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〈ディオール〉始まりの地パリに新装ブティック。メゾンの歴史をたどるギャラリーも

  • 2022.4.21
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〈ディオール〉のパリ・モンテーニュ通り30番地のブティックが、ついにリニューアルオープン。ギャラリーも併設され、新たなモードの聖地となっている。

パリ・シャンゼリゼからほど近い、モンテーニュ通り。ここにブティックを開きたいと強く願ったのは、ムッシュ ディオールその人だった。そうして、ナポレオン1世の子・ヴァレフスキ伯爵が1865年に建てた邸宅が、1947年、勃興するモードの揺りかごに生まれ変わった。

ほどなくして、「ニュールック」や香水「ミス ディオール」など、今に通じる美のアーキタイプがここから産み落とされた。30 モンテーニュのブティックはまさに、女性の新たな夢を描く「夢の王国」だったのだ。それから75年。約2年の改修期間を経て、王国は進化系となって戻ってきた。

歴史あるファサードが修復され、建築は「パリらしさ」で溢れている。内装は現代的でありながら、職人技が光り、〈ディオール〉の原点を感じさせるデザインに。プレタポルテやレザーグッズ、ビューティやメゾンコレクションの空間が、それぞれ開放的かつ有機的に連なっていく。さらにはカフェやレストラン、そして庭園も設けられ、まさに五感でエレガンスを堪能できる。

メゾンの歴史に対するオマージュとして、建築家ピーター・マリノは過去と現在とをつなぐような空間を意識。円形の空間「ロトンド」の脇には、ムッシュのスケッチをホワイトキャンバスのようにして三次元で表現したインスタレーションを。

バラのオブジェは、イザ・ゲンツケンのデザインによる。

様々な木や石が組み合わされ、奥の庭園と調和した空間がおだやかに広がる。

階段脇にも〈ディオール〉のコレクション型が飾られている。

開放的に繋がり合うスペースの中に、レザーグッズやバッグが並ぶ。

壁のインスタレーションが印象的なファイン ジュエリー&タイムピーシズコーナー。

シューズ売り場も、モダニティに満ちている。

同じ建築のなかで、フレグランスの世界も堪能。壁にはフラワーアーティストの東信による、花々を使ったインスタレーション。

[ディオール メゾン]のラインナップも一堂に会する。

プレタポルテも広々とした空間に置かれている。

プレタポルテのほか、ブティックにはメンズのセミオーダーのテイラリング「ドゥミ ムジュール」を扱うスペースも。

「ムッシュ ディオール」の名を冠したレストラン。クリスチャン・ディオールのお気に入りのレシピを取り入れたクラシックな料理と、アートに溢れた内装が引き立てあう。

花を愛し、熱心な庭師でもあったムッシュ ディオール。30モンテーニュの各階に庭があるのはそのため。パリの中心地ましてやブティックの中とは思えない、豊かな植栽が広がる。

パリの中心部に現れたオアシスのような庭が広がるグラウンドフロアで小休憩。30モンテーニュでは、なんと宿泊も可能。「ラ スイート ディオール」と名付けられたプライベートスペースは現状一般公開しておらず、宿泊客だけが楽しめるスペシャルな空間だ。

そしてこの新しい王国は、夢を売るだけでなく、「夢の秘密」をも見せてくれる。オートクチュール文化とメゾンの歴史を展示する「ラ ギャラリー ディオール」だ。

はっとするようなカラフルなインスタレーションに囲まれているのが、ギャラリーの入り口。コレクションピースをミニチュアにして、色合いごとに並べたものだ。色彩の広がりが螺旋階段のカーブと重なり、ファッションの躍動を表現しているようにも見えてくる。

階段を上るとともに、白からピンク、サーモン、オレンジ、黄色へと、オブジェが徐々に色づいていく。

インスタレーションは三層にわたる。

歴代デザイナーが引き継いできたのはどんなエッセンスなのか。ムッシュが描いたフェミニニティはどう変わり、また変わらずにきたか。美しいドレスの眼福に浸りながら、モードについて思考できる場所だ。

各階には、ムッシュのオフィスやキャットウォーク前の支度部屋「キャビン」を再現したものなど、30 モンテーニュならではのリアリティに満ちた展示。そこに、あくまでモダンで、ときに挑戦的ですらあるセノグラフ(空間演出)が重なる。ギャラリーといっても、ここには美術館のようにいくつもの部屋が作られ、それぞれ違う方法で美しいストーリーを紡いでいる。訪れた人がみな、お気に入りの部屋を見つけられるように。

ムッシュからイヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、そしてマリア・グラツィア・キウリへ。各アーティスティック ディレクターのアイコニックなルックを展示。75年の間引き継がれてきたメゾンのエッセンスを感じられる。

1905年〜1957年の代表的ルックを展示。

50sファッションの代名詞的存在となった「ニュールック」。肩のラインや、絞った腰から広がるコローラ(花冠)ラインが特徴。

魔法の森に迷い込んだかのような部屋。色とりどりのドレスが魅惑的に佇む。

魔法の森を進んでいくと、はっと目を引く赤いドレス。

「ラ ギャラリー ディオール」は、パリのオートクチュール精神を象徴する空間となっている。

アート作品も多く飾られ、ドレスとのシナジーを見せている。

「夢のアトリエ」をコンセプトにした真っ白な部屋。

他の部屋を移す鏡面に、あえて上階の様子が透けて見えるようにした天井。美しい白昼夢の中にいるよう。

貴重なアーカイブピースも展示。右奥に見えるのは、2019年秋冬コレクションで発表された、ペニー・スリンガーとのコラボレーション作品。

75年の間、様々なスターが30モンテーニュに足を運んできた。彼女たちとともに時代の「美」を形作ってきた〈ディオール〉のクチュールを堪能。

ファッションの旅へ。〈ディオール〉が様々な文化から着想を得たピースがセレクトされている。

絢爛なドレスが集い、ギャラリーの中にダンスホールが登場している。

プロジェクションを使ったセノグラフで、様々に印象が変わる。

「ミュージアム」の原型は、かつて貴族たちが世界の珍しい文物をコレクションしていた「驚異の部屋」。この展示室では、大航海時代のムードとともに、カテゴリーにとらわれずアイテムを並べている。

「ミス ディオール」の部屋。ムッシュがこよなく愛したバラの花をモチーフにしたドレスが、バラ色の空間で光っている。

メゾンの原点である30 モンテーニュは、まるで光を受けたプリズムのように、〈ディオール〉の多彩な世界を映し出す。さらに覗き込むと見えてくるのは、21世紀の新しい美と女性像だろう。

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