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若さへの嫉妬?「最近の若者は」と思ったら、年を取った証拠なのか 実体験を聞く

  • 2022.5.4
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「最近の若者は…」は、年を取った証拠?
「最近の若者は…」は、年を取った証拠?

4月に新卒社員を迎えた会社では、新人研修が行われ、新入社員も少しずつ会社の雰囲気に慣れ始めた頃だと思います。新卒社員と関わった30代前後の社員の中には、ジェネレーションギャップに戸惑い、「最近の若者は…」とモヤモヤした気持ちになった人もいるのではないでしょうか。そして、「『最近の若者は…』と思うなんて、ひょっとして自分は年を取ったのかも?」とがくぜんとすることもあるようです。そうしたがくぜんとした思いと、彼らはどのように向き合っているのでしょうか。エピソードをご紹介したいと思います。

「今どきの若いモンは」に憧れたが…

「『今どきの若いモンは』という漫画を読んでいたので、ジェネレーションギャップに対する心の準備はある程度できていました。自分も下の世代ができたら、漫画に登場する課長のようにがんばろうと思っていました」(Aさん・40歳男性)

そう話すのは、スマホアクセサリーメーカーに勤める係長のAさんです。漫画「今どきの若いモンは」は、「今どきの若いモンは…」が口癖の課長が主人公で、部下である若手社員の仕事の悩みに寄り添い、解決していく物語で、実写ドラマ化もされており、部下たちを優しく気遣う課長の様子が人気を集めています。

Aさんもこの課長を見習い、仕事に悩む若手社員に寄り添おうとしましたが、うまくいかないようです。

「ストレートに『今どきの若者は…』と、不満が出てきてしまいます。ただし僕にはその課長というお手本があるので、現実の自分と課長を照らし合わせて適宜修正しながら、後輩たちと接するように努めています。

僕の場合、加齢のサインがメタボや白髪として先に出てきていたので、すでに加齢を受け入れる心構えではありました。ですので、『最近の若者は……』と考えてしまう自分がいることは、『自分が年を取ったサインの一つ』として受け止めています」

自分の中に手本とできる理想像が明確にあると、努力の助けになるに違いありません。

「嫉妬」を認めたくない

母親から指摘されて「最近の若者は…」と気付いた人もいます。

「実家で母とテレビを見ていたときのこと。『現代の若者』といった内容の番組をやっていて、僕がその若者たちについて『甘えている』や、『面白みがない』などの文句を言っていたのです。

すると、母が横から『あんた、そりゃ嫉妬だね』と一言。僕は反発しましたが、母は『あんたもすっかりおじさんになったんだねえ』と、しみじみとしていました」(Bさん・35歳男性)

そのとき、「母親は全く見当外れなことを言っている」と感じたBさん。しかし、すぐに考えが変わったそうです。

「後で考えてみると、嫉妬は確かにあるかもと思いました。嫉妬をしているということは、無意識で『自分がもう若くない』と考えているからにほかなりません。

『そうかあ、俺ももう若くないんだ…』と気付きショックでしたが、その日、晩酌しているうちにどうでもよくなってきました(笑)。自然の摂理には逆らえませんから、受け入れるしかありません」

前に一歩進むためには、「自分は年を取った」に気付いた後、それをいつか受け入れる必要があります。しかし、その受け入れのために要する期間は人それぞれです。Bさんの場合、極めて短い期間でそれが行われたようです。

部下の仕事の物足りなさがきっかけ

Cさん(36歳女性)は、「初めて老いを実感した」きっかけが、「最近の若者は…」と思ったことだったと話します。

「30歳になったとき、『三十路(みそじ)だよ、やばいよー』と騒いでいましたが、内心では『まだ自分は、全然若い』と考えていました。おそらく、周りの同世代もみんなそうだろうと思います。今の30代は昔に比べて若くなっているので」(Cさん)

若いと見られる年齢は地域によっても差がありますが、一昔前に比べると、確かに「若い」とされる年代は全国的に上がってきている印象です。

「あるプロジェクトで、会社の入社3年目の若手社員とチームを組むことになりました。彼は私より一回り年下で、私は彼を引っ張って盛り立てていこうと張り切っていました。でも、彼の取り組む姿勢が物足りなくて、節々で『最近の若者は…』と思うようになり、やがて『私って、もしかして歳を取った?』と気付きました。

彼への不満は、今思うとただの私の押し付けに過ぎなかったのですが、当時はプロジェクトを成功させたい気持ちも強く、『もっと頑張ってほしい』といったことを彼に話していました。しかし、彼はなかなか思うように動いてくれませんでした。

ある時、彼も自分が興味を持ったことについてなら、そこそこの熱意で取り組んでくれることを発見しました。そこで私は、彼を引っ張るのではなく、彼の自主性をこちらでサポートする態勢に切り替えました。するとプロジェクトをいい具合に進められるようになり、そこそこ成功させることができました。

私としては、後進の指導がうまくいった手応えに満足しています。こうした機会を積み重ねていくうちに、『自分は年を取った』が自然に受け入れられるようになっていく気がします」

相手への理解が自分自身への理解につながることもあります。Cさんの場合は、まだ「年を取った」を完全に受け入れることはできていないようですが、Cさんなりのペースで前向きに進められている様子は、見ていて安心できます。

「最近の若者は……」は、いつの時代も年長者が若者に対して抱きがちな自然な感情です。そして、ここから一歩考えを進め「自分も年を取った?」「昔、自分も年長者にそう思われていたのかな」などの気付きが得られると、「自分は年を取った」という事実をポジティブな形でそしゃくすることができそうです。

フリーライター 武藤弘樹

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