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当事者(夫)とパートナー(妻)が激白した「ADHD」のリアル。

  • 2022.5.2
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発達障害の1つ「ADHD(注意欠如・多動性障害)」は、成人の3~4%、約30人に1人が持っていると言われている。

本書『ADHDの旦那って意外と面白いんよ 本気で発達障害に向き合った夫婦の物語』(講談社)は、交際から合わせて約7年の間に起きたことや学んだことを、ADHD当事者(夫・ダイスケ)と、パートナー(妻・ちゃんまり)それぞれの目線で激白した1冊。

著者のナカモトフウフは、沖縄の暮らしの紹介動画を配信しているYouTubeクリエイター。再生回数400万回超えでバズった「ADHDの旦那って、面白いんよ。」以降人気を集めているADHDの夫と妻の暮らしの動画をもとに、動画では語られなかったエピソードも紹介している。

「この本は、発達障害の一つであるADHDの夫ダイスケさんと妻のちゃんまりが、ADHDという障害に悩み、向き合い、乗り越えるまでのお話です。(中略)数えきれないほど泣いたあと、私たち夫婦は本気でADHDと向き合う決心をしました」

ダイスケさんのADHD

本書は「Chapter1 ダイスケさんのADHD」「Chapter2 ダイスケさんからの告白」「Chapter3 ナカモトフウフ、ADHDと向き合う」「Chapter4 ADHDの旦那って意外と面白いんよ」「Chapter5 ADHDとの付き合い方」の構成。

ADHDの主な特性は「不注意」と「多動・衝動性」。症状の度合いにもよるが、家庭、学校、社会生活でさまざまな困難をきたすとされている。ダイスケさんは「不注意型」と「衝動性」が強いADHDと診断されたという。

■ダイスケさんのADHD
1 自分が興味あることへのこだわりが強すぎる
2 圧倒的な物失くし
3 何かに集中しているときは、何も耳に届かない
4 衝動的に欲求を満たす
5 自分の物差しで考えを押し付ける

脳内をのぞいてみると

ダイスケさんの行動パターンはこんな感じ。

身だしなみへのこだわりが強く、毎朝身支度に2時間かかる。2021年は総額50万円相当の物品・金銭を失くした。しっかりと返事をしていても、じつは聞いていない。衝動買いが多く、1カ月にクレジットカードで100万円使ったことも。ある月に出した動画本数は36本。そのときは1日16時間労働で1カ月休みなし。

そして基本的に、行く先々で電気つけっぱなし、片付けができない、洗濯物はあちこちに置きっぱなし、使用済みティッシュを放置するのも得意技。そんなダイスケさんの脳内をのぞいてみると......。

「やらないといけないことにたどり着くまでに、いくつもの誘惑がある。普通ならそこを制御できると思うけど、(僕の場合は)ひらめいたことが第一優先になって、どんどんやらないといけないことから離れていく」

ダイスケさんに対し、ちゃんまりさんはイライラし、悩み、泣いたこともあったが、そのうちADHDの特性を観察しはじめた。

「引き出しに例えるとわかりやすい。定型は引き出しが100個あるのに対して、ADHDは引き出しが10個しかない。そしてこの10個は、定型の10倍の大きさがある。できることは少ないけど、できることはすごくできる」

自分比最大を目指す

中途半端だったりやり忘れたりというヒューマンエラーが多く、一般的な仕事は続かなかったダイスケさん。社会生活ができない自分に疲れ果てて病院へ行くと、ADHDと診断された。

「何かよくわからないけど俺は障害者だったんだ。異常者じゃなくてホッとした」と感じたという。

好きなことには熱中できるが、苦手なことはまったくできない。そんなADHDの特性を知ったことも転機となり、これからは"好きなこと"にフォーカスしようと、カメラにのめり込んでいった。ホームレスの時期もあったが、いまでは年間数千万円を稼ぐYouTubeクリエイターに。

「発達障害によるハンデを抱えた人間が唯一できることは、自分の人生を諦めずに自分比最大を目指すこと。嘆いても状況は変わらないのだから、自分の好きなこと、好きな方向へ逃げて逃げて逃げまくって、そこを極めればいいんだと思う。それを理解してくれる人が現れることだって、人生にはある」

靴下を黙って片づけられる理由

ADHDを学び、考え、「ダイスケさんの"苦手"を引き受ける」という対処法を編み出し、あれこれ実践中のちゃんまりさん。「私はちゃんまりさんのようにパートナーに優しくできません」とのメッセージがよく届くそうだが......。

「私は決して一方的に夫の障害による行動を受け入れ、許しているわけではない。夫自身が私に愛情と優しさを注いでくれているからこそ、夫が人一倍努力をしている姿を見ているからこそ、そして自分の非を素直に認めて謝ることができる人だからこそ、脱ぎ捨てられた靴下を黙って片づけられるのだ」

発達障害とは~、ADHDとは~、という専門家の解説ではない。ここにあるのは、ADHDをいちから体験した当事者と、そばにいるパートナーの生の声。あくまで一例だが、当事者はこんな思考回路なのか、「面白がる」という視点も大事だな、と気づかされた。本書は、ADHDのリアルを新しい切り口から見せてくれる1冊。

■ナカモトフウフプロフィール

2019年7月から夫婦で動画クリエイターとしての活動を開始。旅行・沖縄での日常・古民家暮らし・ファッション・車・バイクなど、興味ある事を発信中。中でも、ADHDである夫ダイスケ氏との夫婦の日常を紹介した動画の再生回数が400万回を超えるなど、注目を集めている。YouTubeチャンネル登録者数は、2チャンネル合計で31万人超え。

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