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今、人気の『13歳からの地政学』。大人も受けたい7日間のレッスン。

  • 2022.5.27
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ロシアのウクライナ侵攻、中国の海洋進出、北朝鮮のミサイル発射......。今ほど、世界の地理、政治、歴史を知っておくべきと感じたことはない。

人々のそんな気分にピタッとハマったのだろう、今、『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』(東洋経済新報社)が人気だ。

本書は、国際政治記者・田中孝幸さんが「歴史問題の本質」「ニュースの裏側」「国同士のかけひき」を解き明かす1冊。「子どもも大人も知っておくべき世界の仕組み」をストーリー仕立てでわかりやすく学べる。

■登場人物
・大樹
県内の進学校に通う高校一年生。学校の勉強は得意で、上位の成績を収めている。
・杏
地元の公立中学に通う大樹の妹。中学一年生で、勉強よりもおしゃれや流行のアイドルのほうが好き。
・カイゾク
近所の子どもたちにその風貌から「カイゾク」と呼ばれる年齢不詳の男。アンティークショップの店主のようだが......

7日間のレッスン

7月、1学期の最終日のこと。商店街にある小さなアンティークショップに、ずいぶんな年代物と思われる、国境線がずいぶん今と違っている地球儀が飾られていた。

大樹と杏がウィンドウ越しに地球儀を見ていると、店のドアが開いた。左目に眼帯を着けた大男・カイゾクが出てきて、2人を中に招き入れた。

地球儀にひかれた大樹が値札を見ると、「時価」と書かれていた。「100万円にすることもあれば、タダにすることもあるさ」と、カイゾクは不思議なことを言う。

「夏休みの間、7回ここにきて、わしの話を聞く。最終日にわしの出す問題に答えられたら、この地球儀をさしあげよう」

「わしの話は教科書にもテレビにも出てこない。問題を解くのに必要なのは、好奇心と想像力。それだけだ」

「予習は必要ない。地球儀を使って、世界がどのように動いているのか一緒に考えてみよう」

こうして、7日間のカイゾクのレッスンが始まった。

■構成
1日目 物も情報も海を通る
2日目 日本のそばにひそむ海底核ミサイル
3日目 大きな国の苦しい事情
4日目 国はどう生き延び、消えていくのか
5日目 絶対に豊かにならない国々
6日目 地形で決まる運不運
7日目 宇宙からみた地球儀

「核ミサイルはどこにある?」「核を最強のアイテムにする3つの条件」「中国が南シナ海を欲しがる理由」「日本が核爆弾を持つ日は来るのか」「なぜ戦争を起こそうとするのか」......。まさに今、これが知りたかったんだよ! ということがたくさん出てくる。

海を支配する最強の国

ここでは、「1日目 物も情報も海を通る」から「海を支配する最強の国」を見てみよう。

地球の7割が海、3割が陸地。世界中の貿易は、9割以上が海を通っている(船で運ばれている)。海に囲まれた日本の場合、じつに99%が船による貿易。船を使った貿易ができなくなれば、世界経済は一瞬にして止まってしまう。

では、この海ばかりの地球で一番強い国はどこか。

大樹 「強いと言えばアメリカでしょうか」

カイゾク 「そうだ。そしてアメリカが超大国と言われているのは、世界の船の行き来を仕切る国であるからだ。アメリカは世界最強の海軍を持ち続けるために、毎年10兆円以上のお金を投じていて、世界各地の海に軍艦を展開している。自分の国と遠く離れた地球の裏側までだ。ほかにそんなことをしている国はない」

なぜアメリカはそんなにも軍艦に金を使うのか。

カイゾク 「まず、国同士、けんかした時に勝てるということがある。例えばアメリカが、どこかの国とトラブルになったとしよう。海をおさえていれば、その国の貿易を止めることで倒すことができる。貿易を止められてスーパーに商品が何もなくなってしまったら、飯が食えなくなる。けんかどころではないからな」

大樹 「国同士のけんか、つまり戦争になった時に勝てるように、海を見張っているということですか」

カイゾク 「うむ。それに世界で一番強い国であるということはとてつもないメリットがある。その地位を守るためでもあるのだよ」

「大人にこそ読ませたい未来を生き抜く必読書。戦争、平和、日本の行く末を知る羅針盤がここにある!」(『ハゲタカ』著者・真山仁氏)、「かなりの外交の専門家が読んでも読み応えのある内容を、極めてわかりやすく書いている。若者だけでなく、すべての世代の必読書だ」(前駐米大使・杉山晋輔氏)など、絶賛の声が続々と寄せられているという。

へえ! の連続で、ひきこまれて一気読み。なんとなくわかった気になっていることがいかに多いか、あらためて気づかされた。読んでよかったと、子どもも大人も思えること間違いなしの1冊。

■田中孝幸さんプロフィール

国際政治記者。大学時代にボスニア内戦を現地で研究。新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを積み、世界40カ国以上で政治経済から文化に至るまで取材した。大のネコ好きで、コロナ禍の最中に生まれた長女との公園通いが日課。40代で泳げるようになった。

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