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『VOGUE JAPAN』11月号、編集長からの手紙。

  • 2015.9.28
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ジェンダーレス時代のクリエイティビティとは?

「メンズファッションとウィメンズファッションがこれほど近づいた時代はない」と、最近あらゆるシーンで感じます。ランウェイで はメンズかレディスかもはや区別がつかないアイテムをまとったモデルたちが闊歩し、ファッション界のおしゃれな人々がメンズアイテムをクールに着こなす姿がすっかり見慣れたものとなりました。私自身も、ショップで見るメンズの服が気になり、ショッピングの幅が広がったと実感しています。これは、着こなしにおいても生き方においても、私たちにここ2、3年で起こった最も特筆すべき変化といっても過言ではないでしょう。今まで無意識に感じていた壁がなくなり、選択肢が増えたことを、まずは喜びましょう!

今号では、本格的なジェンダーレス時代に突入したモードの最先端を、 実際の着こなし提案も含めて特集しています(p.147)。枠がなくなるということは、すなわち自分自身の選択眼がより重要になるということ。つまり、「Find Your Style」。大げさに言えばそれは、「自分とは何?」という問いに向き合い続けることでもあるのです。 

ジェンダーレスは人々の生き方にも広がってきています。世界中で、LGBTや性転換、同性婚といった動きが大きく注目され、セレブリティたちの言動にもしばしばジェンダーレスな話題が登場します。しかし、その実態は複雑でなかなか掴みきれない問題でもあり ます。ジェンダーレスモデルとして活躍するアンドレア・ペジック のインタビュー(p.214)を読むとその一筋縄ではいかない複雑さがよくわかります。

アメリカのジェンダー学の専門家、ジャック・ハルバ ースタム教授(自らも、女性として生まれ現在は男性として生活)は、「男性か女性かしかない窮屈なジェンダーの二者択一から離れ、多くの認識可能な性別表現へと向かいつつある」とこの状況を分析しています(p.217)。そして、ジェンダーは、「明確なカテゴリーであることをやめて、より実験的かつクリエイティブな身体表現として進化していくことでしょう」と、私たちのインタビューに対して語ってくれました。「枠を外す」ということをつきつめてゆくと、どんどん「クリエイティブ」にならざるを得ない、ということなのですね。なぜならそれは、誰にとってもどこまでも未知な領域なのですから。 

また、今月号では、ジェンダーレスだけでなく、ブランドを担う才能の新旧交代など大きな変化の時代に入ったファッションの“現在”を、デザイナー自身の言葉で語ってもらうインタビューの大特集を企画しました(p.177)。大御所から若手まで、総勢24ブランド のデザイナーたちが「今思うこと」とは? そこから見えてきたのは、「あらためてクリエイティブの力を信じること」と「人々に寄り添う感性」の大切さです。その両極を、それぞれのデザイナーがそれぞ れのバランスで模索している、という状況を感じることができます。

私自身は、川久保玲さんにインタビューする中で、彼女が2年前の コレクションから創作の根本姿勢を変化させたという、その挑戦す る「気持ち」に感銘を受けました(p.300)。コレクションはより強くつきつめて、「『日常でも着ていただけるもの』とを分け」たと言います。今まで以上に「自分は自分であることを形にしていく」とも。 そして、服が人を自由にするのではなく、「やや普通ではない」コム デ ギャルソンの服を選んだ時点で、「もうすでにその方は自由なのです」と川久保さんは語ります。枠を超え、常識を超え、私たちが「何かを選ぶ」という行為が含むその複雑な意味に思い至らされます。 それは、ジェンダーでも服でも同じこと。ショッピングという日常的で浮き浮きする行為が、なんだかすごく奥深いことに感じられますね。だから、Find Your Style!

参照元:VOGUE JAPAN

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