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スチャダラパー・ANIとTVディレクター・岡宗秀吾が選ぶ!わるいやつらのドキュメンタリー10選

  • 2022.3.5
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スチャダラパー・ANI、岡宗秀吾

「本当なのか、妄想なのか。わるいやつは犯人だけではない」(ANI)

ANI

『ブレイキング・バッド』とか『ナルコス』とか、麻薬がらみのクライムドラマをよく観てて。でも、麻薬の話って身近じゃないからよくわからないじゃん。で、わる〜いやつらがいっぱい出てくるドキュメンタリーで知識を深めるようになった、というのが最初。

岡宗秀吾

『ナルコス』はパブロ・エスコバルの実録ドラマだもんね。コロンビアの麻薬密売組織〈メデジン・カルテル〉のドン。

ANI

そういうのを端から順番に観てったら、なんかもうさ。

岡宗

オススメされるんすよね。

ANI

AIに(笑)。

岡宗

僕のリストも麻薬と暴力とアウトローばっかですもん。

ANI

で、AIが薦めてきて観たので面白かったのが『ドラッグ・ビジネス』。秀吾にすぐ連絡した。「アレ観たか」(笑)。

岡宗

「アレ観たよ」(笑)。世界にはなぜこんなに麻薬が蔓延してるのか、産業構造はどうなってるのかを麻薬の種類ごとに細かく教えてくれるという。オックスフォード大出身で元CIAのアマリリス・フォックスという才女が。

ANI

アマリリス!

岡宗

コマネチ!みたいに言いなさんな(笑)。とにかく、アマリリスが関係者の話を聞きまくる。売人、ユーザー、取り締まる側。

ANI

あと、生産者ね。どうやって作られるのか、その歴史と。

岡宗

なんでコカインは作られるのか、なんでコーヒーやバナナじゃなくコカインを育てるのか。あれはみんな観た方がいい。我がこととしか思えなくなるから。

『ドラッグ・ビジネス』

Information

『ドラッグ・ビジネス』

違法だが巨万の富を生み出す麻薬ビジネス。問題の根本と本当の影響を理解するため、元CIA分析官が6種類の違法薬物(コカイン・合成麻薬・ヘロイン・覚醒剤・大麻・オピオイド)の経済的な側面に鋭くメスを入れ1話1種類のドラッグについて掘り下げる。ANIさんと岡宗さんいわく「全話必見です!」。Netflix独占配信中。

ANI

それに関連したので挙げると『Dope/ドープ』。麻薬戦争の現状に迫る系シリーズ。密売の話を都市別に紹介するやつ。

岡宗

これ、面白いのは両サイドにカメラがついてることで。警察側と売人側と両方。取材側が連絡取り合ったらバレちゃうっていう、ギリッギリの取材をしてるんです。

ANI

これで鎮痛剤がすごいことになってるのを知った。フェンタニル。マイケル・ジャクソンもプリンスもこれで死んだもんね。

『Dope:ドープ』

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『Dope/ドープ』

麻薬の売人と常用者、そして警察当局。法を犯す側と取り締まる側双方の視点から麻薬戦争の現状に迫る。ANIさんと岡宗さんいわく「『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でディカプリオが使っていたのが合成オピオイド。カウンタックのシーンのところで」。気になる人はぜひ映画も。Netflixでシーズン1〜3独占配信中。

岡宗

で、ドラッグの種類をいろいろ押さえたら、次に学ぶべきは麻薬王の人生ですよ(笑)。

ANI

『世界の麻薬王:その光と闇』。エスコバル、ロドリゲス兄弟、フランク・ルーカス。

岡宗

僕が好きなんは、メキシコを仕切るエル・チャポ。彼はいま、逮捕されて刑務所にいますけど。

ANI

ショーン・ペン、会ってインタビューしたんだよね。

岡宗

それがキッカケでエル・チャポの居どころが割れ、逮捕されちゃった。しかし、Netflixも命懸けよ。ホンモノを相手に、トラブルの渦中に入っていくんだもん。

ANI

生々しい。それがドキュメンタリーの醍醐味だけど。

『世界の麻薬王:その光と闇』

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『世界の麻薬王:その光と闇』

登場するのは、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバル、カリ・カルテルのロドリゲス兄弟、ニューヨークの麻薬王フランク・ルーカス、メキシコの麻薬王エル・チャポ、麻薬女王ジェミーカー・トンプソン、ジャマイカの麻薬王子クリストファー・コーク、ヨーロッパの麻薬王クラース・ブラインスマなど。Netflix独占配信中。

岡宗

わるいやつらの化けの皮をはがす系も面白いです。『ジェフリー・エプスタイン:権力と背徳の億万長者』。これはエグい。

ANI

エプスタイン事件ね。この人結局死んだけど、消された説。

岡宗

自殺といわれてますが、変死です。エプスタインはものすごく頭のいい男。アメリカの政財界・芸能界のセレブが仲間にいて。で、この人、エプスタイン島って島を持ってて。
そこで、セレブを集め、少女売春斡旋と性虐待を繰り返していたと。被害に遭った女性たちが告発し、エプスタインは逮捕、獄中で謎の死を遂げたと。

ANI

コイツが捕まると都合の悪いセレブがわんさかいるでしょ。

岡宗

エプスタイン島の搭乗記録には名だたるセレブが並んでて。国の中枢に関わってる人もいて。

ANI

わるいやつらだなあ。

岡宗

とはいえ、これを報道できるアメリカね。日本では無理。本当はこういうのをもっと作らなくちゃいかんのです、我々も。でも「やらない」し「できない」。それはなぜなのか。そこをもっと考えなきゃいけないんですよ。

Information

『ジェフリー・エプスタイン:権力と背徳の億万長者』

2019年、アメリカの大富豪ジェフリー・エプスタインは少女たちへの性的虐待や売春斡旋の容疑で逮捕されたが、その直後、謎の死を遂げた。自殺と発表されたが国際売春組織を運営していた噂もあり、さまざまな憶測が流れた。エプスタインとはどんな人物で、どうやって富を築き、少女たちに何をしたのか。Netflix独占配信中。

ANI

秀吾、ええこと言う。セクハラ告発といえばこれも。『サバイビング・R.ケリー』。エプスタイン並みにゲスいやつ。

岡宗

僕、これ観てへんわ。

ANI

R・ケリーって結構人気のR&B歌手で。色男だからモテるんだけど未成年相手にひどいことをしてると告発されて。もう表には出られない。有罪になったし。

『サバイビング・R.ケリー』
©2021 A&E Television Networks. All Rights Reserved.

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『サバイビング・R.ケリー』

世界的に人気のR&Bシンガー、R・ケリー。彼の長きにわたる性的虐待や未成年への淫行疑惑は、10年以上にわたって捜査を行っても法の裁きを受けることはなかった。しかし、被害に遭った女性たちの勇気ある証言により、遂に被害の全貌が白日の下にさらされた。2019年エミー賞ノミネートの衝撃作。Huluで配信中。

岡宗

あと、わるいやつらといえば、やっぱ人殺しでしょう。

ANI

『コンフェッション・キラー:疑惑の自供』は連続殺人鬼の話だけど、これ、ひどいの。人殺しの犯人はもちろんだけどさ、それに輪をかけて警察がひどい。

岡宗

これも観てへんなあ。

ANI

ヘンリー・リー・ルーカスっていう連続殺人犯が逮捕されるんだけど、あれもこれもオレが殺したと300人以上の殺人を自白するんだけど、よくよく調べるとつじつまが合わない。結局、事件を解決する能力のない警察がヘンリーがやったとして片づけて、ヘンリーも注目されるから調子に乗って自供したのが内情で。

この人、結構、有名な殺人鬼に祭り上げられて『羊たちの沈黙』のレクター博士のモデルにもなって。買いかぶりすぎだったっていう。

Information

『コンフェッション・キラー:疑惑の自供』

1980年代、300人以上もの殺人を犯したと自供した連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカス。ハンニバル・レクター博士のモデルにもなった人物だ。しかし、彼の自供のほとんどが嘘で警察によるでっち上げであることがわかる。日本のテレビクルーがヘンリーのもとを訪れ森本毅郎がインタビューする様子も。Netflix独占配信中。

スチャダラアニ、岡宗秀吾
(右)スチャダラパー・ANI、(左)TVディレクター・岡宗秀吾。

「本当はこういうのを作らなくちゃね、我々も」(岡宗秀吾)

岡宗

名誉欲、承認欲求がどんどん肥大化したんやろね。猟奇殺人犯のスターになるんやと。そういうのでいえば、『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』。

ANI

あれって、結局なに?

岡宗

ピザ配達人が配達先で首に時限爆弾が仕掛けられ、動いたら爆発させられる、どうしようと。警察が時限爆弾を解除しようとするも爆発してしまう。計画したやつらを調べていくんだけど、関係者がどんどん消えていくという。

Information

『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』

2003年、アメリカ・ペンシルヴェニア州で銀行強盗が発生した。「GUESS」と書かれたTシャツを着た犯人の首には時限爆弾が埋め込まれた首輪が。取り囲む警官に爆弾を外してくれと犯人は哀願するが、爆弾は爆発してしまう。一体誰の仕業で一体なんのために。首謀者とみられる人物は女性だった。Netflix独占配信中。

ANI

『事件現場から:セシルホテル失踪事件』はどうなの?秀吾の得意なトワイライトゾーン的なカンジの話でしょ?

岡宗

これがさ、ロスのセシルホテルに女子大生が一人でやってきて宿泊するんだけど、突然失踪するんですよ。外に出た形跡はなく、ホテルの中でいなくなる。隅々まで捜したけどいない。死体もない。すぐに公開捜査になって。手がかりは防犯ビデオに映る姿のみ。一体どこへ消えたのか。ネット上がものすごい騒ぎになって。

数週間後、彼女は屋上の貯水タンクの中で全裸死体となって見つかる。謎だらけ。ま、なぜ彼女がそうなったかは観ればわかるんだけど、それとは別に、まったくの無実の人が犯人とされてしまったり、陰謀論が発生したり、ネットからどうやって噂が生まれるかという検証にもなってるのが面白くて。

ANI

へーえ!

岡宗

だからこれ、「ネットのわるいやつら」の話なんです、実は。

Information

『事件現場から:セシルホテル失踪事件』

殺人鬼の隠れ家や数多くの変死事件の舞台になるなど、ロサンゼルスのダウンタウンで最も不吉なホテルとして悪名高い〈セシルホテル〉。旅行でここを訪れ宿泊中だった中国系カナダ人の大学生エリサ・ラムがある日突然姿を消す。エレベーターの防犯カメラに最後の姿が映っていたがその様子は奇妙だった。Netflix独占配信中。

ANI

不思議といえば、NHKの『未解決事件』シリーズでやった『NHKスペシャル未解決事件File07 警察庁長官狙撃事件』。ちょっとヘンリー・リー・ルーカスっぽいというか。男は「警察庁長官を撃った」と言うけど、よくわからないじゃない。本当なのか、妄想なのか。

警察はオウム真理教の犯行に違いないって思い込んじゃってたし、それでずっと動いてたし、それに予算も使ってるからそこで全然違う犯人が出てくると警察のメンツが、的なさ。

岡宗

おかしな話だよね。

ANI

メンツで未解決になるっておかしな話ですよ。しかし、この犯人にちょっと憧れるっていうかさ。こんなに頭が良ければこんなことができるんだ!って(笑)。

『NHKスペシャル 未解決事件File07 警察庁長官狙撃事件』

Information

『NHKスペシャル 未解決事件File07 警察庁長官狙撃事件』

1995年、オウム真理教による地下鉄サリン事件の10日後、國松孝次警察庁長官(当時)が狙撃され重傷を負った。犯人は特定されず15年後に時効成立。警視庁は「オウム真理教の信者によるテロ」と見解を述べたが、それとはまったく別の男が真犯人として浮上した。NHKオンデマンドで配信中。

岡宗

アレ観た?『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』。これもある意味わるい。

ANI

観た。自分で選んでいるようで選ばされているっていう。

岡宗

フェイスブック、ツイッター、Google、いわゆる巨大ITで働いていた人たちが、アルゴリズムでみんなをスマホ中毒にさせてました、と告白をする。フェイクニュースを含めた情報も、個人の嗜好に合わせて出すことで、言論の二分化、分断化に拍車をかけたと。

最悪なのは、そこに思想も正義も何もなく、ただただ金儲けのため、どれだけ長い時間スマホに釘づけにさせるかに夢中になってたと。そうした面のあるNetflixがあえてこのドキュメンタリーをやる、そこにもちょっと感動して。

ANI

結局、スマホも麻薬と同じだよ。オレらは大人になってから接してるけど、これが物心ついたときからある子たち、どんな大人になんのかなーって。

岡宗

やっぱりスマホがないと生きていけへんでしょうね。

『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』

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『監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影』

毎日ネットにつながることでスケジュールから好きな音楽まであらゆる情報がAIの監視下に。私たちは「選んでいる」のか「選ばされている」のか。ドキュメンタリーとドラマを織り交ぜ、自身が開発したテクノロジーに警鐘を鳴らす専門家らとともにSNSが人間に及ぼす影響がどれだけ危険かを検証。Netflix独占配信中。

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ANI(スチャダラパー)

アニ/1967年生まれ。ラップグループ・スチャダラパーでフンイキを担当。今年でデビュー31年。11年分の「余談」をまとめた640ページの単行本『大余談』が21年11月19日に発売。

twitter:@SDP_ani

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岡宗秀吾(TVディレクター)

おかむね・しゅうご/1973年生まれ。代表作に『BAZOOKA!!! 高校生ラップ選手権』『とにかく金がないTVwithYOU』『全日本コール選手権』など。著書『煩悩ウォーク』も。

twitter:@okamune

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