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度々ニュースで見る子どもの事故やトラブル…子どもの安全をどう守る?責めるしつけが危険を招く!?

  • 2022.5.28
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飛び出したり、頭をぶつけたり、子どものトラブルにヒヤリとする場面は多いもの。子どもたちは、日頃からさまざまなリスクにさらされています。では子どもの安全はどう守ればよいのでしょうか。家庭の子育てでも参考にしたいのが保育におけるリスクマネジメントの考え方です。保育のリスクマネジメントについて詳しい、大阪教育大学教育学部教授の小崎恭弘先生にポイントを教えてもらいました。

子育てでも取り入れたい!「安全教育」って?

保育におけるリスクマネジメントとは、子どもの危険を予測し安全を意識して取り組むこと。子どもの安全を守っていくのは、まずは周りの大人や親の責任ですが、同時に「子ども自身が自分の身を守る力を育てることも大事」と小崎先生は言います。

「ずっと親が子どもを守り続けていくのではなく、同時に子どもの身を守る力も育てていく。これを『安全教育』と言いますが、これは家庭でも意識してもらいたいことです」

家庭でも参考にしたい「安全教育」。これには2つの視点があります。
教育・保育の場で実践している「積極的安全」と「消極的安全」です。

◆大人が守る! 積極的安全

危険な物を排除し、大人が積極的に子どもの安全に関わることを「積極的安全」と言います。

「保育士は500円玉より小さな物を保育室に置きません。子どもの口径が33ミリであるので、誤飲による窒息を防ぐために置かないのです。ビーズ、ビー玉、ぶどう、プチトマト、豆まきの豆も出しません」

子どもは幼くて自分の身を自分で守ることができないので、周りの大人が環境を整え、積極的に子どもの安全を確保していきます。

◆大人が見守る! 消極的安全

対する「消極的安全」とは、子どもの成長に合わせて危険に対応したり予測したりすること。例としては、ナイフで鉛筆が削れるように練習する、などです。危険に対してトレーニングし、ある程度ケガを想定しながらうまく関わることで、危険性を排除していきます。

子どもを「守る」だけでは危険から守れない!?

教育・保育の現場で実践している「積極的安全」と「消極的安全」の2つの視点は、家庭の子育てでも意識したいところです。ただし、そのバランスが難しいと小崎先生は指摘します。

「今は積極的安全ばかりに囲まれて、子どもたちが育っていない家庭が多いです。親が全部守らなくてはということではないんです。もちろん、年齢や個性や状況に応じて、親がコントロールしてあげなくてはいけないんですが、子ども自身が自分で身の安全を守っていけるようにしていくということを、子育てをしていく中で考えてほしいです」

例えばインターネットやSNSとの関わりについて。これもリスクの一つです。

「インターネットやSNSを一切やらせない! というのも一つの考えですが、これは積極的安全の考え方です。一方、やりながらルールや使い方を学んでいくというのが消極的安全です。子育てにおいてもこの2つの視点を意識してもらいたいなと思います」

ヒヤリハットを考える「ハインリッヒの法則」って?

保育において有名なリスクマネジメントが「ハインリッヒの法則」です。よく耳にする“ヒヤリハット”はこの法則に基づいています。

子どもの大きな事故やけがを1件とすると、実はその手前には軽度・中度のけがが29件あり、さらにその手前には、事故やけがにならないヒヤリハットが300件ある、というピラミッド型の考え方です。つまり、大きな事故がたとえ1件だとしても、いきなりゼロにすることはできない、と考えます。

では、リスクを減らすにはどうすればよいのでしょうか。

「重大事故をなくすためには、中度のケガの件数を29にしない、さらにヒヤリハットを300にしないこと。家庭でも日常のヒヤリハットを減らしていくことが大事です」

ニューヨークの事例に学べ! ヒヤリハットを減らすコツ

世界には、こうした考えに基づき改善した事例があります。

治安が悪化したニューヨークで、当時の市長だったジュリアーニ氏が、割れている窓や落書きを消していく作戦を実行しました(割れ窓理論)。

「凶悪事件を減らすために、周りをきれいにしていった。この事例はとても分かりやすいですよね。同じように子どもの事故やけがを減らすため、身の回りのヒヤリハットをなくす必要があります。まずは普段の持ち物や部屋を点検し、子どもの行動や性格を理解し、リスクがないよう対応していくことが効果的だと考えられます」

保育現場が重視する「環境構成」は家庭で応用できる!

保育現場では「環境構成」を重視します。具体的には、保育室の机の角にスポンジを貼る、鉄棒の下にマットを敷く、指を挟まないよう隙間のあるドアを設置する、などです。これらは危険を想定しているからこその対策です。これらは家庭にも応用できます。

子どもの誤飲リスクについても、ヒヤリハットをなくす努力が必要です。
「たばこ、薬、化粧品の誤飲は多い。これには“大人が口にするもの”という共通項があります。子どもたちが真似をしないように、目の前に置かない、高いところに置く。ちょっとした環境の工夫で、誤飲事故は防げます。『こんなことを子どもはしないだろう』と思うところこそ、大きな事故につながりやすいんです」

落下事故の防止にもリスク要因を減らす工夫が必要です。
「マンションのベランダから落下するという悲しい事故が時々起きます。子どもが椅子を運んで上ったり、クーラーの室外機の上に乗ったり、大人が想定していなかったことを子どもはするもの。それを子どもの責任とするのではなく、大人が子どもを理解し、安全な環境を整えてあげることが大事です」

子どもを責めるしつけが危険を招く!?

しつけの仕方が子どもの安全に左右します。実は、責めないしつけがこどもの安全につながります。

「保育とは未発達で幼い子どもを援助し、危険から守ってあげることです。子どもがちゃんとしていたら、保育士なんていらないですよね(笑)。これって当たり前のことなんですが、『何回言ったらわかるの』『先生、前にも同じこと言ったよ』などと責める場面はよくあります。これは子育ての場面でもよくあることですよね。『お母さん言ったよね?』『なんで同じことするの?』と責めていませんか。これは『前に注意したから私は悪くない』という責任の回避にも見える。1回で『うん、分かった!』と言うことを聞く子ばっかりだったら、親も保育士もいらないんですよ(笑)。子どもは未発達で幼いがゆえ、十分に出来ないことが前提にあります。責める子育てが子どもの安全にはなかなかつながっていかないと考えています」(小崎先生)

危険が予測されたとき、「ダメ」と責めて叱るのではなく、「ここは止まろうね」「左右しっかり見て」など、具体的に伝えていくほうが子どもには届くようです。

パパの出番だ! 守り過ぎない安全教育

積極的安全の中で子どもを大事にし過ぎていると、経験が積めません。

「新学期の1〜2年生の事故はすごく多いんです。経験が足りないからです。これまで親が積極的に守っていたのに、1年生になった途端、『はい、いってらっしゃい』と送り出すのはちょっと乱暴ですよね。いつまでも親が守り続けていてはいけないんです」

安全教育は、パパの出番も多そうです。

「パパが通園路や通学路を子どもと歩いて危険な場所を教えてあげる、のこぎりのじょうずな使い方を教えてあげる、などパパが消極的安全の視点で関われたら理想です」と小崎先生は提案します。

場合によっては子どもの命に関わる安全問題。パパとママが分担して積極的安全と消極的安全を取り入れていけるといいですね。

取材・文/大楽眞衣子


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。


著者:ライター 大楽眞衣子

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

ベビーカレンダー編集部

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