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ドリス ヴァン ノッテン、10の香りと30+1のリップ。

  • 2022.4.12
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3月、パリのファッションウイーク期間中、ドリス・ヴァン・ノッテンの世界を紹介するキュレーション展が3日間開催された。会場となったのは高級住宅地7区に多く残る個人邸宅のひとつで、18世紀初頭に建築された「Hotel du Guise(オテル・デュ・ギーズ)」である。幾層もの歴史の美を湛えた廃墟のような邸宅をパリ・フォトの際に発見したドリスはこの建築物がとても気に入り、1月のメンズコレクションの会場にここを選んだのだという。ちなみにこの館の驚くべき魅力はキャスパー・セイエルセンが撮影したそのコレクションのフィルムから十分に感じ取ることができるのでYouTubeなどでチェックしてみよう。

このキュレーション展では2022~23年秋冬レディスコレクションを纏ったトルソーがテーマごとに小さな部屋に配され、また待望のドリス ヴァン ノッテンのビューティコレクションも同時にお披露目された。プレタのテーマのひとつ「衝突と組み合わせ」は、香水ボトルとリップスティックの容器のデザインと共有である。ストリートウエアとクチュール、プリントと無地などドリスの世界を特徴づけている要素のひとつ。彼のクリエイティビティだけが並列を可能にする“あり得ない組み合わせ”の真髄を、このビューティコレクションの香水とリップスティックにも見いだすことができる。パリのブティックではすでに販売が始まっているビューティコレクション。日本での発売を待ちながら、マラケ河岸のブティックへと向かってみよう。ちなみに香りはジェンダーレスなのでメンズブティックでも扱っている。

18世紀の館のホール、いまも旧式のエレベーターが。仄暗い会場に配置されたコレクションを纏ったトルソーに、香水ボトルのモチーフが見いだせる。photos:Mariko Omura

パフューマー、ドリスの庭などの映像も流されたキューレーション展での香水発表。photo:Pamela Berkovic

オードパルファムはダニエラ・アンドリエ、ニコラ・ボーリュー、ニスリン・グリリーといった世界一流の調香師10名による10の香りだ。共同制作に招かれた彼らは、まず最初にアントワープのドリス・ヴァン・ノッテン家の庭を散歩し、彼の世界に浸ることからインスピレーションを得た。ドリスは彼らとアイデアの交換をし、夢を描き、さまざまな試みを行うといったコラボレーションを“クリエイティブなピンポン”といって楽しんだ。こうして生まれた10種のオードパルファム。同じフォルムながら全てが違う装いのボトルにおさめられている。上下ふたつの素材を組み合わせたボトルは、それぞれ色もモチーフも異なるので香りを選ぶ前に目がボトルを選んでしまうかもしれない。色とプリントに精通していることで知られるドリス・ヴァン・ノッテンの創造なのだから、それもひとつの方法だろう。選んだボトルの香りがどんな感覚をもたらしてくれるか、それはそれでスリリングな遊びが楽しめることは間違いない。

詰め替え可能な100ml入りボトル。220〜240ユーロ。 なお2mlサイズの5つの香りのディスカバリーセットは32ユーロで2種あり。10つの香りのディスカバリーセットは48ユーロ。3種の香りのクリーム、2種の香りのソープも販売している。

ボトルの中には、調香師たちが行った香料の“あり得ない組み合わせ”がおさめられ、名前も個性的だ。「Rock the Myrrh(ロック・ザ・ミルラ)」「Voodoo Chile(ブードゥー・チリ)」「Cannabis Patchouli(カナビス・パチュリ)」「Neon Garden(ネオン・ガーデン)」……。たとえば、ピンクのパウダリーガラスとアニマル柄のセラミックという組み合わせのボトルを手にとってみよう。その香りはダフネ・ブジェによる「Rosa Carnivora(ローザ・カルニヴォラ)」。それはロマンティックな薔薇ではなく、バラの小さな傷のすべてが含まれた奇妙に美しく、リアルな、不完全で曖昧な薔薇なのだと彼女は語る。では、デルフトブルーとダークバーガンディのガラスを合わせたユニークで魅惑的なポーセリンのボトルは?「Soie Malaquais(ソワ・マラケ)」である。調香したマリー・サラマーニュは「私はパリのマラケ河岸のドリスのブティックで、シルクドレスにすっかり恋をしてしまいました。肌に溶け込むようななめらかな質感で、シルクのように包み込むような香水を思い描きました。チェスナットと官能的でシルクのようなバニラを合わせた、優しくグルメな香りです」と。10本のボトルのひとつひとつに素敵な物語が秘められているのだ。

リップスティックにおいてはケース、色、テクスチャーについて“あり得ない組み合わせ”というテーマが表現されている。ドリス ヴァン ノッテンのコレクションの生地から着想を得たプリントがトップとボトムで異なるケースが4種。ローズヒップオイル配合の唇にやさしい30色とクリアバームの1色が同時発表された。仕上がり別に見ると、サテン15色、マット10色、シアー5色だ。リップスティクは色を選び、そしてケースを選ぶという自由に興奮する。

左:ギーズ館でのリップスティックのプレゼンテーション。右:お気に入りのケースにお気に入り色をセット。photos:Mariko Omura

コーラル・セラミック、ネオン・プリント、マラカイト・スネーク、クロックワーク・レザーの4種の詰め替え可能なケース。

ビューティコレクションにはオードパルファム、リップスティックに加え、アクセサリーも含まれている。カーフレザーとプリントを組み合わせたポシェット5種、コントラストを描くカーフレザーケース入りのミラー4種、さらにバイカラーのコームも。マラケ河岸のブティック内には、ビューティコレクションの魅力を詰め込んだ小さなスペースが設けられている。ここでドリスビューティーの世界を発見できる日を指折り数えて……。

Dries Van Noten7, quai Malaquais75006 Paris営)11:00~19:00休)日https://driesvannoten.com

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