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【ゴルフ旅で立ち寄りたい】 “美術館だけど庭がすごい”足立美術館

  • 2022.4.7
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島根県安来市に、アメリカの日本庭園専門誌『The Journal of Japanese Gardening』が日本国内にある約1000カ所の庭から選ぶランキングで“19年連続日本一に輝いた”という場所がある。足立美術館だ。美術館だけど、庭がすごい。島根へゴルフ旅をするなら、ぜひ訪れてもらいたいとっておきの場所だ。

「美術館だけれど、とにかく庭が必見!」とオススメされて、島根県安来市にある「足立美術館」を訪れた。大きな三角屋根のガラス窓が印象的なJR安来駅に降り立ったら、無料シャトルバスに乗って、いよいよ美術館へ。
多様な趣きの庭がある足立美術館は、館内のあちこちから庭が眺められるように工夫されている。歩きながらの庭鑑賞もいいけれど、ぜひ立ち止まってゆっくり過ごして欲しいのが、まるで一枚の絵のようだと評判のスポット、「生の額絵」。

窓の向こうに広がるのは主庭の「枯山水庭」で、水を使わずに水のある風景を表現したのだという。丸くきれいに刈り込まれたサツキ、なめらかな曲線を描く芝生、そして手前に敷かれた白砂。大きなクスノキがあえて窓のそばに“ある”ことで、より絵画らしく見えているのだなと感じる。

また、名画にインスパイアされて完成した庭も。それが、日本画家・横山大観の作品『白沙青松』をモチーフにした「白砂青松庭」。白い砂と躍動感あふれる青々とした大小の松のコントラストは、美しすぎて鳥肌モノ!

「白砂青松庭」の右手奥に、滝が流れているのに気がついた。実はこれ、人工の滝。横山大観作の『那智乃瀧』をイメージして滝までつくってしまうのだから、いやはやすごい!

この素晴らしい庭を支えるのは、足立美術館が誇る専属庭師。年中無休でオープンしているため、日々メンテナンスが欠かせない。「お客様の視点で館内から庭を眺めるのが朝の日課です」と話す庭園部長の小林伸彦さんは、勤続30年の大ベテラン。もともと別の造園会社に勤めていたものの、剪定の繁忙期に応援で出入りするようになったのがきっかけで、30歳のときに転職したそう。

開館の1時間以上前には庭師が全員集合。毎日庭をくまなく見ているから、前日と違うところがあればすぐわかるのだとか。「枯れ枝があるな」「あそこに動物の足跡が」と皆で確認をしたら、作業スタート。庭園は約5万坪、東京ドーム約3.5個分ととにかく広い。だから、美術館のスタッフも続々庭にやってきていっしょに掃き掃除をする。オープン間際の9時を狙って行くと、貴重な朝のお掃除シーンが見られるかも♪

取材時は写真の7人だったが、2022年春より1人加わり8人に。美術館がオープンしているあいだ、庭師は来館者の視界に入らないところで黙々と作業を続ける。仮植場という樹木や芝をストックする場所で育成状況をチェックしたり、竹垣やししおどしなどの竹細工を製作したり。とにかくやることがたくさんあって、庭師はヒマな時間はないそう。ただ、8人というのは、ここの仕事をする上でちょうどいい人数なんだと、小林さんが教えてくれた。

さらに、季節に応じた仕事、というのもある。5月下旬には樹形を美しく保つための、黒松の芽摘みがスタート。ひと枝ずつ、手作業で新芽を根元から摘み取る。6月から10月にかけて行われるサツキやツツジの刈り込みは、初めにばっさり深く刈り込み、そこから丸く美しく整えていく。7月に入ると、ニュースで取り上げられることも多い、800本もある赤松の剪定がいよいよ始まる。小林さんがかつて応援に駆けつけてやっていたのが、まさにこの作業。

4月と7月、11月には泳いでいる鯉を避難させて、池の水を全部抜いて大掃除。こういった大掛かりな作業のとき、庭師は全員早朝出勤し、まだ日が昇らない午前5時から、ヘッドライトを装着して仕事を始めることもあるというから驚いてしまう。

そんな丁寧な仕事ぶりのおかげで、いつ訪れても美しい庭が楽しめるのだから、本当にありがたい。春は新緑がまぶしい、いきいきとした表情が魅力。夏は青い空と、木々や芝生の緑色がダイナミックな眺めを生み出す。秋はなんといっても紅葉。樹葉のところどころに、赤や黄色のアクセントが目を引く。冬は雪景色。まるで山水画のような風景は、雪が積もったときだけのお楽しみ♪

さて、足立美術館から約8kmほどの場所に、足立全康が幼少期に心を動かされた庭がある。それは、同じ安来市内にある後醍醐天皇ゆかりの禅寺、雲樹寺の「元禄の庭」。本堂の裏手に広がる山の斜面に植えられたツツジやサツキを目にすると、「確かに通じるものがあるかも」と思わずにはいられない。これは、丸く刈り込んだ植栽、つまり人間が手を加えたものと、もとからあった自然そのものとの、曖昧な境界を表しているのだとか。

噂に違わぬ、足立美術館の素晴らしき日本庭園。そして、自然を相手に、365日いつでも〝最高の状態〟を維持したいと、メンテナンスに励む8人の庭師。感動の庭そのものと、見えないところで頑張る彼らの情熱を感じるために、ゴルフ旅で島根を訪れた際はぜひ足を運んでみては?


【足立美術館】
〒692‐0064 島根県安来市古川町320
www.adachi-museum.or.jp
■開館時間/【4〜9月】9:00〜17:30【10〜3月】9:00〜17:00
■アクセス/【電車の場合】JR安来駅より無料シャトルバスで約20分 【車の場合】山陰道安来ICより約15分
【雲樹寺】
〒692-0056 島根県安来市清井町281
https://unjuji.com
■参拝時間/8:30~17: 00■アクセス/【電車の場合】JR安来駅よりバスで15分 【車の場合】山陰道安来ICより約10分


写真=南雲恵里香(風来堂)/文=林 加奈子

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