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マラソン一山麻緒選手が資生堂へ 所属チーム移籍と独禁法の意外な関係

  • 2022.3.31
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マラソンはテレビ中継され、所属企業の宣伝効果も大きい(写真と本文は関係ありません)

陸上競技の長距離やマラソンの世界で最近、実業団の選手が所属先を変更するケースが目立つようになっている。女子マラソンの一山麻緒選手も2022年4月、ワコールから資生堂に移ることが明らかになった。

日本記録更新が目標

一山選手は昨夏の東京五輪のマラソンで8位に入賞。世界のトップ選手が集まった22年3月6日の東京マラソンでも全体で6位、日本人では1位になった。今や日本の女子マラソン界のナンバーワンランナーだ。昨年末に男子マラソン日本記録保持者の鈴木健吾選手(富士通)と結婚している。

今回の移籍について、一山選手は資生堂を通じ、「結婚を機に関東での新たな拠点を探し、女性活躍の企業としても魅力に思っていた資生堂に入社を決めました。心機一転、新たな環境でのスタートがとても楽しみです」とコメントしている。

ワコールは京都の会社だが、資生堂や、鈴木選手の富士通は首都圏に練習拠点がある。

ほかにも最近、所属先を変更した有名選手は少なくない。3月13日の名古屋ウィメンズマラソンで日本人1位になった安藤友香選手は、2019年、スズキ浜松AC(現スズキ)からワコールへ。同2位の細田あい選手は昨年、ダイハツからエディオンに移っている。

トラックや駅伝で大活躍してきた鍋島莉奈選手は今年1月、日本郵政から積水化学に移籍した。日本選手権では17年に5000メートル、18、19年に1万メートルで優勝し、世界選手権にも出場している実力ランナーだ。

男子の実業団でも、このところ所属先を変更している選手が少なくない。

駅伝などでは「待機期間」

陸上競技の実業団では長年、選手の移籍を制限する規定があった。しかし、19年に公正取引委員会が、独占禁止法違反の可能性があると指摘。日本実業団陸上競技連合に対し、抜本的に規定を改正するよう要請した。

共同通信によると、同連合はそれまで、元のチームから退部証明書を交付され、円満移籍者と認められた競技者のみが新チームで登録申請できるとし、連合に登録しないと主催大会に出場できなかった。

しかし、公取の要請を受けて同連合は20年1月、選手の「移籍の自由」を最大限に尊重するためのルールを改定。「円満移籍者でない者の登録申請は無期限で受理しない」との条項を撤廃した。新ルールでは、選手は自由に移籍し、移籍先で選手登録できるようになり、退部証明書は廃止された。

もとのルールは「有力選手の引き抜き」を防止する狙いがあった。駅伝やマラソンはテレビ中継され、所属企業の宣伝効果も大きいからだ。

スポーツ雑誌「Number」によると、実業団チームによっては、有力選手を学生時代から経済的に支援しているケースもあるという。今回の改正では、移籍協議が合意に至らない場合でも選手登録が可能となるが、駅伝などの一部では1年間の出場待機期間を設けている、とのことだ。

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