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「何より現場で歌うことが大事だった」アダム・ドライバーが語る『アネット』の撮影現場。

  • 2022.4.18
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“表”でも“裏”でも、映画の成功のために尽くす。

アダム・ドライバー|俳優

カリスマティックな悪役を演じた「スター・ウォーズ」シリーズから、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたノア・バームバックの『マリッジ・ストーリー』、スパイク・リーの『ブラック・クランズマン』など、アダム・ドライバーは、いま、気鋭の監督たちから最も信頼される俳優だ。そして彼の選ぶ出演作にはハズレがない。コロナ禍で2年ぶりの開催で、昨年のカンヌ国際映画祭のオープニングを飾ったレオス・カラックス監督の新作『アネット』も然りだ。

「脚本を読んだのは7年前なので、その時どう思ったかはあまり覚えていないけれど、まずレオスがこの映画の話をしたいと連絡してきたんです。『イエス!』と即答しました。彼の映画は大好きだし、一緒に仕事をしたかった。史上最高の映画監督のひとりですから」

アメリカのポップデュオ、スパークスが約20のオリジナル曲と原案をレオスに持ち込んだことで始まった、ダークなロックオペラミュージカル映画『アネット』。アダムが演じるヘンリーは英雄ではない。世界的に成功したオペラ歌手の妻(マリオン・コティヤール)に嫉妬し、闇に囚われたことで破滅していく。台詞に代わる歌は現場でライブ収録されたが、これも大きなチャレンジとなった。

「事前にニューヨークでたくさんリハーサルしました。でもスパークスもレオスも、音楽性はほとんど二の次だと最初から言っていて、何よりライブで歌うことが大事だった。スタジオでも録音しましたが、90%以上はライブのもの。船の上やバイクに乗っている時の歌は、詳しくはわからないけれど。すべての映画はそれぞれの言語を持っていて、この歌もこの作品独自の言語だと思います」

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ロサンゼルスで、過激なジョークで人気となったスタンダップコメディアンのヘンリー。国際的に有名なオペラ歌手アンと恋に落ちて結婚し、女児アネットをもうける。美女と野人と称され、メディアの注目を浴びるが、やがて倦怠期が訪れる。夫婦仲を修復するため、ふたりはヨットで旅に出るが……。スパークスが原案と音楽を、フランスの鬼才レオス・カラックスが監督を手がけた。●『アネット』はユーロスペースほか全国にて4月1日より公開。

説明を嫌うアダムはインタビューであまり饒舌とはいえないが、本作への思い入れの強さは、主演だけでなくプロデューサーを買って出たことからも伝わってくる。

「どうせなら、と、製作も引き受けました。映画作りの技術的な難しさを知ったり、足りない資金をどこから調達するかなど、そういう(プロデューサーの)仕事も楽しい。映画の成功のために働くのもやりがいがある。この作品では、スタッフのキュレーションにも携わりました。フランスではブームオペレーター、ベルギーではサウンドミキサーなど、国によって異なる文化に出合い、意見交換してきました。結果、全員が同じ方向を向いて製作に取り組むことができた。映画を観ても、きっと感じられると思います」

この作品への献身的な姿勢こそが、彼が映画界で最も売れている俳優である理由だろう。

ADAM DRIVER/アダム・ドライバー1983年、アメリカ・カリフォルニア州生まれ。海軍を経てジュリアード音楽院を卒業後、俳優に。2014年、主演映画『ハングリー・ハーツ』でヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞。「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役でスターに。

*「フィガロジャポン」2022年5月号より抜粋

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