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出会いはFacebook…祖母を「ロマンス詐欺」から救うまで

  • 2022.5.27
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SNSやマッチングアプリで偽のプロフィールを装い、人々からお金をだましとる「ロマンス詐欺」。

コロナ禍での孤立とオンラインデートの普及によって、被害は爆発的に増加しており、米連邦取引委員会の発表によると「2020年のロマンス詐欺の被害額は過去最高の3億400万ドル(約336億円)に達し、前年の50%増となった」そう。

未亡人や孤独な人、人の優しさや情に訴えるこの詐欺は、70〜80代女性の被害が多いことも特徴。70代以上の被害者の平均被害額は約10万ドル(約1,100万円)と、一人あたりの被害額である約3,000ドル(約33万円)を大きく上回っています。

なかでもフロリダは、アメリカで最も詐欺の標的になっている5つの州の1つ。オンラインプロフィールの調査会社「Social Catfish」によると、1,600人以上の被害者が4,010万ドル(約44億円)の損失を被ったそう。

本記事では、フロリダに住む祖母がロマンス詐欺の被害に遭ったという、ジャーナリストのニッキ・ヴァーガスさんの体験談を、<コスモポリタン アメリカ版>からご紹介します。

違和感だらけのプロフィール

祖母が初めて新しいボーイフレンドの「ブラム」について話したとき、どこかしっくりこないところがありました。

コロナ禍ではじまった、家族とのビデオ通話。祖母が私たちに「新しい恋人ができた」と興奮気味に発表したのは、そんな何気ない家族の時間でのこと。

その違和感は、ブラムが投稿した、ジョー・バイデン大統領と握手している写真のせいかもしれないし、大統領と写真に写るような人物でありながらインターネット上に彼についての情報が見当たらなかったかもしれない。あるいは、彼がプロフィールに設定していた、パパラッチ風の写真の数々のせいかもしれません。

とにかく、私は直感的に「これはおかしい」と思ったんです。そして一週間後、自分が正しかったことがわかりました。

祖母の孤独につけこんだ犯人

祖母は一言で表すと“花火”みたいな人。いわゆるおばあちゃん像とは無縁で、ヒールにピッタリした黒いレギンス、シルキーなシャツ、ゴールドバングルを着こなし、予定表はディナーやパーティー、旅行の計画でいっぱい。

でもそんな快活さとは裏腹に、老後を迎えた独身女性として、祖母が孤独を感じることもあるのだろうと思います。キラキラした見かけの内側には、誰もがそうであるように、やわらかく無防備な部分があるのです…ブラムが標的にしたような。

ふたりの“ラブストーリー”は、Facebookでの友達申請から始まりました。ハンサムで音楽好きなブラムは、身なりのいい50歳くらいのフロリダ在住の独身男性。祖母と私は、そのエリートな雰囲気の新しいボーイフレンドについて、何時間も何日もおしゃべりしました。

次第に祖母は、ブラムに家族の写真を見せたり、私が書いた記事のリンクを教えたり、家族のことを話しはじめるようになりました。そしてある日、祖母がブラムに私を映した動画を送ろうとしたとき、胸騒ぎを覚えたんです。

祖母が信頼しきっているこの男性は、一体誰? 彼は一方的に、祖母や家族の名前や仕事、住んでいる街、外見まで知っているんだ…と。

彼の誘導に合わせて連絡方法を変え…

ふたりの会話はGoogleハングアウトで行われていました。祖母とブラムがFacebookでチャットを始めてすぐ、彼がGoogleハングアウトへ変えようと言ってきたんです。

テキストメッセージで写真を送るのにも苦労している祖母が、Googleハングアウトのアカウントを設定するのは至難の業にちがいありませんが、ブラムはわざわざ一通り説明までして変更にこだわりました。

後でわかったのは、会話をGoogleハングアウトに移行するのはロマンス詐欺のよくある手段。ロマンス詐欺の被害者支援団体「RomanceScams.org」によると、相手のメールアドレスが分かることや、より規制が少ないプラットフォームであることが理由だとか。

画像検索で突き止めた“彼”の正体は…?

私が、祖母の恋人について詳しく調べようと思ったのは、祖母が彼とマイアミで会う約束をしたと聞いたから。

彼の名前は“ブラム”で通っていましたが、Facebookのプロフィールに書かれた名前はなぜか「ジェームズ・ギャリー」。Googleで調べても、どちらも検索結果はありませんでした。

そこで次に私は、彼が祖母に送った写真をよく見ることに。最初の写真はバイデン大統領との写真で、ホワイトハウスの円柱とおぼしきものの前でポーズをとっているもの。2枚目のパパラッチ風の写真では、革のジャケットを着たブラムが、毛皮のショールを羽織った中年女性と一緒に歩いているところ。祖母によると、その女性は交通事故で亡くなったブラムの前妻とのこと。

お世辞や大げさな言葉、涙を誘う話は、ロマンス詐欺の常套手段。愛や悲しみの物語を語ることで警戒心を解き、会う空約束をしてお金を巻き上げるのです。

画像検索をしてみること、5分もしないうちに、写真の男性の本名が見つかりました。ドラガン・スタノヴァクです。どうやらスタノヴァク氏は、セルビアで防衛大臣を5年間務めた政治家。バイデン大統領と親しげに握手していたのも納得です。“亡き妻”との写真は、セルビアのタブロイド紙からとってきたものでした。祖母がセルビアの政治に詳しくないと踏んでいたのでしょう。

スタノヴァク氏について調べれば調べるほど、彼の写真を使った偽物のプロフィールがあることに気づきました。場所や趣味などはそれぞれ違うものの、彼の写真は様々な詐欺師たちから悪用されているようでした。

私の祖母は、疑い深い孫の調査によって、失恋の悲しみと経済的損失を免れました。でも、ロマンス詐欺の被害者がいつもそうラッキーとは限りません。

写真を悪用された男性に連絡をとると…

私は、写真が悪用されていることを伝えようと、スタノヴァク氏に連絡をとってみました。すると驚いたことに、すぐに返信がありました。

「2017年11月に、セルビアのメディアが、私の写真を使った詐欺師が逮捕されたと報じました。2014年から、奇妙な友達申請があることにうすうす気づいてはいましたが、何が起こっているのかを把握したのはその時です」

スタノヴァク氏の本当のFacebookアカウントは、彼の写真を使った偽物のせいでフラグが立ち、利用できなくなったそう。

ロマンス詐欺に気づいた祖母の意外な反応

祖母は人生でどんな困難が起ころうと、一笑に付して前に進む人です。それはブラムが詐欺師だというニュースを伝えたとき同じでした。

恥ずかしさや失望もあったかもしれません。でも、これまで私たちに見せてきてくれた堂々とした態度で、髪をかき上げて一言こう言ったんです。

「大丈夫よ、ボーイフレンドは他にもいるから」

※この翻訳は、抄訳です。Translation:mayuko akimotoCOSMOPOLITAN US

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