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人に弱みを見せるのが苦手で、周囲から"怖い"という印象を持たれてしまい、悩んでいます(M市在住・30~34歳)

  • 2022.5.31
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は〜い皆さん!ごきげんよう。Sitakke連載【お悩み相談コラム】担当・満島てる子です。ライラックの花が香る季節となってきましたが、みなさんいかがお過ごしかしら?

あたしは、なんだか節目の季節というか。この5月、普段店長として働かせてもらっている「7丁目のパウダールーム」が、なんと19日で開店からまる5年を迎えることに。「怒涛の日々だったけれど、なんとかここまでやってこれたのね……」と、感慨深い気持ちに浸っていました。

Sitakke

この5年間、本当にたくさんの方々に店に来てもらいました。 お酒で盛り上がりたい元気な人から、あたしたちのくだらない話を聞きながらクスっと笑いたい人、悩みを聴いてほしい人まで。いろんな人たちと会って、そのたびに「このタイプにはこんなもてなしを」なんて、不器用ながらも工夫できることを精一杯探してきました。そんな手探りのなかで、これまで様々なストーリーと出会い、そのたびに成長させてもらってきたように思います。

そんな感謝の気持ちに浸っていたら……あらやだ。今回はどうやら、そんな5年の間に実際に出会い、お話したことのある方からの投稿らしいの!見てみたいと思います。

今回寄せられたお悩み「弱みを見せるのが苦手で、人から"怖い"という印象を持たれてしまう」

Sitakke
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「ねえ、絶対あんたこれ書いたでしょッ!」と、ペンネームなんか無視してまさかの実名報道しちゃいたいくらい、これを投稿してくれた人の顔が思い浮かぶ文章なわけですが……。笑 ともあれ、まずはお手紙、ありがとうございます!

***

「悩みのポイントがすっと伝わってくる文章だなぁ」と読んで感心しながら、「勇者Level.5」というネーミングセンスや、「布の服」「ひのきぼう」と言ったワードたちから、「この人ゲームだと某RPGフリークね」なんて想像(?)を膨らませたりしていました。

この 「印象」問題って、結構めんどくさいよね。あたしにも身に覚えあるわぁ…。

あたしも、まぁこれは割と外見的な「印象」ってことになるんだろうけれど、アイラインばっきばき、シャドウは濃いめでつけまつげばっさばさ、要は「強め」な女装をしているから、割と周りから怖がられることが多いの。 今は常連という方からも「通い始めた当初、ママとは3か月は目を合わせられませんでした……」なんてコメントを聞くこともあったり。笑 本人はあんまり自覚ないもんだから、それも不思議よねぇ。

あと、語り口調が少々変わっていたり、講演会のような真面目なイベントでの仕事をお受けすることも多いせいなのか、不服にも 「かしこぶってる」とか、ひどいときは「人を小馬鹿にしてそう」って先入観を持たれることもあったり(まぁ、遊びでお客様とけなしあいなんてことは、しょっちゅうあったりするけれどね笑)。 蓋を開ければ実に簡素な脳みそをしている、しょうもない単なる呑み助なんだけどなぁ……と本人としては思うのですが、そういうイメージってなかなか払しょくできないもの。困ったものです。

きっと投稿者さんも、根底にある気持ちが別のかたちになって伝わってしまうことに、相当歯がゆい気持ちを覚えているんじゃないかしら。 それにおそらく投稿者さんは、こころのパーソナルスペースを適切に保ったうえで、相手と考えをすり合わせたい人なんだろうなと、書いてくださっていることから想像できるの。にもかかわらず「怖い」と心的距離をあけられてしまっては、そりゃ本人としては「ちょっと!お門違いなんだけど!涙」ってことになるわよね……。

ましてや、人とのやりとりの重要性がひときわ目立つ仕事に、今後就くかもしれないとなれば、この悩みを抱えていることはなおさらしんどいでしょう(とはいえ、求めてくださっているような「てる子さんのコミュニケーションの秘密」があるのかと言われると、披露できるような虎の子的なノウハウは特に無いわけなんだけれど……苦笑)。 するっと解決するような問題ではないかもしれないですが、少しでも力に変わるようなメッセージを届けることができればなぁと、相談文を読みながらそう思っていたのでした。

あたしなりのAnswer

さて、勇者Level.5さん。せっかくなのであなたには、ロールプレイングなたとえも使いながら、ここからのアドバイスを書かせていただくわね。

まず最初に。

「このままでは生き辛いかも」と不安を抱えているあなた。 でもだからといって、じゃあ人に弱みを見せられるようになったほうがいいとか、同情を手段として使うべきとか、相談者さんが「それは嫌だなぁ」と思うだろうし、実際そう書いてくれていることを勧めようとはあたしは思いません。言うつもりもありません。 ハキハキと意見を伝えるのも、エビデンスを取りにいく姿勢も、むしろ場面によっては歓迎されるようなこと。そうしたスタンスも、別に捨てなくて大丈夫だと思います。 勇者は勇者。自分のステータスを変え、覚える技のラインナップも一新してまで、転職しなくてもいいはずなんです(しようもんなら、神官にどやされるわよってね)。

Sitakke
RPGイメージ(pixta)

あたし、割と本気で思っているのですが、周りの人間って望んだ通りには変わってくれないもの。だからこそ人間関係について悩んだ時は、生きやすくなる方向性に、自分で自分を変えてしまったほうが楽だし早いような気がしていて、身近な人から人間関係について相談された時も「相手じゃなくてあんたがあんた自身をどうにかしな」と、口癖のように伝えています。 ですが、いくら「自分が変わったほうが楽」とはいえ、本人の信条が揺らぐような変化というか、主旋律を崩すような変調はしんどいだけ。変わろうとしたせいで苦しい思いはしてほしくないと願う気持ちも、同時に胸のうちにあります。

その点で言うと、勇者Level.5さんはもしかしたらこのお悩みをきっかけに「自分って根底から生き方改めなきゃいけないのかしら」って考えたこともあるかもしれないんだけれど、その必要はないと思うの。 そんなことして「へんじがない。ただのしかばねのようだ」ってなっても、それはそれで一大事。自分が自分であること、その芯の部分は捨てなくてもいいと思うんです。

ただ、人との交流にあたっては、勇者の一撃はキツすぎることもあるかもしれません。 一撃というか、そもそも攻撃なんてしてるつもりがなくても、あなたの力のある言葉に「ぬわーーっっ!」と昇天してしまう、HPの極めて低い相手もいるかもしれない。それは、たとえ装備がひのきぼうであったとしてもそうなの。

自分の思いを明確に伝えることを忌避する人も多いのが、このJAPANという国の文化性です。導かれし者たちの振る舞いはちょっと過激に受け止められることもあるのでしょう。 相談者さんの持たれがちな「怖い」という印象は、そんなところにも根があるのかもしれない。

では、どうしたらいいのか?
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RPGイメージ(pixta)

あたしとしては、逆に勇者のレベルをどんどん上げることをおすすめしたいと思います。 そして、それによって回復魔法やバフ・デバフ技を覚えるなり、仲間と旅するに楽なアイテム(戦闘から必ず逃げれる、とか)を手に入れるなり、どんどんひとりの主人公として、相手に対してできることを増やしていってみてはと思うんです。

……あまりにRPGをもとにした表現すぎるので、「え?どういうこと?」となっちゃうかしら……。笑 まぁ、伝えたいことは実のところ単純で、言い換えれば、誰かと対峙する経験を積み、そこで工夫することで、相手に合わせた振る舞いを身につけてみてはどうかっていう話。 根本は変えなくていいから、スタンスのバリエーションを増やして、それを臨機応変に使い分けてみてはってことなの。

Sitakke
RPGイメージ(pixta)

冒頭にも少し書きましたが、もしあたし自身がコミュニケーションにあたって気をつけていることがあるとすれば、そんな「このタイプにはこれ」という使い分け。 属性魔法で相手のツボを突こうとがんばるときもあれば、ふしぎなおどりでおとなしくさせようなんてときも。 もちろん自分の意見をがつんと正面から物理攻撃する場合もあって、「自分が何をしたいのか」というよりは、そうしたアクションによってその相手、その場がどうなるのか(盛り上がるのかもそうですし、言いたいことが響くのかどうかも含めて)を大事にしています。

もう少し伝わりやすいように、RPGのたとえよりもかなりくさい表現を使いますが、飲み屋商売というのは、言わば「トークでもてなす寿司屋さん」だとあたしは思ってます。その時の旬、定番のネタ、風味を際立たせるサイドメニューなど、様々なラインナップがあった上で、ご新規なのか常連なのか、何が好きな相手なのかなどを見繕い、そこにこころを添えてお出しする、そして、それによって楽しんでもらうわけです。

これはあくまでプロとしてのお話です。ですが、そうした「この人にはこれ」という、相手の分析を基軸に置いたうえで自分自身を使い分けることは、日常の様々な人とのやり取りも円滑にしてくれるように思うのです。 エビデンスをもった意見交換が難しそうならば、一緒に笑いあえるかを試してみる。ちょっと違うなら別の方法、それでもダメなら「ああ、ここは魔法使いさんに」「盗賊の出番なのかも」と、自分以外の様々な人の助けを借りてみる……。 そんな使い分けを、勇者Level.5さんにはおすすめしたい。

とはいえ、得意な戦法っていうのは身に染みついているもの(あたしといえば、相手に状態異常をふりまきがちみたい笑)。ひのきぼうで向かい合うのが今は性にあってるぜ!となるときは、もちろん相手と剣を交わした上で(剣……というか棒なのか笑)、「うぬの実力はわかった。これぐらいで許してやる」と折り合いを互いにつけるのも一興かもしれません。 そこは、適宜調整してみてください。

伝説の勇者になれ!とは言わないけれど...笑

「人生」という冒険を攻略しやすくなる程度でかまわないから、これから様々な人とエンカウントしたときのために、できることを増やしておいてはいかがでしょう。そうすることで、相手に与える印象が、今とは違うものになってくるかも。 もし「いやでもやっぱりこういうところが困るなあ……」とか出てきたら、その時はぜひ酒場へまたお立ち寄りあれ。仲間たちと一緒に、あなたのことを待っていますよ!笑

これからも画面の向こうから、あなたの旅を見守っていますね。

ま・と・め♡

というわけで、今回は「他人から持たれがちな印象」というお悩みについて、あたしの仕事のやり方なんて話題も一部絡めながら、お話させてもらいました。 なんだか気恥ずかしいわぁ……。笑

しっかし、あたしもバーの店長になって6年目に突入なのね。時が経つのは早いもの。 このお悩み相談コーナーも、担当させていただいて実はもうすぐ1年! これからも皆さんのイライラ、モヤモヤ、単なる疑問だって大歓迎。様々な切り口から、少しでも楽しいコラムが書けるように、精進していこうと思います。

ではでは皆さん、Sitakkeね〜!

*** 文:満島てる子 イラスト:VES 編集:なべ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

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