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「会社で正当に評価されない」そんな不満が募る人に僧侶が勧める"まったく新しいゴマのすり方"

  • 2022.3.17
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「上司に正当に評価をしてもらえない」そんな不満とどう向き合えばいいのでしょうか。両足院副住職の伊藤東凌さんは「自分が『評価される人』になりたいなら、自分も評価する人になることです」といいます。その心は――。

真実と想像を切りわけて考える

「自分は正当に評価されていない」、そういう悩みは実際によく聞きます。

まず「評価」の大前提として考えなければいけないのが、事実と想像を切りわけること。

両足院 副住職 伊藤東凌さん
両足院 副住職 伊藤東凌さん

たとえば「上司から評価されない」という人に「どこでそう思ったのですか」と聞いてみると、「先週も目線が冷たい気がしたから」「声のトーンが低かったから」という答えが多い。抽象度が高くて、どこまでが事実でどこまでが想像かがあいまいなのです。もとをたどると、たまたま上司の体調が悪かった、忙しくて余裕がなかったというだけのことも多い。

そう考えると、1回ダメ出しされたのは、特に深い意味はないかもしれない。どこまでが事実でどこまでが想像かというのは、まず問い直さなければいけないことですね。

自分の態度を振り返ってみよう

降格や減給といったはっきりわかるファクトならともかく、コミュニケーションの中で評価されていない気がする、気まずく感じるというのは、もしかするとこちら側にも原因があるのかもしれません。

両足院
撮影=水野真澄

最近、明るく挨拶をしていなかった、声をかける回数が減っていたということはありませんでしたか?

こちらの不満が知らず知らずのうちに相手に伝わっていて、相手から声をかけにくくなってしまっていた可能性もあります。「評価されない」と感じたときは、自分側のコミュニケーションも振り返ってみる必要があります。

評価されたいなら評価する人になる

さらにいうと、自分が「評価される人」になりたいなら、自分も評価する人になることです。相手をよく評価すれば、必ず自分もよく評価される人になります。

もちろん部下は上司の仕事ぶりを評価できる立場ではありません。ですから、上司への評価というのは、結果ではなく、そのプロセスを承認したり、気づいたりして言葉にするということです。

両足院 副住職 伊藤東凌さん。「相手が自覚していないことまで気づいて評価し、言葉にしていくことが大事」と話す。
両足院 副住職 伊藤東凌さん。「相手が自覚していないことまで気づいて評価し、言葉にしていくことが大事」と話す。(撮影=水野真澄)

たとえば「昨日の○○さんの話、すごくよかったです。あの一言で、みんなの雰囲気が変わりましたよね」「メールの返信、すごく早くてびっくりしました。ありがとうございます」といったこと。これなら上司に対しても言えますよね。

それだけでなく「挨拶から気持ちよかったです」「立ち姿がきれいでした」など、本人ですらそのアクションを自覚していないだろうという細かいところまで、評価して具体的に言葉に落とし込んでいきます。

ゴマすりと思われてもいい

ゴマすりに見えてしまいそうですが、これはゴマすりと思われてもいいぐらい、コミュニケーションにおいて重要なことです。気づきという自分の能力を最大化し、その人の有形無形の波及効果を全部把握しようとしているからです。

「あなたがいてもいいよ」から一歩進んで、「あなたがいてくれてこういういい流れになった」ということを、言葉にしてきちんと伝えていけるのは、上級レベルのコミュニケーションです。これこそ、みんなが違いを認め合える、ダイバーシティの根幹になるものではないでしょうか。

評価されたい人が、今すぐすべきことは相手を「評価する」、たったこれだけです。そうすると、あなたの気づき力に対しても、社内の評価が高まっていきます。

そして他人を評価する人間を極めていけば、おそらく自分が評価されているかどうかは気にならなくなるでしょう。

うまく評価できる人になるための禅ワーク

他人をうまく評価できるようになるには、どうすればよいのでしょうか。禅ワークをご紹介しましょう。

まずトライしてほしいのは、自分の身体を評価することです。毎日、自分の身体をねぎらう、褒める、承認する。たとえば、一日じゅう歩いた日なら、その夜、布団の中で「膝が歩くのを支えてくれたな」「足の裏も頑張ってくれた」など、自分の身体に対して感謝と評価を与える時間を持ってください。

両足院にて
撮影=水野真澄

重いバッグを持ち歩いていたら「肩や腕が大活躍してくれた」、頭の中でぐるぐる悩んでいたら「いっぱい働いてくれてありがとう」……。こんなふうに、なるべく言語化していく。自分をねぎらって評価していると、人に対しても同じことができるようになります。上司にもできますし、もちろん部下にもできる。

一日に一回は、自分をねぎらう時間をしっかりと持ってほしいですね。

身近にあるものを評価するのもよいでしょう。たとえばスマートフォン。私たちの生活に欠かせないツールと考えたら「いつもありがとう」と、自然にねぎらう気持ちが湧き起こってきます。

そう考えると、いつも使っている茶わんや箸にも「なかったら食べることもできない。ありがたいな」と思えてくるでしょう。

こうしたワークをつづけていると、会社の同僚だけでなく、警備の人や掃除の人など、いわゆる裏で支えてくれている人たちにも声をかけることができるようになります。「いつも見守ってくださってありがとうございます」とか「きれいにしてくれて感謝しています」とか、そこに気づいて声をかけられるようになる。そうすると自分のことがまた好きになれるのです。

悩んでいる人の「今」は長い

最後に、それでも評価されないことが納得いかないという人にお伝えしたいことがあります。それは「今」という時間を縮めてほしいということです。

「今」というのは、この瞬間のことと思われがちですが、悩んでいる人の「今」は、この瞬間だけでなく、もっと長い時間です。つまり評価されていないと感じてからの時間、そしてこれからも評価されないだろうと感じる時間、それらをまとめた時間を「今」ととらえています。評価されていないと悩んでいる人は「今」が長いのです。

しかし感覚をひらき、周りにある幸せを感じ、本当の心がある「今」に戻ると、時間は縮められます。きれいな音を聴く、いい匂いを嗅ぐ、美しいものを見るなどすると、幸せを感じることはできます。

人は誰もが変わりつづけます。あなたも変わります。評価されていないと感じても「今」に戻れば、その評価がずっとつづくわけではないと思えるでしょう。

今はこうだけど、次はわからない。変化を前提にすると希望が生まれます。そのことも忘れないでほしいと思います。

構成=池田純子

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職
京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。

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