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『カムカム』の“希望”であり続けた川栄李奈 “続けられた”ことがひなたにもたらした自信

  • 2022.4.8
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『カムカムエヴリバディ』写真提供=NHK

最終回当日を迎えた『カムカムエヴリバディ』(NHK総合、以後『カムカム』)。3世代に渡るヒロインの物語が紡がれた本作、先代の2人に比べて3人目のヒロイン ・ひなた(川栄李奈)は異色だ。

初代ヒロイン・安子(上白石萌音)と二代目ヒロイン・るい(深津絵里)は家族関係に大きな喪失感、わだかまりを抱えていたが、そんなものと一切無縁なのがひなただ。

るいが実家のある岡山を離れ大阪の竹村クリーニング店に住み込みで働くようになった際に、竹村夫妻の何気ない掛け合いを見て思わず涙ぐむシーンがあった。変に気を使われることもなく、なんだか申し訳なさそうに腫れ物に触るようにされることもない。ただただそこにいる一員であることを“当たり前”にごくごく自然のこととして受け入れ迎え入れてもらえる、そんな心から安心できる空間に、物心ついて以来彼女が初めて触れた瞬間だったのかもしれない。

家族の温もりに飢えていたるいと錠一郎(オダギリジョー)が手探りで一生懸命築いた大月家の食卓には、竹村夫妻の面影が確かに宿っていた。そんな一家団欒の場で、錠一郎と一緒に時代劇を欠かさず見ながら育ったひなたにはそりゃあ一切の陰りも迷いもない。

「自分は一人ぼっちになってしまうかも」
「もしかすると邪魔な存在なのかもしれない……」

るいや錠一郎が幼少期に駆られたことがあるに違いない不安から最も遠いところにいるのがひなたであり、彼女の健やかな成長は両親の祈りによって常に守られてきた。思いっきり泣いたり笑ったり時には憎まれ口を叩いたり、投げ出してみたり、甘えたり、頼ったりできるのは信頼できる大人が常に側にいたからこそだろう。そんな“子どもらしさ”のあるひなたを川栄李奈ははつらつに好演してきた。

人生のどん底にいたるいと錠一郎の元に彼らが生き直すきっかけとして送り込まれたかのような“希望の塊”ひなたは、真っ直ぐで他人の裏を読むことを知らないが、それは彼女にはストレートに思ったことをそのまま表現することを許される環境があり、裏など読む必要のない人間関係を何の疑いもなく享受できていた証でもあるだろう。そんなひなたの“ギフト”を川栄の打てば響くお芝居が見事に彩る。そしてまたある意味、少し重くも感じられかねない背景を一方的に背負わされたひなただが、そんなことを全く感じさせない軽やかさを川栄演じるひなたはずっと損なわないでいてくれた。ずっとずっと“希望”であり続けてくれた。

そんな彼女はまた“普通”や“当たり前”に縋ったり縛られることもない。幼少期から他の家庭と違い、一家の大黒柱は母親のるいで、働かない父親のことを周囲からからかわれることもあった。きっとるいからは実家について深く聞いてはいけないような空気もどこか出ていただろう中、ひなたにはなんだか歪な形をそのまま愛し、大切にできる強さ、“うちはうち”を貫けるタフさと底抜けの明るさが備わっていた。

曲がったことが嫌いで、こうと決めたことをやり遂げようとする侍のような生き方に憧れるも、何をやっても続かず三日坊主だったひなたが、大好きな時代劇のため、またるいや安子、稔(松村北斗)からのバトンを受け継ぐために再び英語に出会い直し、地道にコツコツ鍛錬を重ねる過程の中で大きく成長する姿も見応えがあった。

“続けられた”ことがひなたにもたらした自信は大きく、次々に新たなチャレンジの扉が開き始める。いつしかひなたが家族から“守ってもらう”側で“送り出してもらう”側から、両親を“送り出し”“守り労わる”側にスライドしていく姿を川栄は自然に、そして頼もしく見せてくれ、それこそ三世代に渡るバトンタッチを感じさせてくれた。安子のことになると弱腰になるるいを励まし、見守り支えるひなただが、この時だけはひなたの方がどこか母親のようで、巡り巡る時間や順番に想いを馳せさせる。

アニー(森山良子)の前ですぐには素直になれないかもしれないるいの気持ちをきっと今のひなたならば、齟齬なくそっくりそのまま届けられるに違いない。アニーとるいの真ん中で手を取り合うひなたの姿が目に浮かぶ。(佳香(かこ))

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