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アイリーン・グレイのヴィラ【お手本インテリアvol.2】

  • 2022.5.9
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歴史に名を残したデザイナーやアーティストは快適な住まいを作る達人でもありました。限られたスペースを工夫して自分好みに整えた4人の部屋と家具をじっくり解剖します。

アイリーン・グレイのヴィラ

Eileen Gray

南仏カップ=マルタンに女性家具デザイナーの先駆け、アイリーン・グレイが設計したヴィラ[E—1027]がある。20世紀の巨匠建築家ル・コルビュジエがあまりの居心地のよさに嫉妬したという、海に面した崖の上の家だ。竣工したのは1929年で、当時としてはかなり先進的な家だったが、今見てもそのスタイルは古びるどころかモダンで普遍的。現代の私たちも違和感なく住めるであろう、機能とデザインの融合があちこちにちりばめられている。

Living room

ここは大豪邸というわけではなく、どちらかというとコンパクトな平面を分割し、形に制限のあるスペースを工夫して使っている。たとえば海を望む大きな開口部があるリビングは家中でもっとも快適な場所だが、ベッドも置いてしまうことでゲストもソファ代わりに寝そべったりできる。グレイがデザインしたサイドテーブル〈E—1027〉はスチールの脚がベッドの下に入る省スペース設計。丸みを帯びたチェストは引き出しが回転式だから両側から開けることができ、閉じているときは空間をさりげなく仕切る役割も果たす。

Alcove

蝶番で開閉する青い壁はすぐ裏のシャワー室の目隠しで、シャワー室の前には小さなアルコーブがあり、デイベッドが置かれている。頭側の壁には収納棚を取り付け、アームが自由に動く書見台は寝転びながら読書ができるという優れものだ。ちなみにこの簡易ベッドは上から蚊帳をつることもできた。海水浴後の昼下がりにここでお昼寝なんて、さぞ気持ちいいだろう。

グレイは他にもラグやチェア、照明器具を自分でデザインしている。華美に走らず、とことん機能に徹したこのヴィラは、狭い部屋をいかに有効利用するかに悩む私たちにヒントを与えてくれそうだ。

GINZA2022年3月号掲載

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