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ケイティ・ペリーという名のアーティスト。

  • 2015.9.30
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『フォーブス』誌の2015年「世界で最も稼ぐセレブリティ100名」特集号の表紙を飾った新世代のポップ界の女王、ケイティ・ペリー(Katy Perry)。そのケイティが『VOGUE JAPAN』9月号のカバーに。すでに大物アーティストらしい風格の漂う彼女に、ケイティ・ペリーというビジネスの“顔”としての役割や大好きなファッションなどについて、VOGUE JAPANのためだけに特別に語ってもらいました。

※『VOGUE JAPAN』2015年9月号掲載記事

この12カ月間、「プリズマティック・ワールド・ツアー」で各地をめぐり、141公演をこなしたケイティ・ペリーは今、やっと訪れた夏休みを満喫している。彼女の夏休みには、地元カリフォルニア州サンタバーバラでのサイクリングや、サントリーニ島で女友達14人とヨットを借り切ってのセーリング、さらには姉アンジェラが生んだばかりの赤ん坊と過ごす時間といった予定が組み込まれている。ちなみに、「姪のスタイリストは、もちろん私」だそう。 しかし、彼女のオフに写真撮影や雑誌のインタビューの予定が入るのは避けられない。この疲れを知らないポップアイコンは、ことファッションの話となると、ノーと言えないのだ。「“私に注目しなさい”メーターを上げっぱなしにしておきたいわけじゃないのよ。ここぞってときに力が発揮できないと、意味ないもの。でも、なかなかそうもいかなくって」と、ケイティは口もとをほころばせる。

「“ヴォーグ”と“ジャパン”の組み合わせって、たまらないわよね。ヴォーグのためなら、この身を投げ打つ覚悟よ」。この言葉を聞いて、さもありなんと思ったのは、別に彼女がハリウッドヒルズの自宅クローゼット(正確には、車が2台入る車庫を改装した建物と、ゲストハウス1軒)と倉庫2棟分のワードローブと衣装を所有していて、管理専門のスタッフを雇っていると知ったからではない。さすがの本人も、「結構な量よね」と認めざるをえない量ではあるが。

ケイティが座っているのは、会議室にある白いロングソファ。このウエスト・ハリウッドにあるマネジメント会社のオフィスで、仕事の処理を済ませたところだ。「自分の船の舵取りをするのは私。自分がやることは、全部自分で決めてるわ」と、ケイティ。「私が作るか、承認するか、デザインするか│すべてのことに、必ず私自身が関わるようにしている」。30歳になるこの精力的なアーティストが愛用するオフ用の制服は、黒地に白いラインが入ったクラシックなアディダスのトラックスーツ。週に4、5日は着ていると言う。「いつかは、ブランドはブリオーニだけと決めて、スーツを5着しか持たないオバマ大統領のようになりたい。もっと大切な仕事があるから、服装のことは考えないようにしてるのよね。まっ、ファッション誌にこんなこと言うのもどうかと思うけど」。この服装には、パパラッチを遠ざけ、24時間イメージ管理をしなくてもいいようエネルギーを温存する狙いがあるのだとか。「この格好は、自分の身を守り、生き抜くための知恵よ。ドレスアップをするのは、そういう気分のときだけにしたい。あとは、ファッションごっこを楽しみたいとか、アルバムのプロモーションをしているときとか、ボーイフレンドのためにお洒落するときとかね」。さらに、こう付け加えた。「エルトン・ジョンの妹と呼んで。彼も、同じ理由でトラックスーツを着てるから」

花火や光ファイバーがなくとも、ケイティ・ペリー(本名キャサリン・ハドソン)には、先日『フォーブス』誌の「世界で最も稼ぐセレブリティ100名」特集号の表紙を飾ったスーパースターの風格がある(表紙では、ゴールドのドルマーク模様の冗談めかしたモスキーノのブレザーを着ていた)彼女は、この1年間で1億3500万ドル(約165億円)以上を稼ぎ出し、ボクサーのフロイド・メイウェザー・ジュニアやマニー・パッキャオに続いて3位にランクインしたのだ。とにかく親しみやすく、ジョークにも驚くほど素早く反応してくれる彼女だが、ふとした瞬間に、その非凡な日常が顔をのぞかせる。たとえば、スターバックスでアイスグリーンティーを買うときのオーダーが思い出せないと言うと、アシスタントたちが一斉に確認に走る姿を目撃したとき(甘さ控えめ、もしくはシロップをワンプッシュでした)。また、廊下を隔てた向かいの部屋に待機する医師からビタミンB12の注射を受けようと、彼女がインタビューを抜けたとき。それから、彼女のiPhone が、瞬時に2300万人いるインスタグラムのフォロワーや、7200万人ものツイッターのフォロワーに向けて情報を発信できる状況にあることに思い至ってしまったとき……。しかし、どんな状況にあっても、彼女がトレードマークの遊び心について譲ることはない。「あのマネースーツを着ることに関しては、結構議論したのよ。自慢してると思われるんじゃないか……」と、ケイティ。「で、言ったわけ。〝ありえない! そもそも、私がどうやってここまできたと思ってるの? 遊び心あってのことじゃない!〞って」

〝すべてご承知〞と言わんばかりのウィンクは、ケイティ・ペリーのファンにはお馴染みだ。〝ツァイトガイスト(時代精神)〞を巧みにとらえた2008年のポップロック・シングル「キス・ア・ガール」は、キリスト教の牧師である両親には不評だったものの、彼女がブレイクするきっかけとなった。その後、2010年にリリースした3枚目のスタジオアルバム『ティーンエイジ・ドリーム』が大ヒットし、アーティストとしての成功を決定づけることとなったのはご存じのとおり。同アルバムに収録された5曲は相次いでナンバーワン入りを果たした。この前人未到の記録によって音楽シーンでの影響力が確立されるなか、ケイティが生みだした独自のナラティブ│アメリカのピンナップアート界の巨匠ジル・エルブグレンや日本のストリートファッションといったインスピレーションをミックスしたもの│は、今なお健在だ。また、そのスイートでスパイシーなアーティストイメージを、アルバムのカバーで完璧に表現することにも成功した。ピンクの綿あめでできた雲に乗るケイティのヌードポートレイトを手がけたのは、スイーツにご執心のアーティスト、ウィル・コットン。不朽の名作「ホイップクリーム噴射ブラ」を生んだ「カリフォルニア・ガールズ」のミュージックビデオも監督している。「私にはユーモアのセンスと気楽なところがあって、それがスタイルにも反映されていると思う。たまには、気分を変えてロマンティックなイメージにすることもあるけれど、たいていは親しみやすくて楽しい感じ。ポップって言うか、スーパーポップね」。ケイティのお気に入りは、気の利いたジョークのようなファッション。長年スタイリストを務めるジョニー・ウジェクと組み、〝見たまんま〞のいでたちで何度となく世界を笑わせてきた。たとえば、2011年には、ケイティ自らスマーフェットの声を演じたアニメ映画『スマーフ』のワールドプレミアで、ラインストーンのスマーフェットが描かれたThe Blondsのミニドレスを着用。2012年にニコロデオン・キッズ・チョイス・アウォーズでGerlan Jeansによるグリーンのスライム状アンサンブルを着たかと思えば、昨年1月に開催されたスーパーボウル・ハーフタイムショウのプレビューには、(視聴者1億1800万人が見るというのに)フットボールにインスパイアされたRVNのクロップド丈トップスとスカート姿で登場した。もはや、ファンタジー、テクノ、ポップ、何でもござれ。もちろん、趣向を凝らしたハロウィーンのコスチューム、90年代のアニメMTVシリーズ〝Daria〞に登場するシニカルなハイスクールガールのジェーン・レーン、そして巨大な〝Flamin’ HotCheeto(スナック菓子)〞という大傑作│も忘れてはならない。「あれは、まさに〝マイクを置いた(完璧な勝利を収めた)〞瞬間だったわね」と、ケイティは笑いながら言う。「今年は、置いてあるマイクに扮装しようかな。超メタな感じでいいじゃない? ただ、床に転がってるだけっていう!」

2015年秋冬のモスキーノ広告キャンペーンに起用される前から同ブランドのポスターガール的存在だったと言えるケイティだが、同ブランドのクリエイティブディレクターを務める長年の友人ジェレミー・スコットとは、相性ピッタリである。「ある日、自宅のキッチンでネイルカラーをしてもらっていると、ジェレミーに聞かれたのよ。〝ブランドの顔〞になりたいかって。もちろん、って答えたわ」と、ケイティは説明する。「これまでにも、他のブランドから〝顔〞になってほしいと打診されたことはあったけれど、ピンとこなくて。ジェレミーに関しては、ノリの軽さやポップカルチャー好きなところが似ているから、安心。モスキーノでの初のショウには、私も出席したのよ。自家用ジェットに乗って駆けつけたわ」

今秋、「プリズマティック・ワールド・ツアー」は南アフリカで行われる10公演を最後に終了する。そのときまで、次のアルバム製作はお預けだそう。「やってみたいことのアイデアはいろいろとあるけれど、今の自分には時間が必要。だって、一度ゴーサインを出してしまえば、あっと言う間にツアーまで組まれちゃうんだから」というのが理由とか。「まだ、どんなアルバムかって想像してもらえるような段階じゃないのよ。まずは、私があれこれ想像するところから始めなくっちゃ」。今のところケイティには、自らを一躍有名にした独特のスタイルを大幅に変更する予定はないが、やったことのないことにもどんどん挑戦したいと言う。「注目とともに、信頼も高まってると思う」とケイティ。「形はどうあれ、良い作品を作るって信じてもらえている。だから、アーティストとして、ちょっとハズした感じの作品を作りたいと思ったときにも、それが受け入れられるだけの信頼は得られているはず」。そのときが来るまでは、おとなしくしているのだそう。「ときどき思うの。寝てるって思われてるだろうけど、ほんとは準備してるのに、って」

参照元:VOGUE JAPAN

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