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世界で活躍する女性建築家が、仕事でのコミュニケーションであえて使わないと決めている「ある言葉」とは

  • 2022.5.13
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関係者と心を通わせるため、賢く言葉を選びたい

建築家という職業を想像すると、どんな姿が思い浮かぶでしょうか。スケッチブックにデザイン画を起こしたり、PCを前に図面を引いたり……そんな像が浮かぶかもしれません。でもそれらは実務のごく一部。実際は、クライアントから発注された案件に対し、構造、エネルギー、照明、ランドスケープなど、さまざまな専門家と手を携え、何度も議論を重ね、建築物へと昇華させていく。そんな総合プロデューサーのような役割を果たしています。

建築家 松岡恭子さん
建築家 松岡恭子さん

そこでいつも心を砕いているのが「伝える」ことです。それぞれ専門分野をもつプロ中のプロたちと、ゴールに向かってどうコラボレートしていくのか。お互いの心の関係が形になっていく仕事ならではです。

まず心がけているのが、「クリシェ(常套句)を使わないこと」。仕事はもちろん結婚式のスピーチや乾杯の挨拶も同様で、限られた時間のなかで使う言葉は、自分が本当に感じたものだけを使います。これは、ニューヨークや台北などずっと長く海外にいて、ディスコミュニケーションの不自由さと苦労が身に染みているからかもしれません。心からの言葉を紡ぐことで、人と人との距離はグッと近づく。そのことを身をもって経験してきたからなのです。

さらに意識しているのは「伝える相手によって使う言語を変える」ということ。プロジェクトが立ち上がった際、コンセプトから完成イメージまで、各者に等しく伝え、共有することは最重要事項です。

ただクライアントに説明するのと、塗装の職人と打ち合わせるのとでは、使う言語はまったく違います。クライアントには、数字や別プロジェクトとの比較資料が役立つでしょうし、塗装の職人には材料や技術のディテールの話が必要になるでしょう。どんなテンションでどんな言語を選ぶと相手が納得するのか、やる気を出してもらえるのか。お互いにクオリティーの高い仕事をするために「相手に響く共通言語を選び抜く」ことも建築家の重要な仕事なのです。

松岡恭子さん
知りたいという欲求が相手の心の扉を開く

相手に響く共通言語を磨くために、「教えてもらう姿勢」をとても大切にしています。私は建築のみならず、土木の仕事にも携わっていますが、最初はずっと「建築の人間にはわからないでしょう」と異物扱いされてきました。

松岡さんの伝え方3カ条

専門用語も図面の描き方も勝手が違い、だからこそ心から教えてほしいと思いました。ていねいに相手の世界に入り込み、その視点で見渡すことを、何度も何度も繰り返す。するとようやく会話が始まり、相手の言語で話せるようになります。

私はコミュニケーションが決して得意な人間ではありません。でも「知る」ことに関しては誰よりも貪欲。本当に学びたい人間には、人は胸を開いてくれるものです。

建築という分野には、ある意味ゴールがありません。時代をそのまま写し取りつつ未来へつなぐのが建築で、脱炭素や資材の限界、職人不足など、現在の社会問題がそのまま課題になり、どんどん新しい命題が生まれているのです。

過去の知識のままでは通用しないこと、そして自分はまだまだ学べることをもっと自覚したい。そうして得た知識を、また専門分野のプロたちと「伝え合う」。その循環を大切にしたいと思っています。

伝え方賢者の愛用品

左/感謝の気持ちは手書きの文字でしたためて、お礼状を出すのが松岡さん流。ペリカンの万年筆を愛用。右/建築事務所と不動産会社、ふたつの会社を経営しているため、それぞれのロゴが入ったカードを用意。

伝え方賢者の愛用品

構成=本庄真穂 撮影=望月みちか

松岡 恭子(まつおか・きょうこ)
建築家
1964年生まれ。東京都立大学大学院、コロンビア大学大学院修士課程修了。集合住宅や商業施設ほか、橋梁、公園、道路など土木構造物もデザイン。建築設計事務所「スピングラス・アーキテクツ」代表取締役、総合不動産会社「大央」代表取締役社長を務める。

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