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韓国語を楽しく学ぶ本。ソウル在住40年の日本人ジャーナリストが教える。

  • 2022.5.24
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K-POPや韓流ドラマの人気が高まり、日本でも韓国語を学ぶ人が増えている。本書『韓国語楽習法』(角川新書)は、1970年代に韓国に渡り、長くソウル特派員を務めてきたベテラン記者が、韓国語習得の極意を披露した本だ。日韓の文化の違いにも触れ、読み物としても秀逸である。

著者の黒田勝弘さんは1941年大阪市生まれ。産経新聞ソウル駐在客員論説委員、神田外語大学客員教授。京都大学経済学部卒業後、共同通信社に入社。韓国・延世大学への留学などを経て、共同通信ソウル支局長に。89~2011年、産経新聞ソウル支局長兼論説委員。2005年には菊池寛賞および日本記者クラブ賞を受賞。著書に『韓国 反日感情の正体』(角川新書)、『隣国への足跡 ソウル在住35年 日本人記者が追った日韓歴史事件簿』(KADOKAWA)など多数。韓国を最も良く知る日本人ジャーナリストの1人である。

黒田さんは韓国語の入門書として、『ハングルはむずかしくない』(文藝春秋)と『ハングルはおもしろい』(ともに文藝春秋。書名のルは正しくは小書き)を1980年代に書いている。いずれも「時の要請」があったからだという。

第1次韓国ブームはソウル・オリンピックがきっかけ

それは1988年のソウル・オリンピックと韓国の経済発展に伴い、「暗い軍事独裁の国」というイメージが一変し、第1次韓国ブームが起きたからだ。

現在は何度目かの韓国ブームだという。つい最近、ネットニュースで日本の女子高生の間で、「オッパ」とか「チンチャ」という韓国語が流行しているという記事を見た。韓流ドラマではおなじみの言葉だ。「オッパ」は妹からみた兄の呼称だが、女性が男性の「恋人」を呼ぶ際にも使われる。「チンチャ」は「ほんと?」という意味だが、会話の接ぎ穂としてひんぱんに出てくる。

本書の冒頭、「韓国語が国際語になった」という見出しで、英国の『オックスフォード英語辞典(OED)』に韓国語が新たに26個も収録され、韓国で話題になったことを紹介している。

そのうち前述の「オッパ」のほか「ヌナ」(弟から見た姉の呼称)と「オンニ」(妹の姉に対する呼称)という家族の呼称が3つも入っていることに注目している。オッパもそうだが、ヌナもオンニも家族以外でもよく使われることは、韓流ドラマを見ている人なら知っているだろう。これらの呼称が家族もののドラマにひんぱんに出てくるので、外国人にとって印象的な言葉になったのだろう、と推察している。

黒田さんは、お店や各種窓口など接客場面で相手の女性に対しては、年齢に関係なく「オンニ」と呼びかけることにしているそうだ。これまでは若ければ「アガシ(お嬢様)」で、中年以上なら「アジュマ(おばさん)」と呼んでいたが、近年どちらも差別的なニュアンスが感じられるようになり、使われなくなったという。

ハングルはローマ字と似た仕組み

こうした実用的な話題が豊富なため、どこを読んでも楽しめる。語学習得法としては、「ハングルはローマ字と似た仕組みだからすぐ読める(基本母音は10個で子音が14個の計24文字)」「日本語と語順が同じというありがたさ」「漢字由来の単語が多いので、漢字を知る日本人には大変有利」「英語よりもずっと学びやすい」など、日本人にとってのハードルの低さを強調しているので、「それなら学んでみよう」と思う人も多いだろう。よく使われる単語、言い回しも多数収めているので、初心者の役に立つだろう。

今年度のNHKラジオの「まいにちハングル講座」は、K-POPアーティストをめざす日本人の亜美という18歳の女性が、ソウルでアカデミー(スクール)に通いながらレッスンに励んでいるという設定だ。

何年かこの講座にチャレンジし、すぐに挫折していた評者だが、今年はとりあえず2か月続いているので、これもK-POP効果だろうか。

黒田さんは、1970年代に韓国語を学び始めたきっかけは『私の朝鮮語小辞典 ソウル遊学記』を読んだことだ、と書いている。当時はみんな「朝鮮語」と呼んでいた。評者が大学の第3外国語で取ったのも「朝鮮語」だった。

NHKラジオの外国語講座で韓国語が始まったのは1984年で、その講座名は「アンニョンハシムニカ ハングル講座」だったそうで、「韓国語講座」とも「朝鮮語講座」ともなっていないのは、どちらかにするとそれに反対する側から反対や抗議が来るからだった、と説明している。

確かに、大学の「朝鮮語」の講義では、北朝鮮(当時は「朝鮮民主主義人民共和国」と略さずに呼ぶことが求められた)のイデオロギーの影響が感じられた。その後、すっかりハングルへの熱は冷めていたが、ここ数年の韓流ブームに乗り、再開した次第である。

家族や親族との深いつながり、学校や会社での先輩後輩関係の厳格さなど、現代の日本では希薄になりつつある人間関係の濃密さが韓国社会の特徴の1つでもあるが、それは韓国語にも表われている。父母や上司、学校の先生など尊敬語の対象になる人のことについて語る時は、絶対的に尊敬語を使わねばならないこと(絶対敬語の存在)や尊敬語とぞんざい語(パンマル)の使い分けなども詳しく解説している。

男女が尊敬語からぞんざい語に変わるのは、恋人になった時だ。ドラマでいつパンマルが使われるようになるのか、それを観察するのも鑑賞の楽しみの一つである。

ちなみに、漢字由来の単語のほかに、元から存在する固有語も多いので、ある程度学習が進んだら、固有語を身につけるのも上達の秘訣だ。評者は『韓国語の語源図鑑』(かんき出版)を使っている。

BOOKウォッチでは『韓国愛憎』(中公新書)、『戒厳』(講談社)、『ソウル25区=東京23区』(合同会社パブリブ)など韓国関連の近刊を紹介済みだ。

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