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「目の前に部下がいないとうまくマネジメントできない」そんな上司に欠けている3つの視点

  • 2022.3.29
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「リモートでのメンバーマネジメントが上手くいかない」と悩むマネジャーは少なくない。そんなマネジャーが持つと良い“部下への3つの視点”とは――。

※本稿は、武藤久美子『リモートマネジメントの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

頭痛を持っているビジネスマン
※写真はイメージです
リモートマネジメントは何故必要か

新型コロナウイルス発生直後、「リモートマネジメントは必要ですか」と尋ねられることがしばしばありました。

マネジャーが従来のマネジメントを継続することに難しさを感じているという面はもちろんあります(ちなみに、できるマネジャーが従来行っていたマネジメントは「偶然やついでの機会を使ったマネジメント」です)。しかしそれ以上に、好むと好まざるとに関わらず、リモートワークによってメンバーに訪れた変化に対応するために必要なのではないかと考えます。

出所=『リモートマネジメントの教科書』より
出所=『リモートマネジメントの教科書』より

とはいえ、すべてのメンバーが責任を果たしながら自由を享受できるわけではありません。たとえば、仕事の基礎や人間関係ができていない新入社員は、すぐには自律的に働き、責任を果たせる状況にはならないでしょう。

また、リモートワークでは、業務上直接関係のある人とのやりとりに“閉じる”ことが増えます。マネジャーからみると、もっと新しい活動をして欲しいでしょうし、メンバーもこうした状況が続くと成長の鈍化を感じるかもしれません。

加えて、責任を果たし、自由を享受できているメンバーについては、リモートワーク下では「今活躍できているのは自分(だけ)の力だ」と思うかもしれません。

リモートマネジメントとは、メンバーが、個として立ち、物理的距離が離れていても心理的なつながりを感じながら働き、社外からも求められる人材が積極的に「ここがいい」と自社・自組織を選ぶ状態になることを助けることが求められます。

リモートマネジメントに必要な3つの視点

改めて、リモートマネジメントとは何かを表すと

●リモートワークは、メンバーに「自由と責任」をもたらし、マネジャーの「偶然やついでの機会を使ったマネジメント」を困難にする。
●リモートマネジメントとは、メンバーの3つの「こ」、①個として立つ、②心の距離が近い、③ここがいい、をつくる意図的な支援である。

リモートマネジメントの3つの「こ」
出所=『リモートマネジメントの教科書』より

たったこれだけです。3つの『こ』、それぞれについて解説します。

①個として立つ

「個として立つ」は、メンバーが、「自律的な職務遂行や協働を通じて、組織が目指す方向性に沿った良い動きで成果を上げている状態」を指します。個として立つメンバーは仕事への適応感や効力感を感じるとともに、メンバーに対する良い評判、ブランドが蓄積されることで、社内の人から声がかかって、新たな成長や挑戦の機会が生まれます。

「個として立つ」は、「自律的職務遂行」と「自律的協働」、そして「セルフブランディング」から成ります。

「自律的職務遂行」とは、一般的に「自律」という言葉から想起されるイメージに近いと思います。自分を律して適切に職務を遂行し、完遂することです。

「自律的協働」とは、マネジャーやハブとなる人材の介入がなくても、メンバーが必要に応じて様々なメンバーと一緒に仕事をして成果を上げることを指します。

「セルフブランディング」とは、文字通りメンバーのブランドを立たせることですが、ブランドといっても、「その道の第一人者」といったような尖ったブランドである必要はありません。たとえば、営業職の補佐をしている人であれば、「既存のお客様への一次対応が完璧」といった日常に根差したものでも結構です。また、ブランドという言葉を使ったのは、「周囲に知られる」ということが大事だからです。

リモートワークでは、誰かの仕事ぶりを偶然目にして、このような仕事の仕方をするのだな、ということを判断するのは難しいです。よって、何ができる人か、得意な領域は何か、どんな仕事ぶりの人かということを、別の方法で周囲にもわかってもらうことが大切です。

「個として立つ」を支援するリモートマネジメントとは、まさに、メンバーの「自律的職務遂行」と「自律的協働」、そして「セルフブランディング」を対象にすることになるのです。

②心の距離が近い

「心の距離が近い」はソロワーク化、それに伴う孤軍奮闘感や小さい枠の中に閉じてしまうことを防ぐものです。

それを支援するリモートマネジメントのポイントは、「つながる」です。

メンバーが、会社、自組織の方向性に共感し、自分の仕事とのつながりを感じられる状態を指します。加えて、地理的に離れていても、マネジャー、同僚、先輩・後輩、社内外関係者に、自分の存在が受け入れられており、そうした「みんな」の存在も感じられる状態です。

「心の距離が近い」は対面のときはあまり意識する必要はありませんでした。マネジャー、先輩、同僚、後輩など、メンバーの近くには誰かがいたからです。リモートマネジメントで特に意識するポイントと言えるでしょう。

【応用編】③ここがいい

「ここがいい」の「ここ」には、「この会社」「この職場」「この仕事」「この仲間」「この会社の目指す世界感」……など、会社にあるものなら、色々なものが入る可能性があります。

何が入るかはメンバーそれぞれで違いますが、「個として立つ」を体現できている人が、「社外に素敵な会社や場はたくさんあるけれど、やっぱり○○があるから、(□□がないから)ここで働き続けたい」と思える状態をつくることです。

リモートマネジメントのスタートは、「個として立つ」というメンバーの自律を支援することです。そのマネジメントがうまくいったあとのメンバーは、社外でも活躍できる人材になっていることでしょう。

そうした人に、積極的に自社を選んでもらう。「ここがいい」は、リモートマネジメントの応用編とも言えるでしょう。

今日からできる! 最初に取り組むべきこと

自分のメンバーに対して、次のどちらに普段関心があるかを考えてください。

Aメンバーの仕事の側面、業務の進歩および質への関心が高い Bメンバーの人の側面、心情やつながりへの関心が高い

Aと回答した方は、「個として立つ」、Bと回答した方は「心の距離が近い」について、日々のマネジメントを点検し、できそうなことから始めてみることをお勧めします(なお、「ここがいい」は応用編という位置づけですので、「個として立つ」「心の距離が近い」が一定程度進んできてからで良いと思います)。

・Aと回答→「個として立つ」からはじめる ・Bと回答→「心の距離が近い」からはじめる

武藤久美子『リモートマネジメントの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)
武藤久美子『リモートマネジメントの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)

つまり、マネジャー自身の関心の高い方から選んで、挑戦したり、苦手を克服したりすることをお勧めします。もちろん、マネジャーが、あえて自身の関心が薄いところから始めれば、メンバーが変化をすぐに感じてくれるかもしれません。しかし、関心が薄いということは、その領域についてアンテナが磨かれていないことが想像されます。関心の薄い分野は、情報をキャッチできるようにすることから始めることになるので、うまくできなくて悩む時間も増えるでしょう。

また、マネジャーはリモートワークが入ってくる前から多くの役割や業務を担い、大変な状況にあります。マネジメントを変えるのは簡単なことではありませんから、まずは、マネジャー自身の関心のあるところから取り組んでいくことで、変化に向けて頑張るためのエネルギーを作れた方が良いのではないでしょうか。

武藤 久美子(ぶとう・くみこ)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブコンサルタント
2005年株式会社リクルートマネジメントソリューションズ入社。組織・人事のコンサルタントとしてこれまで150社を担当。「個と組織を生かす」風土・仕組みづくりを手掛ける。働き方改革やリモートワークなどのコンサルティングにおいて、クライアントの業界の先進事例をつくりだしている。早稲田大学大学院修了(経営学)。社会保険労務士。

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