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韓国ファーストレディーに学ぶ、「嘘をつく人」と「つかない人」の差

  • 2022.5.4
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人間は嘘をつく生き物。でもその嘘を暴きたい生き物でもある

人間は10分間に3回嘘をつくという説がある。一方に、一日200回嘘をつくという説もある。もちろんこれは、のべつまくなし話をしている場合の回数だが、それにしても多すぎる。ただどちらにしても、気づかずに大量の嘘をついているのが人間であるらしい。

もちろん嘘も方便。ある心理学者は「嘘は一種の社会的能力だ」と主張するほどで、実際に嘘をつかなければ世の中うまくは収まらない。「大丈夫?」と聞かれて、全然大丈夫じゃないのに「大丈夫」と嘘をつかないと、その場が丸くおさまらないし、本気のダイエット中にスイーツをもらって「わー美味しそう、うれしー」の嘘は必須。「せっかくだけど私ダイエット中なんで」と言える人は嫌われる。

ところが、SNSが嘘をつきにくい時代をもたらした。今までバレなかったことが簡単にバレるし、糾弾される。人間は、他人の嘘を何が何でも暴きたい生き物でもあるのだ。だからこそ、かつてないほど嘘がヤバい時代になってきたのである。

今や韓国のスキャンダルは、多くが昔の蛮行や経歴詐称や整形を世間が徹底的に暴くというスタイルで生まれる。そもそも韓国ドラマをこの上なく面白くしているのは、嫉妬と嘘だらけなこと。しかも、嘘が多い分だけ暴く力も半端じゃない。浄化作用か、やっかみの裏返しか、ともかく“嘘は暴かれ命取り”、嘘をつくことの危険性がさらに増しているのだ。

その象徴となったのが、韓国の次期大統領夫人であるキム・ゴンヒさんの嘘、経歴詐称である。典型的な大嘘の一つだが、別に誰も傷つけないし迷惑をかけない。でも代わりに本人がズタズタになる。そういう恐ろしさを教えてくれたのだ。

日本でも経歴詐称は何度も大きなスキャンダルとなってきたが、多くの場合、過去にちょっと魔が差しただけの嘘。コロンビア大学の聴講生が、コロンビア大学卒になってしまうみたいな。外国の大学だからわからないだろうとタカをくくっていても、もともと学歴詐称するのは上昇志向の強い人だけに、うっかり上昇してしまうと、嘘が思いがけなく突然あぶり出されてしまう。想定外に注目を浴びた途端、調べて暴く人が必ず出てくるのである。

以前にも、生粋の日本人なのにハーフとして登場し、学歴詐称で情報番組のメインキャスターを直前で降板せざるを得なくなったイケメンがいたけれど、彼の場合、番組に穴をあけ、恥をかかせた罪は重い。それこそ自分がそこまで上り詰めると思っていなかったのだろうが、それだけの嘘をついても頂点に立てると世の中を甘く見た誤算。アメリカ出身と偽れるほど努力してバイリンガルとなったのに、もったいない。天国から地獄へ、あまりに痛い代償だ。

キム・ゴンヒ夫人の場合は、在職歴のない仕事を経歴書に記述し、まだ設立前の協会の理事をしていたと偽り、グループでの特別賞受賞を個人のものとして見せたり、たいして人に迷惑をかけはしないが、極めて小狡い嘘をいっぱいついた。夫が大統領になるとは思っていなかったから。でもゴンヒ夫人は、翌日の韓国紙がすべて一面で取り上げるような大きな謝罪会見を開き、「自分をよく見せようと、経歴を膨らませて誤りを書いたことがありました。あまりにも恥ずかしい」と謝罪している。これがなかなか潔いということで、むしろ好感度が上がったともされる。この際、嘘つきであるのも含め、人間をさらけ出すのが正解のよう。

結果として、この人はファーストレディーになる。韓国では世界一美しいファーストレディー誕生を喜ぶ声も上がっているとか。でも案の定と言うべきか、整形疑惑も同時に生まれ、一部の整形を認めざるを得なくなっている。まさに小さな嘘が、やがて丸裸にされるほどの大事になってしまう。韓国ドラマ超えのストーリーと登場人物に、申し訳ないけれど面白すぎて、これからも目が離せない。

ちなみにこの人、約5億円の資産を持つとされる会社経営者。画家としても活動、芸術系コンテンツの企画会社で成功を収めている。何もこんなセコい嘘をつかなくても、憧れの的になれたものを。でもよく考えれば、経歴詐称でもしなかったら、完璧すぎてむしろ激しく反感を買うタイプ。格差を嫌悪し許すまじという国だから、何もかも手に入れた大統領夫人をやっかまないわけはないのだ。

だからもはや何の落ち度も許されない。禊は済ませたものの、経歴詐称は一生消えないわけで、新たに嘘をついたら一発アウト。この先、多少とも高飛車になったら国民が再び怒りと誹りをぶつけるのだろう。嘘をつく女というレッテルはやっぱり剝がせない。だからずっと謙虚に生きなければいけない運命にある。嘘をつく人は、自己顕示欲と気の弱さが混在している。さてどちらも克服できるのか。

自分のための嘘はやっぱり危険だから、嘘つきにならない方法

やっぱり嘘は怖い。一つ嘘をついたら、それを隠すために次々と新しい嘘をつかなければならず、嘘だらけ、がんじがらめになってもう死にたくなる、何てケースもあるのだろうし、逆にたった一つの嘘がバレたために、会社の同僚全員から「あの子は嘘つき、信用しちゃだめ」と言われ続けるケースも少なくない。嘘って、つく時は息を吐くくらい簡単、でも後々100倍になって返ってくることがあるのを忘れてはいけないのだ。

いくらいい嘘があるといっても、嘘をつき慣れると、善し悪しがわからなくなって、本当の嘘つきになってしまう。極力嘘をつかずに生きたほうが、結果として清々しい、後ろめたさのない人生を送れるのは確かなわけで、ここでは嘘をつかない方法を考えた。そんなのあるわけないと言うだろう。「嘘は人間の第二の天性」

一日200回も口から自然に出てくる嘘をセーブできるのかと。でも、呼吸するように嘘をついてしまうからこそ、人生をダメにする危険性といつも背中合わせなわけで、効果があるかどうかは別として、嘘を減らしたい人は読んでほしい。

まず一つめは、嘘をつく瞬間、その目的を分類する方法。自分を大きく見せるための嘘なのか、はたまた自分が利益を得るための嘘なのか、自分の悪事を隠すための嘘なのか。反対に、誰かを気持ちよくさせるため、誰にも迷惑をかけないための嘘なのか。大きく分ければ自分のためか、他者のためか。

そうやって分類して目的を知ると、自分のための嘘が、何と恥ずかしい格好悪いものかに、一瞬で気づくはずなのだ。何と小さい人間なのだろう、と自分を蔑む材料にもなる。だから今回はやめておこうとのみ込める。でも、他者の利益になる嘘だけはついてあげるという具合に、瞬時の棲み分けをしてほしいのだ。


幸い、大きな嘘をつく時ほど、人間は一瞬冷静になる。昨夜どこにいたの?と聞かれて息をのまない人はいないように。だから考える。その嘘、恥ずかしくない? ついちゃって大丈夫?

もう一つ、これは結構効き目がある。嘘をつこうと思った瞬間、「誰かに見られている」と思うこと。誰かとは、神様だったり“お天道様”だったり、亡くなった家族だったり。ともかく上から誰かが見ていると思うこと。急にマズいと思い、恥ずかしくなり、あわてて嘘をのみ込める。実際やってみると効き目抜群。私自身も、これを始めてから嘘が半分に減った自負がある。いや実際誰かが上から見ているのだ。体験的にも、自分のための嘘にはだいたい罰が返ってくるもの。

そうやって嘘を減らしていくほど、不思議なことに体が少し軽くなる。そして何だか肌に透明感が出てくるような気がするのは、錯覚ではないと思う。やはり嘘をつかない女は清らかだ。そういう境地に一日も早く至りたい。

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

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