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松本潤『となりのチカラ』親に呪いをかけられた親が子どもに呪いをかける……毒親連鎖!

  • 2022.3.24
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『女王の教室』『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ)などのヒットドラマを多数手がけた脚本家・遊川和彦がマンション住民たちのコミュニティを描く話題作『となりのチカラ』。402号室の木次家の父親によるDV問題に向き合った6話から、チカラの妻が実家に帰ってしまったという中越家の問題を描いた7話までを振り返ります。

都内のあるマンションに引っ越して来た中越チカラ(松本潤)と、さまざまな問題を抱えたご近所の人たちとの関係を描くこのドラマ。中越チカラが、マンション住人たちの問題に首を突っ込みまくったことで、お互いに無関心だったお隣さんたちが、一気に親戚くらいのレベルまで仲良くなった。

「いろいろあったけど、マンションの絆もさらに深まって、めでたしめでたし」

とチカラも満足していたが、今度はチカラ自身の家庭にトラブルが発生する。

DV問題は解決したが妻が家出

それぞれ問題を抱えていたお隣さんたちだが、チカラのお節介力で少しだけ前を向いて進むことができるようになった。
しかしその中で、まったく問題が解決していなかったのが402号室の木次家。父親の学(小澤征悦)が娘の好美(古川凛)を虐待している疑惑がある。
チカラが首を突っ込んで以降、好美への暴力は収まっているようだが、代わりに矛先が妻・達代(映美くらら)へ向かっているようだ。
チカラを中心に、達代と好美を心配したお隣さんたちが集結し、あの手この手でDVを防ごうと行動する。
そんなお隣さんたちの姿に心を動かされ、学に従うままだった達代も、好美を連れて家を出ることを決意。

それはいいのだが、達代の決断に触発されて、チカラの妻・灯(上戸彩)まで家を出て実家に帰ってしまったのだ。

コンプレックスが、妻や子どもへのDVに

このDVエピソードでは「呪い」というキーワードが出てきた。

娘や自分に対してDVを振るう夫から、なぜ達代が逃げ出さないのか、お隣さんたちは不思議がっていたが、その原因は達代にかけられた「呪い」だった。
幼少期から両親に「姉たちと違ってかわいくもないし頭もよくない」「お前は将来、結婚して養ってもらうしかない」と言われ、さらに結婚後は夫から「お前は社会人の経験もないんだから、オレに見放されたら生きていけないぞ」という呪いの言葉をかけられ続けてきたのだ。
その結果、自己肯定感が削られ、学のDVから逃げることができなくなっていた。

一方、暴力を振るっていた学自身も、親から呪いをかけられていたようだ。
自分よりも優秀な兄弟と比較され、両親から劣等生扱いされ続けてきた。そのコンプレックスが、妻や子どもへのDVとなって表出したのだろう。

毒親による負の連鎖。

他の住人たちの中にも毒親に苦しめられていた人がいる。

「少年A」疑惑が持ち上がっていた上条知樹(清水尋也)は、母親から虐待を受け続けていたことで感情をうまく表現することができなくなってしまった。
道尾頼子(松嶋菜々子)の娘・美園(成海璃子)も、頼子から自殺した弟の代わりに過干渉を受けるようになり、一時期は縁を切っていた。
そして、家出した灯の家庭にも若干、毒親・毒兄の気配があるのだ。

「人間って素晴らしい」となるのか?

灯は子どもの頃から「勉強しろ、勉強しろ」と育てられてきたものの、実家の寺を継ぎたいと申し出ると「お前は女だからダメだ」と拒絶された。
結婚相手に関しても「売れない画家、売れないミュージシャン、売れない作家」はダメだと散々言われていたという。

そんな親に対する反発心からなのか、売れない作家であるチカラと結婚しているが、生まれた子どもたちに対して、毒親的な行動を取りそうになっている自分に戸惑っているようだ。
娘・愛理(鎌田英怜奈)は数字を使って人をなめるようなことばかり言う。そして息子の高太郎(大平洋介)のあまりの成績の悪さに不安になってしまう。

「このままだと怒鳴ったりたたいたりしちゃいそう」

夫のチカラがお隣さんの問題に首を突っ込んでいる場合じゃないくらい、灯はギリギリの状態だったのだ。
家を出た理由は「話を聞いてほしかった」ということだが、たっぷり話を聞いてもらってスッキリしたものの、問題解決に向けた提案ができないチカラに幻滅して、まだ家には帰れないという。
これまでのパターンを見ても、チカラは話を聞くことはできるものの、根本的な問題解決はできない。灯のフォローがあって、何とかかんとか問題を収束させているわけだが、灯自身の問題となると頼るわけにもいかないのだ。

となると、これまでチカラに助けられてきたお隣さんたちが力を合わせて中越家の問題解決に動くというのがセオリーだが……。
そのお隣さんたちは灯の家出で、いっぱいいっぱいになっているチカラが、自分たちの悩みに向き合ってくれないことを不満に思い、チカラに対して反感を持つようになっているのだ。

なんて理不尽な!

この辺りが、いかにも遊川和彦らしい展開だ。
他人を助けてあげて、その場では感謝されたとしても、後で自分を助けてくれるとは限らない。
「人間って素晴らしい」的なテーマを描きたがるくせに、人間のイヤな部分も同時に掘り下げてしまう遊川ドラマ。

「やっぱり人間って素晴らしい」という結末に向かうのか、「やっぱり人間ってクソ」というオチになるのか!?

■北村ヂンのプロフィール
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。

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