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代謝が悪い=太るは間違い?

  • 2022.2.22
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走る理由はいろいろとある。走ることで気分がよくなるからという人もいれば、競争心を満たすためという人もいる。けれども、体重を管理するために走る人にとっては、ちょっと悪いニュースがある。ランニングは多少のカロリーを消費するかもしれないものの、少なくとも長期的には代謝を「促進する」ものではないという。詳しく見ていこう。

集団として見ると、人々が毎日消費するカロリーには差があると科学が証明している。ただ、このばらつきは、ある日はカロリーを大量に消費、そして翌日はわずかしかカロリー消費しないことによるものなのか、それとも特定のグループの人たちの代謝が常に速いあるいは遅いことによるものなのかは、いまだ解明されていない。

学術雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された最近の研究によって、代謝は変化を伴う特性か否かという問いに答えがでた。個人の代謝は、活動レベルや体組成に関わらず、人によって20%以上のばらつきがあると判明。(つまり、痩せ気味であるからといって代謝が速いというわけではない)ただ、個人の代謝の速度は時間と共に変化することはないそう。

「総エネルギー消費量とは、毎日消費する総カロリーで、身長などのように繰り返し測定でき、安定しているものです」と話すのは、デューク大学の進化人類学の准教授で、人間の代謝に関する本『Burn』の著者であり、本研究の主な研究者の1人であるハーマン・ポンツァー医学博士。

この結論を得るために、ポンツァー医学博士と共同研究者たちは、二重標識水法と呼ばれる技術を使用し代謝を測定したデータを抽出した。研究では、被験者に水素と酸素の同位体を含む水をコップ1杯飲んでもらい、体内の様子を追跡。尿、汗、呼吸などへ、どれだけ速く各同位体が失われたかで、その間に消費されたカロリー量がわかる。つまり「総エネルギー消費量」、すなわち代謝である。

ポンツァー医学博士の研究チームは、2週間から8年以上にわたる期間において、2つの時点で総エネルギー消費量を測定した300人の成人のデータを調査。細胞が多ければ多いほど、より多くのカロリーを消費し、細胞の種類(例:脂肪や筋肉)によってカロリーの消費速度が異なるため、体の大きさや体組成を調整した後、その属性にいる人として消費カロリーが予想よりも多いか少ないかを調べ、代謝が「速い」か「遅い」かを判断した。

時間の経過と共に日々のエネルギー消費量を調査した結果、最終的にその数字はあまり変化しないことがわかった。

「代謝の速い人は、今日の体の大きさでも代謝が速く、数カ月後あるいは数年後に再度計測しても、再び代謝は速いでしょう。また逆もしかりで、今日代謝の遅い人は、数カ月後、数年後でも代謝は遅いでしょう」とポンツァー医学博士。

代謝が遅いと太るの?

この結論は研究者たちを次なる疑問へと導いた。代謝の速い人は太らないということなのだろうか? また逆に代謝が遅ければ、太ってしまう運命?

「世界中のすべてのエクササイズプログラムの前提になりますが、それは間違いです」と医学博士。

研究の結果、代謝が遅いから太りやすい、代謝が速いから太りにくいということはないと判明。医学博士いわく、これは人間の脳が長期的に摂取カロリーと消費カロリーを一致させる能力に優れているためだそう。

人間は、99%以上の精度でエネルギー需要を満たしている。問題は、私たちの多くが生活する食環境によって、1%のミスマッチは一貫して同じ方向、つまり過剰消費にあるということだという。

ランニングは「代謝をアップさせる」魔法ではない

ところで、見たところ明らかな補足事項として、この研究に参加した人々はとりわけランナーだったわけではない。けれども、ポンツァー医学博士いわく、大抵のランナーは、通常の活動をしている人と比べても、時の経過と共に消費するエネルギー量にそれほど差はないとのこと。

「運動というと代謝を促進させるものだと思っていますが、それは正しい考えではありません」とポンツァー医学博士。

運動は複雑で、体のあらゆる細胞の調整に影響を与え、同様に空腹感や満腹感、免疫機能、さらには行動にも影響を及ぼす。医学博士いわく、ランナーは消費するエネルギーに日々変動はあるものの、人間の体は運動していないときに消費エネルギーを調整し、1日の総カロリー消費量をかなり狭い範囲に抑えているという。エリートアスリートたちがどれほど真剣に休息を取っているかを見れば、バランスをとるこの行動が実際に行われていることが分かる。

「データを見て、健康のために運動がどれほど重要かを理解しない研究者はいないでしょう。ただ、なぜ運動が健康に重要なのかについては、学術的な議論があります。体重をコントロールする効果があるという考えをどうしても捨てたくない人たちもいますが、私はそのようなデータを見ていません。そういった余地もあるかもしれませんが、大きな要素ではないでしょう」

結局のところ、体重を管理する最大の手段は、食事だと医学博士は指摘する。もちろん、簡単ではない。「私たちが築いてきた食環境は、健康的な体重維持を難しくしています」

幸いなことに、身体活動はたしかに消費の調整に影響を与えているよう。運動している人は、運動していない人に比べて、大まかに言えば食べ過ぎの可能性が低い。体重を管理するためにランニングするなら、トレーナーを頼ってみてもいいかも。

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Translation: Asami Akiyama

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