメルヘン・おばあちゃんの部屋」というコーナーがあるんですが、ここにはある亡くなったおばあちゃんが集めていたコレクションを引き取って展示してあります。おばあちゃんがお小遣いで集めていたようなものだから、お宝なんかないんですよ。

でも、観に来た人が、“これ、うちのおばあちゃん家にもあった!”なんて言って喜んでくれるんです。すごく貴重な美術品だって一回見て知識として取り入れたら、もう興味なんかなくなっちゃう。

でも、おばあちゃんの家にあったような懐かしいものはもう一回見たくなる、その空間に戻りたくなるんです。庶民が生活の中で残していったものが大事なんです。

「メルヘンランド」
かわいいものを集めた「メルヘンランド」。
カラフルな人形と鯉のぼり
視界いっぱいに広がる極彩色の世界には感動すら覚える。
昭和のメルヘン・おばあちゃんの部屋
「昭和のメルヘン・おばあちゃんの部屋」。どこか懐かしく温かい気持ちになれる空間。

綺麗や上手なんて面白くない

『まぼろし博覧会』を作ることになった理由をよく聞かれますが、ただ突然やりたくなっただけなんです。“面白いことを思いついた、だったら作ろう”って。計画なんか立ててませんよ。計画した途端に面白くなくなりますから。

僕は出版社を経営していて、たくさん本を作ってきたけど、どの作家も大体、1作目が一番面白いんです。粗削りだけど本当に書きたかったことを書くから。『まぼろし博覧会』を作るのも、本を作るのも同じです。周りと同じことをしたってしょうがない。どうすれば興味を持ってもらえるかが一番大事なんです。

装丁だってプロに頼めばそれは綺麗なものができてきます。でも、綺麗なことに何の意味があるんだって。受け取る側の興味を惹かなければ何の意味もないですよね。僕なんか本のタイトルに誤植があったっていいと思ってる。その方が話題になりますから。

『まぼろし博覧会』に置いてある展示も基本的に傷んでも修理しないんです。ペンキが剥がれた方が面白いかもしれないし、マネキンの腕が取れた方が面白いかもしれない。歌だって音程通りに上手に歌っても面白くもなんともないし、世の中に上手な人はいっぱいいる。そんなのより、音痴な人が楽しく歌っている歌が一番面白いんです。

昭和の町を通り抜け
「昭和の時代を通り抜け」。昭和30年代頃の懐かしい町並みを再現。
異質なものが紛れ込む展示
昔の風景を再現しているはずが、脈絡もなく異質なものが紛れ込んでいる。一筋縄ではいかないカオスな様相を見せるのが『まぼろし博覧会』の醍醐味。
4畳半にフォーキーな世界
四畳半フォークな世界が広がる一角。昭和の時代に作られたマネキンの表情が味わい深い。
ランダムに並ぶ展示物
ガラスケースの中に並ぶ無数の展示品。系統立てて整理されているわけではないからこそ、懸命に見入ってしまう。

セーラちゃんは7年前から。別に女装したいわけじゃない

「セーラちゃん」になったのは、7年ほど前のことです。あるイベントを開催したときに“セーラー服おじさん”という方が来たんです。その姿を見て、自分もやってみようと思って、人形に着せてたセーラー服を着てみたんです。

するとツイッターで“セーラちゃん”として話題になってしまって。これは面白いことをやらざるを得ないなという感じで。最初はセーラー服だけだったんですが、そのうちラブライブの衣装を着たり、お客さんからもらったビキニを着たり、何でも着てやろうという気持ちになりました。

セーラちゃん
鮮やかなライトブルーのウィッグをつけたセーラちゃん。自身の写真集も発売している。
来館者と記念撮影をするセーラちゃん
来館者と写真をパチリ。決めポーズをとってくれるなどサービス精神旺盛。

別に女装をしたいわけではないんですよ。見た人が瞬間的に楽しくなってくれればそれでいいんです。かっこいい服を着てても誰も喜ばないじゃないですか。間抜けなほどかわいい衣装を着てお出迎えしたら、みんな緊張感が一気に解けて楽しい気分になってくれるんですよ。

お客さんが帰るときはいつもセーラちゃんの格好で旗を振ってお見送りします。セーラちゃんは出会った人みんなと友達になるんです。次いつ会えるかわからないけど、また来たいと思ってほしい。そのためなら旗を振るのなんて簡単なことです。

まぼろし島のマネキンたち
「まぼろし島」では、マネキンたちが舞台に並んで何かを表現。
敷地内に並ぶ鳥居
東京ドームのグラウンドとほぼ同じ面積という広大な敷地を摩訶不思議な建造物やオブジェが埋め尽くす。
おじさんの森
おじさんの頭部が木々の中に乱立する「おじさんの森」
おっさん神宮
おっさんを御神体としているおっさん神宮。周りには、美脚神社にコンピュータ神社。考えるのをやめて感じるしかない。

『まぼろし博覧会』はサブカルじゃないですよ

『まぼろし博覧会』が珍スポットだとかサブカルスポットだとは思ってないんですよ。現実社会をテーマにしているんだから、これ以上ないほどのメインカルチャーですよ。歌舞伎とストリップ、どっちがサブカルかって言われたら、僕にしてみればどっちもサブカルですよ。そんな分類はいらないんです。

僕は出版社を経営しているけど、本はまったく読まない。タイトルと目次だけ見て、内容は自分の頭で考えるんです。どこかの知らないおじさんが考えたことを読んだって仕方がないから。自分で考えることが大事なんです。

創造的なものを作り出すのに学ぶことなんて必要ない。データを集めて何かを作るなんてロボットのやることで人間のやることじゃない。考えに考え抜いてあり得ないものを創り出すのが人間なんです。学ぶより考えた方が、絶対に斬新なものができますから。

安井大サーカス
数十体もの剥製が詰め込まれた「安井大サーカス」。
まぼろし神社 ~魔界神社 祭礼の夕べ~
「まぼろし神社 ~魔界神社 祭礼の夕べ~」と題されたエリア。伊勢の元祖国際秘宝館が閉館する際に買い取ったというエロチックなオブジェや、お化け屋敷も顔負けのおどろおどろしい世界が繰り広げられる「薮病院」など、驚異の空間が広がる。
人形作家の林美登利が手がけた「マンドラゴラ」
「未確認生物博覧会」エリアには、アーティストが作った不可思議な作品が展示されている。写真は、人形作家の林美登利が手がけた「マンドラゴラ」。
充実のお土産コーナー
お土産コーナーも充実。セーラちゃんが経営する出版社から発行されている書籍も多数。全共闘ヘルメットなどコアなアイテムも。

Information

街道沿いの看板

まぼろし博覧会

静岡県伊東市富戸梅木平1310-1
TEL:0557-51-1127
営業時間:9:30〜17:00 (季節により開館時間に変動あり。お問い合わせください)
無休
入場料:大人1200円:小中学生600円

公式ホームページ:https://maboroshi.pandora.nu/

元記事で読む
の記事をもっとみる