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心にじんわり、野良猫ミィを通して人生の機微を描く人間ドラマ『先生と迷い猫』

  • 2015.9.25
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監督は、『神様のカルテ』『トワイライト ささらさや』の深川栄洋。主演のイッセー尾形とは『60歳のラブレター』からの再タッグ。

最近、カフェに行くと「アイスコーヒー......」と言いかけて、「やっぱりホットで」なんてオーダーしてしまう。あぁ、秋なのだなぁ。温かいドリンクを、時間をかけてゆったり飲むのも心地いい。そろそろ、人恋しい時期になっていくのだと、改めて思う。

そんなこの時期におすすめしたい作品が『先生と迷い猫』。誰かと繋がっていくことの、なんともいえない幸せが胸に沁みるヒューマン・ドラマだ。
まずはストーリーから。

原案は、埼玉県岩槻で実際にあった地域猫捜索の模様を記したノンフィクション『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生の物語』(木附千晶著)。現在は映画ノベライズ版も宝島社文庫から発売されている。


◆ストーリー

堅物で、近所でも偏屈者だと評判の、元・校長、森衣恭一(イッセー尾形)は、古びてはいるが、手入れの行き届いた一軒家にひとり暮らし。訪ねてくるのは、亡き妻が可愛がっていた野良猫のミィと、森衣が撮りためていた写真を資料にしたいという市役所職員(染谷将太)の青年だけ。ミィは毎日、妻の仏壇の前に座っては、どこかよそへ出かけていくのだが、森衣は幾度と無くミィを追い払ってしまう。するとミィは現れなくなり、逆に彼女の存在が気になり始めた森衣は、ミィを探し始め、予想もしなかった交流が生まれていく。

もうひとりの主役、ミィ役の女優猫ドロップ。NHK連続ドラマ小説『あまちゃん』などにも出演している実力派。撮影中、彼女に無理強いさせた事は一回もなく、一発OKも多くて周りを驚愕させたほどだとか。実際に会ったら、本当に静かで女優の貫禄たっぷり!


◆ユーモラスで温かい、魅力溢れるキャストたち

主人公、森衣を演じるのは、ひとり芝居でもお馴染みのイッセー尾形。舞台でも、これまでさまざまなタイプの男性・女性を披露し続けたイッセーさんだけに、堅物で、他人を寄せつけない、だがどこか憎めない昭和(?)な不器用男をユーモラスに演じるのはお手のもの。亡き妻を今でも密かに思い続ける、その哀しみを背負った繊細な演技はさすがだ。

そんな森衣と猫のミィを通して繋がっていくのが、市役所職員役の染谷将太、美容師役の岸本加世子、クリーニング屋の娘・北乃きい、猫嫌いの雑貨屋店主・ピエール瀧と、そして、亡き妻役にもたいまさこ、と何とも味わいのある実力派の役者たち。彼らと森衣の、噛み合っているような、ないようなやり取りが絶妙である(笑)。

野良猫ミィがいなくなる→探す。正直これだけのストーリーなのに、ハラハラしたりキューンとなったり、クスクス笑ったり、間延びするどころか、終わった瞬間にもう一度観たくなってしまう。なんだろう、一見シンプルなんだけど、すごくこだわって作られた滋味溢れる料理のような味わい深さがある。

舞台となった伊豆を走る伊豆急行沿線が、映画『先生と迷い猫』公開記念号(ねこずくめ号)の運転を期間限定スタート。車内空間が「ねこずくめ」になっているそう!


◆さいごに

舞台となる伊豆の景色も本作の世界観にぴったりだ。街を吹き抜ける風や目の前に広がる海、一見、なんでもないような日常が、実は自分自身をカタチづくっている大切な存在だったりする。近所の方とのちょっとした挨拶、昔の同級生との時々のメール、遠く離れた両親との電話、そんなささやかなやり取りが、自分の大きな安心を与えてくれていたりする。本作はこうした、忘れがちだけど大切な"幸せ"のカタチを、一匹の野良猫を通して教えてくれる

最後に我慢出来なくて書いてしまうが、野良猫ミィが可愛い。もう、身悶えしてしまいそうなくらいキュートだ。私は無類の猫好き(好きのレベルじゃない、愛レベル、笑)なので、なるべく個人的感情は押さえておきたいが、日々猫に癒され元気づけられている方々にとっては共感ポイントも多いはず。

気になる方は、是非、ミィや森衣(元)校長先生や街の人たちに会いに、映画館へ足を運んでほしい。

『先生と迷い猫』
監督:深川栄洋
出演:イッセー尾形、岸谷加世子、染谷将太、北乃きい、ピエール瀧、もたいまさこ
(C)2015「先生と迷い猫」製作委員会
2015年10月10日より全国ロードショー
http://www.sensei-neko.com

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