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30代で抜擢された女性社長が、いつでもどこでも勝ち抜くアイデアを得るために心がけている「ある行動」

  • 2022.5.14
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人はもっと自分の強みにコンシャスでいい

「『デジタルトランスフォーメーションのための会社を立ち上げる。君にその社長を任せたい』。そんな驚きのオファーをいただいたのが、2020年5月のことでした。新会社設立の発表は、忘れもしない7月1日。時はコロナ禍、すべてはオンラインです。私は数千人の社員を前に……ではなく、PCの画面に向かって、社長就任の挨拶をしたのでした。文字どおり前が見えない状況での立ち上げに、ワクワクと不安が入り交じっていたことをよく覚えています」

日本IBMデジタルサービス代表取締役社長 井上裕美さん
日本IBMデジタルサービス代表取締役社長 井上裕美さん

当時、井上裕美さんは39歳。新時代のリーダーを象徴する存在と大いに話題を呼んだが、相当なプレッシャーがあったことは想像に難くない。

「四半期ごとに全社向けのオンライン会議を行うのですが、そこでのアンケートを丹念に読み込むことで、漠とした不安感を払拭ふっしょくしてきました。『もっとゆっくり話して』というコメントがあり、映像をリプレイすると確かに私は早口。これでは内容が頭に入ってこないと自覚できます。細かな口癖から事業内容の改善点まで、すべての声は宝の山。目をとおすことは発見の連続です。もともとIBMには『フィードバック イズ ギフト』という文化が根付いています。ポジティブな声は強みとして、ネガティブな意見はアンコンシャスをコンシャスに変えてくれる気づきとして感謝して受け入れる。それが成長につながると考えているのです」

人それぞれにある「幸福の軸」に光を当てたい

それでもコロナ禍での統率は、大波に揺られ、道なき道を進むようなもの。ニューノーマル時代の経営について、どう考えているのだろう。

井上 裕美さん

「今、私たちは“正解がない世界”にいると思うのです。ならば変化の激しいこの不確実な世の中を、味方につけてみるのはどうでしょう。何をしても正解かもしれないし、失敗しても状況が変わるから、すぐに修正すればいい。施策をアジャイルに打つ、打つ、打つ。この時代だからこそできることかなと思います」

変化の波に乗り、かつ楽しむ。それは精神的にタフでないと難しい。

「いつも『画期的なアイデアが降ってきますように』って呪文のように唱えています(笑)。自分の思考が停滞してきたなと感じたら、心がけることがあるんです。それは自分とは違う属性の人を観察すること。彼ら彼女らの発信にアンテナを立てると、目からウロコのティップスをたくさん受け取ることができます。自分だけでは決してたどり着けない、新しい世界を垣間見ることができるのです。

私の会社は、金融系、製造系ほか専門性の高い各分野の人材が集まっていて、国籍も豊か。もはや首都圏主体ではなく、北海道から沖縄まで全国がイコールの位置付けです。属性の違う多様な人々の視点を取り入れ、視野を広げる。それが経営の活性化に直結すると信じています」

そうやって、ゆらゆら揺れる“考える葦あし”でいることと並行して、絶対的な軸も必要だと語る。

「それが“幸福の軸”です。自分は何をしていると心躍るのか、どんな状態だとハッピーなのか。それを探し、確立するのです。明日にでも身近な人に『幸福の軸は?』って聞いてみてください。最初はうまく出てこなくても、深掘りすると『実はボランティアが楽しくて……』など、幸せの個性がその人の強みとなって掘り起こされてくるはずですから」

では、井上さんの“幸福の軸”とはいったい何なのだろう。

「それこそ私は、人の強みを見つけ出すのが大好きなんです。弱点に目を向けるばかりで、自分の素晴らしい能力に気づいていない方が多くいます。そこにライトを当てて、相手がふと笑顔になる瞬間がたまらなく幸せ。私が理想とするのは、ダイバーシティ&インクルージョンの世界。デジタル技術の力で世界をイコールにし、さらに豊かにすることを、限界を設けずチャレンジしたい。それこそが使命だと考えています」

心を落ち着かせる時間

井上 裕美(いのうえ・ひろみ)
日本IBMデジタルサービス代表取締役社長
1980年生まれ。大学卒業後、日本IBMに入社。システムエンジニアとして官公庁を中心にコンサルタントから保守運用まで携わる。官公庁基幹システムの統括プロジェクトマネジャーを経て、2011年、官公庁デリバリー部長に就任。さまざまなプロジェクトを運営。20年7月、日本IBM執行役員および日本IBMデジタルサービス代表取締役社長に就任。グループ最大のIT集団トップとして数千人を牽引する。

撮影=大槻純一 ヘアメイク=塩田勝樹(Sui)

本庄 真穂

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