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【お祭りトリビア連載4】全国の七夕祭りで飾られる「くす玉+吹き流し」の由来は何?

  • 2022.3.26
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日本の祭りに関する素朴な疑問を連載形式で取り上げるTABIZINE。今回は、ちょっと季節外れですが七夕の飾りについて紹介します。七夕祭りと言えば全国各地にありますが、なんとなく飾り付けが似ていますよね。特に商店街などを舞台にする七夕祭りは、大きな玉の下に糸を垂らした飾り物が定番のようにつり下げられています。あの玉と飾りは一体何なのでしょうか。

上にある大きな玉が「くす玉」、垂れている糸が「吹き流し」

愛知 amnat11 / Shutterstock.com

七夕祭りと検索すると、東北三大祭りの仙台七夕まつりに関する情報が多く出てきます。東京で言えば、「阿佐ヶ谷七夕まつり」がメジャーですよね。

筆者が育った埼玉県で言えば、狭山市の「入間川七夕まつり」があって、現在住んでいる富山では「高岡七夕まつり」や「戸出七夕まつり」などが有名です。

あらためて写真をチェックしてみると、大きな玉の下に糸を垂らす例の飾り物がたいていは見受けられます。

「あの飾りは何なんだろう」と疑問を感じて調べてみると、それぞれの部位に呼び名があるみたいです。一番上にある大きな玉を「くす玉」と呼んで、その下に垂れている糸を「吹き流し」と言うそうです。吹き流しに関して辞書を調べると、

<旗の一種>(『広辞苑』より引用)

とあります。同じ旗でも、何本もの長い絹をさおの端に結び付けて風になびかせる旗で、もともとは戦国時代に戦陣で使ったみたいです。

この戦陣の吹き流しを端午の節句(5月5日)でもまねて立てるようになりました。近世以降、端午が男子の節句となったため、戦陣で使われた吹き流しのミニチュアが庭先でも立てられるようになったみたいですね。

こいのぼりも、江戸時代の中期以降に男子の出世健康を祈って、吹き流しを発展させた歴史があるみたいです。

一方の「くす玉」については、何かの開業や開通の式典で関係者がひもを引き、玉を割って、玉の中から垂れ幕や紙片、カラフルな糸を垂らし、1つの見せ場を祝祭につくる、そんな光景が思い浮かびます。

しかし、辞書を調べると、

<5月5日の端午に、不浄を払い邪気を避ける具として簾(すだれ)や柱に掛け、また身に帯びたもの>(『広辞苑』より引用)

とあります。香料を玉にして袋に入れ、造花などで飾り、玉の下に五色の糸を長く垂らします。五色の糸を垂らす理由は、古代の中国で5色の糸を柱などに垂らして飾る風習(長命縷・ちょうめいる)が端午にあったからみたいです。

要するにくす玉は、中国から伝った端午の伝統なのですね。長命縷(ちょうめいる)の伝統は、同じく端午の節句で立てる日本のこいのぼり(コイ、およびコイと一緒に飾る5色の吹き流し)にも影響を与えているとの話。

では、端午の節句に関係した吹き流しとくす玉が、いつごろから七夕で飾られるようになったのでしょうか。

くす玉+吹き流しの組み合わせは仙台で生まれた

仙台 Vassamon Anansukkasem / Shutterstock.com

もともと日本の七夕は、乞巧奠(きこうでん)という中国の七夕行事が原型だったと『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)に書かれています。

乞巧奠(きこうでん)とは、中国から平安時代ごろに伝わった行事で、農耕に一生懸命な牽牛(けんぎゅう)=アルタイルと、技芸に優れ機織りを欠かさなかった織女(しょくじょ)=ベガの2つの星をあがめる祭りです。2つの星に技巧の教えを乞う祭典(奠)が乞巧奠(きこうでん)です。

この中国由来の風習が、日本独自の棚機津女(たなばたつめ)と結び付いて七夕が生まれたと言われています。

けがれのない女性が着物を織って棚に供えて、一夜妻として神迎え、秋の豊作を祈り、人々のけがれをはらうみそぎの行事を棚機(たなばた)と呼んだそうです。その一夜妻に選ばれた女性を棚機津女(たなばたつめ)と呼びました。棚機津女(たなばたつめ)とは、はたを織る女の意味で、秋になって着る着物(秋去衣)を織る女=秋去り姫とも『広辞苑』では説明されています。

乞巧奠(きこうでん)と棚機津女(たなばたつめ)が結び付き、江戸時代に庶民の間でも七夕が広まると、機織りなど女子の手芸上達を願う、あるいは男子の手習いの上達を願う祭りに発展していきました。

「機織りが上手になるように」という女子の願いは5色の糸を笹竹に飾る形で表現されます。笹竹が選ばれた理由は、真っすぐに伸びて生命力に優れているからだと、丹波新聞のウェブ版にも書かれています。

この笹竹に糸を飾る習慣が、吹き流しの飾りへと後に発展していったのですね。

平塚 THAIFINN / Shutterstock.com

くす玉については、比較的はっきりとした記録が残っているそうです。発端は東北三大祭りの1つで、日本屈指の七夕祭りである「仙台七夕まつり」だそうです。

仙台七夕まつりの公式ホームページによると、仙台市民の森権五郎さんという商店街の店主が、庭に咲くダリアの花を見て、ダリアのような飾りを七夕飾りに応用したいと考えたところから歴史が始まるそうです。

2つのかごを丸く組み合わせ、奇麗に飾り付けて、吹き流しと合体させました。第二次世界大戦敗戦の翌年の出来事です。

そのくす玉+吹き流しの組み合わせが、市内に広まり、県内に広まり、全国に広まって、日本における七夕の伝統的な飾りになっていったのですね。

こうして歴史を振り返ってみると、七夕の祭りそのものが文化のミックスで、さまざまな合体と変化が飾り付けにも見られると分かります。

ちょっと難しく感じるかもしれませんが、この手の知識をもっておくと、各地の七夕祭りで飾り付けを見た時に、ちょっとだけ背景の意味が理解できるはず。祭りの見え方も楽しみ方もまた違ってくると思いますので、夏までぜひ覚えておきたいですね。

[参考]

※ 節分と節供の民俗

※ 七夕の歴史・由来 - 地主神社

※ 古代は短冊ではなく「糸」 七夕の歴史ひも解く 笹には厄除けの力あり - 丹波新聞

※ 仙台七夕浪漫 由来と七夕飾りの作り方

※ 歴史 - 仙台七夕まつり

※ 仙台七夕~飾りに込められた意味を知ってますか?~ - 青葉環境保全

※ 森権五郎さん、親しくなった米兵と

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