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これぞローカルの味! 日本で本格台湾ごはんを楽しむコツ

  • 2022.3.23
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台湾の食文化にふれるとおいしいものを食べたい!って前向きな気持ちになる

日本にいながら台湾に行った気分を味わいたい……! そんな願いをかなえてくれたのは、現地の方でも知らない情報を知っているとうわさの台湾マニア、声優・池澤春菜さん。your SELECT.Lifeの台湾ごはん企画・第二弾となる今回は、池澤さんが「お店の中がまるで台湾」だという、東京・浅草橋にあるカフェ「家豆花(ジァードウファ)」を訪れました。

「家豆花」の入り口。横のカウンターからテイクアウトもできます

「家豆花」は祖父の代に日本に来たという山岡さんファミリーが経営するお店。ふだん家で食べていた台湾の家庭料理が日本で人気になっている様子を見て、2020年にお店をオープンしたのだそう。「店の中に台湾の人しかいないこともあるよ」と山岡さんが言うのも納得できるローカルで温かい雰囲気の店内で、第一弾では語りきれなかったマニアックな台湾ごはんの魅力を池澤さんに教えてもらいました。

“台湾のおばあちゃんの家”で聞いたお家ごはんの話

「家豆花」のカウンター
ごちゃごちゃした感じが逆に落ち着くアットホームな「家豆花」のカウンター

「家豆花」の店内は「台湾のおばあちゃんの家」がテーマ。山岡さんたちが現地からハンドキャリーしてきたという雑貨であふれ、棚の上には台湾の家庭料理には欠かせない家電「電鍋(ディエングォ)」が並びます。池澤さんによると、もともとは日本から渡った炊飯器が台湾で古い形のまま残ったものだそう。

「家豆花」にある緑と赤の電鍋はなんと50年前のもの。最新の型はスイッチの形がアップデートされているそうですが、池澤さんはこの古いデザインが好みだそう

「ONスイッチのみのシンプルな電気鍋で、結婚したときや、留学するときには、台湾の人はみんなひとつ抱えてもっていくんです(笑)。単純な機能だからこそ工夫すればいろんな料理に使えます。煮る、炊く、蒸す、何でもできるんですよ」

電鍋型ヘルメット
これも電鍋?と思いきや、電鍋型ヘルメット! ほかにも電鍋型の小物入れなど、グッズも多く、集めているマニアも多い

池澤さんの電鍋愛トークから始まった話は、しだいに台湾の家庭で食べるごはんの話へ――。共働き率が高い台湾では、家で食べるごはんも、この電鍋に朝仕込んでおいたものを出すだけにするなど、おいしいものを簡単に用意して食べる家庭が多いのだとか。

「台湾の友達の家に遊びに行くと、外で買ったおかずも合わせて15分くらいでパパッとごはんが出てくるんです。おうちでの食事は取り皿はなくて、みんなご飯の上におかずをのっけて食べる。お弁当も同じなんですけど、おかず・オン・ザ・ライス文化なんです」

台湾の飲食店ではお米はセルフサービスで無料、上にのせるおかずのみ注文するスタイルのお店もあるそう

山岡さんが家でふだんから食べていた家庭料理がベースになっている「家豆花」の食事系メニューも、もちろんおかず・オン・ザ・ライス式。人気メニューを池澤さんに食べてもらいました!

「家豆花」の人気ごはん系メニュー3選

魯肉飯(ルーローハン)

ここでランチをするならまず食べたいのが、日本でも有名な魯肉飯。「お肉がコロコロで、脂の部分が甘く溶けて、子どものとき食べたそぼろごはんのような、甘辛で優しい味です」

魯肉飯(単品)¥700(税込)
魯肉飯(単品)¥700(税込)。「魯肉飯は種類や呼び方がいろいろあるんです。台湾の北側では魯肉飯で、南側では肉燥飯(ローザオハン)って呼んだり、豚の角煮がドン!とのっているものは焢肉飯(コンローハン)といいます」

トッピングとしてのっているのは魯蛋(ルーダン)という、魯肉飯の汁と一緒に煮込んだ卵と、高菜にたくあん。台湾料理になぜたくあん?と不思議に思うかもしれませんが、こってりとした味つけの魯肉飯には、たくあんやべったら漬けのような箸休めになるトッピングがのっているのが一般的だそう。「多分、昔日本の人が台湾に行ったときに伝わったんじゃないかな」と山岡さんは言います。

鶏肉飯(チーローハン)

魯肉飯よりもあっさり食べたいときにおすすめなのが「本当は鶏肉じゃなくて七面鳥でつくる」と池澤さんが教えてくれた鶏肉飯。ご飯の上に蒸した鶏肉とトッピングをのせ、フライドオニオン、台湾風ネギダレで風味付けした一品です。「さらさらのご飯とタレがよく合いますね〜! フライドオニオンがアクセントになっておいしいです」

鶏肉飯(単品)¥700(税込)

「場所によって魯肉飯の方がポピュラーな地域もあるし、嘉義(かぎ)(※台湾中南部の地域)のように鶏肉飯が売りの地域もあります。その土地の材料を使うので、鶏肉飯もあっさりしていたり、トロトロこってりしていたりもする。台湾で夜市に行くと小さいお茶碗で30円くらいで売っているので、魯肉飯と両方買って食べ比べると楽しいですよ」

麻油鶏(マーヨーチー)

こだわりの砂肝を具として使うため、仕入れがあるときしか店頭にないという特別なメニュー。「麻油鶏は鶏肉と乾燥させたしょうが、台湾のお米のお酒とごま油を入れて煮込む、体を温めてくれるスープです。台湾では産後のお母さんが飲みます。家豆花の麻油鶏は大きな鶏肉と砂肝が入っていて、ちょっとお酒の風味が最後に苦味みたいに残るのがおいしいですね」(池澤さん)

麻油鶏とフライドオニオンがのったご飯、愛玉子(オーギョーチー)のセット¥1000(税込)。愛玉子は植物の種子から取れるエキスを固め、レモン風味のシロップで味付けをしたゼリーのようなデザート

山岡さんも産後1ヶ月、毎日どんぶりでこのスープを飲んだ思い出があるそう。「台湾では産後はお風呂禁止で体をタオルで拭くんだけど、麻油鶏にごま油がたっぷり入ってるから、飲みすぎてごま油が汗になって出てきて、頭を拭くとタオルに色がついたの(笑)。どんぶりがかなり大きくて、全部飲むのがすごく大変だった」(山岡さん)

台湾から仕入れたものを使用
酒、ごま油などのスープのメインになる材料は必ず台湾から仕入れたものを使用しているそう

産後だけではなく、体を温めるために寒い時期にも食べるそうで「麻油鶏にごま油とニンニクであえたそうめんを添えて食べると、簡単なのにめちゃくちゃおいしいんです」と池澤さん。家豆花ではご飯をセットにできるので、通なお客さんはご飯にかけて食べるのだとか。

豆から仕込んでこそ本場の味! 看板メニューの絶品「豆花」

豆花(トッピング全部のせ)¥800(税込)。トッピングは好みのものだけをのせたい場合は¥500〜。冷たいものだけでなく、温かい豆花もあるので寒い季節も食べたいおやつ

「日本に来てから外で豆花(トウファ)を食べると残念に思うことが多くて。自分でつくる方がおいしかった。だからこのお店を出したの」と山岡さんが言うように、お店の名前にもなっている豆花が「家豆花」の看板メニュー。食事系3選の次は、池澤さんもお気に入りだという本格豆花を実食してもらいました。

魯肉飯の器とほぼ同じ、大きなどんぶりで出てくるのが台湾のスタンダードサイズですが、食事とスイーツの間のような優しい甘さなのでペロリといけます。

豆花を食べる池澤さん
日本だと豆花は甘いお豆腐のように思われがちですが「風味や食感が全然違う」と池澤さん。「豆腐はニガリで固めるけど、豆花は石こう粉で固めるから豆腐よりもクセがなくて、口溶け滑らかなんです」

家豆花の豆花は夜に大豆を仕込んで豆乳をつくるところから始まり、トッピングのタピオカや芋圓(ユーユェン)というサツマイモでできたお団子も全部手づくり。日本でなかなか納得がいく本格豆花に出合えず、最近は家でつくるという池澤さんも太鼓判を押す味です。

「今回の発見は、豆乳から自分で仕込むという手間が台湾の豆花のおいしさをつくっていると改めて気がついたこと。私も家でつくるときにいろんな豆乳を試して、これだったらまあいいかなと思えるお豆腐屋さんの豆乳を見つけたんだけど、お店で出す豆花はやっぱり豆乳から仕込むからおいしいんですね」

豆花を平たいおたまのような道具ですくう
大きなボウルに仕込んだ豆花を平たいおたまのような道具ですくいます。とても柔らかいのでこの道具を使わないと、きれいに入れられないそう

「豆花の魅力って、すごくシンプルなのに台湾国内でもお店によって味が全然違うこと。シロップの濃さだったり、トッピングによってお店の個性が出るんです。だから台湾の人は絶対お気に入りの豆花屋さんがあって、聞くと絶対答えてくれるんですよ」

シンプルな黒糖シロップ
「家豆花」のトッピングはハト麦、緑豆、白キクラゲ、芋圓、タピオカ、小豆。お店によってはシロップにしょうがの風味がついているそうですが、ここはシンプルな黒糖シロップ

「多いところだとトッピングが10種類以上ある店もあります。日本ではスイーツのイメージが強いですが、基本的にフルーツはのせないところが多くて、家豆花にあるもの以外には紅白の白玉とか、ゆでた柔らかい落花生などがあります。好きなトッピングを選んで、温かいシロップか冷たいシロップを選ぶ。夏だったら氷も一緒にかけてもらったりして。好きなようにカスタマイズできるのが楽しいですよね」

真ん中の円柱状のお団子が芋圓
真ん中の円柱状のお団子が芋圓。「台湾の人はモチモチ食感のことを“QQ(キューキュー)”って呼ぶんですけど、みんなQQが大好き。タピオカも芋圓もQQなのがおいしいといわれています」

「本場の豆花を日本で味わいたいなら、ぜひ家豆花さんで一度食べてみてほしいです。もし、私のように家で豆花づくりに挑戦したいときは『三代目茂蔵』というお豆腐屋さんの豆乳が本場の味に近くておすすめですよ」

五香粉があれば家で簡単「台湾ごはん」を楽しめる!

最後に池澤さんに教えてもらったのは、自宅でよく使うという台湾のスパイスについて。「家豆花」のようなローカルな味のお店に食べに行くのはもちろん楽しいですが、かけるだけで台湾ごはんの味を再現できるスパイスがあれば、家でも気軽に台湾に行った気分を味わえるはず。

池澤さんが家で使っているスパイスで比較的手に入れやすいのが五香粉(ウーシャンフェン)。中華料理専門のスーパーではもちろん、成城石井などでも扱っているスパイスです。「おすすめの使い方は唐揚げ! ふだん家でつくる唐揚げにササッと五香粉をふりかけると、それだけで台湾風唐揚げになるんです。簡単に台湾の屋台に行ったかのような気分を味わえますよ。あと私はチャイをつくるときにもかけたりします」

台湾マニア池澤さんが教える、日本にいながら本格台湾ごはんを楽しむコツ。あわせて、台湾独自のフードカルチャーについての知識が増えると、ますますお店に行きたくなったり、料理をつくってみたくなります。できることからぜひまねをして、自分らしい方法で楽しんでみてはいかがでしょうか。

PROFILE
池澤春菜

声優・エッセイスト

台湾への愛を詰め込んだ旅グルメガイドブック『最愛台湾ごはん 春菜的台湾好吃案内』(KADOKAWA)が話題。高級評茶員、中級茶藝師の資格をもつお茶マニアでもある。

Instagram:https://www.instagram.com/haluna7/

Twitter:https://twitter.com/haluna7? ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

CREDIT

取材・文/赤木百(Roaster) ヘアメイク/Monmo 撮影/中野理

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