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最終回直前考察『愛しい嘘』タイトルに込められた2つの思い。波乱の林遣都劇場開幕の予感!

  • 2022.3.4
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いよいよ今夜最終回の『愛しい嘘~優しい闇~』。第7話では衝撃の事実がつぎつぎと明かされ、中でもある大きなトリックにSNSは驚きの声に溢れました。複雑な謎解きのポイントを整理し、タイトルに込められた意味を考察、最終回に備えます(ネタバレを含みます)。

最終回前話の『愛しい嘘~優しい闇~』第7話では、たまっていた謎が次々と解明され、さまざまな違和感がきれいに拭い取られた。今回は明らかになった真実を整理し、最終回に残された謎を考察していきたい。

「雨宮=中野」をあえて予想させる秀逸な仕掛け

耳の形の違いから、雨宮(林遣都)の正体が、家が火事になった中野幸だったことを見破った望緒(波瑠)。覚悟を決めた中野は、雨宮になりすました理由や経緯を語った。

15年前、稜(溝端淳平)たちが、自分たちの花火遊びが原因だったと思い込んでいた中野家の火事は、中野本人の放火だったことが判明する。両親からの断続的なDVに追い詰められていた中野は、自宅に火を放ち両親を殺したあと、自らの命も絶つ決意をしていた。だが、火事の現場に偶然通りかかった雨宮が、中野に優しい言葉をかける。そこに生きる希望を見出した中野は、自殺をしなかった。しかし雨宮は、放火の証拠動画を携帯で撮って保存しており、それをタネに中野をゆすり始めた。爽やかな優等生に見えていた雨宮の裏の顔は、暴力的で、女癖が悪く、金遣いの荒い悪党だったのだ。ゆすりは、社会人になっても続いた。

「雨宮=中野」説自体は、多くの視聴者が予想してきた説だ(利き手が違うとか、わかりやすい伏線が多かったし)。だが、それらの伏線は、「悪人・中野が善人・雨宮になりすましている」という図式にミスリードするために張られていたのだ。実際は、中野が善人(と単純に言い切れはしないが)で、雨宮が悪人だったのだ。この秀逸な仕掛けが判明したことにより、ほとんどの違和感がキレイに払拭された。

中野は雨宮の悪行を抑えるために、起業して雨宮を社長に据え、実質的な経営は裏で中野が取り仕切った。雨宮が新進気鋭のIT社長として世間に通っていたのはこのためだった。僕はこの連載で「中野がやり手社長の雨宮になりすましているのだとしたら、会社の経営はできてるの?」といった疑問を提示しているのだが、答えは「そもそも優秀な中野が起業した」だったのだ。まんまと引っかかった! 気持ちいいくらいに整合性が取れている。

過去の事件に隠された真相

社長になった雨宮は交際相手に暴力を振るい、自殺に追い込んでしまう。続く悪行に嫌気がさした中野は、亡くなった女性の兄である小堀(木村了)に、雨宮を監禁し自身が整形して雨宮になりすますプランを持ちかける。恨む小堀はプランに乗り、雨宮への訴えを取り下げた。

全て中野の計画通りにことが運んだが、ひとつだけ問題が残っていた。それは、中野の放火動画が携帯に残っていること。雨宮の言動から「古い友人が携帯のありかを知っている」とアタリを付けていた中野は、雨宮として優美(黒川智花)と再会する。これをきっかけに、夫からのDVに苦しんでいた優美は、中野に依存するようになる。優美の夫・正(徳重聡)が優美の不倫相手が雨宮だと確信していたのは、度重なる密会からだった。よくできている。

ここから第1話の時制につながる。優美の発言から「放火動画が保存された携帯はタイムカプセルとして校庭に埋められている」と推測した中野は、同窓会を開いてタイムカプセルを掘り起こすことを提案し、賛同を得る。しかし、掘り当てる前に、のっぴきならない急用の電話がかかってきて、その場を後にしなくてはならなくなった。

中野が帰ったことでタイムカプセル掘り出し作業は延期になりかけたが、玲子(本仮屋ユイカ)が恥ずかしい思い出(担任へ向けたラブレター)を回収するべく掘り続けたことで、中野がいない間にタイムカプセルは掘り出されてしまった。これを「雨宮くん(と奈々江は信じている)に近づきたい」奈々江(新川優愛)が、「雨宮に届ける」という名目で携帯を持ち帰る。そして、奈々江は携帯のデータをコピーした。

困った中野は、自分に依存する優美をけしかけてデータを取り返そうとする。しかし、奈々江からDVを受けていることで見下された優美は、橋の上から奈々江を突き落として殺してしまう。これが第1話で起きた事件の真相だ。

事件を刑事部長の夫・正に揉み消してもらった優美は、中野(もちろん、雨宮くんだと信じている)に放火動画のデータを渡す。しかし、中野が自分との関係を断るつつもりであることを知り、「奈々江を偲ぶ会」で中野の毒殺を試みる。優美の様子に違和感を覚えた中野が、渡されたワイン(毒が入っていた)を優美のワインのとすり替え、そのワインを飲んだ優美が死んでしまう。こちらが3話の真相。

2つの愛しい嘘

といった経緯を、雨宮の顔をした中野は、望緒にたんたんと語り聞かせた7話。だが、望緒の後輩漫画家のりえ(松村沙友理)を車道に突き飛ばした事件のことになると、感情をあらわにし始める。これまでの嘘や犯行は保身からくるものだったが、この事件は違った。嫌がらせを続けるりえから望緒を守るために突き飛ばしたというのだ。

「君のことは色々利用されてもらったからお礼のプレゼントだよ」

おそらくこれは建前であり嘘だ。間違った行いではあるが、本気で望緒のためにと思ってやったことだろう。過去を消すため完璧に動いてきた中野が綻び始めた。小堀と「真実を知るものは葬る」と約束していたにもかかわらず、望緒を殺すことができない。あえて、稜たちが駆けつけた瞬間を見計らってナイフを取り出し、殺しが失敗したように見せかけて逃走した。

望緒にまつわる嘘が、タイトル回収の「愛しい嘘」だ。本気で望緒を思っていた中野は、望緒に嫌われるために悪になりきり、ナイフを取り出した。おそらく同窓会で望緒を受付に指名したのも好きだったから。過去の事件の消去と望緒への思い。中野の行動に一貫性がないように見えた部分があったのは、動機が二つあったからなのだ。

望緒たちは中野が雨宮になりすましていると証明するため、雨宮の母・サユリ(高橋ひとみ)にDNA鑑定の依頼をする。しかし、サユリはこれを拒否した。この真相にも「愛しい嘘」が隠されていた。

(本物の)雨宮からの暴力に悩んでいたサユリは、認知症を装って施設に入っていた。しかし、そんな自分を大切に介護してくれるようになった息子(中野)に違和感を覚え、偽物だと見抜く。それでもサユリは、中野の本物の優しさに触れるにつれて息子以上に中野を愛するようになっていく。肉親からDVを受けていた中野も、親の愛に飢えていたのかもしれない。

サユリが望緒に「逃げなさい」と言ったのは、何かを隠そうとしている偽の息子を守るため。中野が急用の電話を優先し、大事なタイムカプセルを放っぽり出して駆けつけた先は、発作に苦しむサユリの元だった。認知症を偽る母と偽の息子、偽り合う2人だが、関係は本物になっていた。そんな愛する偽の息子との関係を続けるために、サユリはDNA鑑定を拒否したのだ。

残された謎を考察

多くの真実が判明した第7話。ラストでは望緒が中野の子を妊娠していることが発覚。そして監禁されていた本物の雨宮(林遣都)が、不意をついて小堀を襲い、抜け出してしまう。最終回を前に残された謎を整理したい。

・クロの正体
望緒にファンレターを唯一、送ってくるクロ。正体はおそらく中野だ。知らず知らずに中野に支えられていたと知り、望緒の中野への思いが強まるという展開だろう。

・正の行方
妻の不倫相手、雨宮(実は中野)を殺そうと企んでいる正は、指名手配犯として逃走中だ。ここから改心する可能性は極めて低い。なおかつ、最終回直前、劇的な登場で雨宮(本物)も加わったのだ、正がもう一波乱起こすと予想する。
例えば、本物の雨宮を間違えて殺してしまう……なんて展開があれば、ハッピーとは言えないが収まりは良さそうだ。

・誰がタイムカプセルに手紙を入れたのか?
タイムカプセルには「みんなのこと忘れないよ 中野幸」という手紙が入っていた。しかし、中野は掘り出す時も埋める時も立ち会っていない。予告動画では雨宮が手紙を入れたようにも見えたが、だとしたら動機はなんだろう。
「みんなのこと忘れないよ 中野幸」という言葉を見ると復讐を示唆しているように見えるが、もしかしたら別の意味が隠されているのかもしれない。

・なぜ望緒は中野の顔を覚えていないのか?
望緒が記憶を辿り、放課後に美術の課題のために中野をスケッチしていたこともわかっている。2人きりの思い出があるのになぜ顔が思い出せないのか? これがまるでわからない。また、覚えていないはずの望緒は「ナカノミユキ」という男性とも女性とも取れる名前を見ただけで「中野幸くん」と男だと断定していた。これも関係してきそうだが、一体どういうことなのだろうか。

雨宮、中野、稜、玲子、奈々江、優美の秘密は明らかになったが、最後に望緒のとんでもない秘密が明かされる……なんてこともあり得るかもしれない。

最終回は、雨宮(林遣都)VS中野(林遣都)という展開が期待できそう。だが、2人とも犯罪者だ。どちらかがきれいに勝ち逃げする可能性は低いだろう。妊娠した望緒はどうするのだろうか。最後まで全く予想できない。

■さわだのプロフィール
企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。

■まつもとりえこのプロフィール
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。

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