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冬の秘湯は最高のパワースポット(21)山形県・肘折温泉で豪雪体験

  • 2022.2.18
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青森県の酸ヶ湯や新潟県松之山などとともに日本有数の豪雪地帯に数えられる山形県の名湯「肘折(ひじおり)温泉」。霊峰月山を望む山あいにありますが、交通アクセスは悪くないのです。昔ながらのノンビリとした温泉街とそのお湯は、冬のさなかでもたいへん風情がありました。

雪を求めて月山のふもとへ

東京駅から3時間半で山形新幹線の終点・新庄駅にやってきました。ここは山形県北東部の雪深い土地。新庄駅から目的地の「肘折温泉行」へはバスで向かいます。実は今回で2回目。最初の訪問は10年以上前の暑い暑い夏だったので、今回は肘折の豪雪を体験したかったのです。

肘折温泉は新庄市に隣接する大蔵村の山あいにあります。山林の面積は村の85%も占めますが、肘折温泉や棚田など美しい景観と温かい人情に出会える桃源郷のような場所でした。

新庄駅前からは大蔵村村営のバスが走っています。新幹線で午前11時前に新庄駅に到着し、11時25分発のバスに乗り込みました。ここから大蔵村の中心部を通り抜け、さらに山あいの肘折温泉までは1時間ほど。ちなみに料金は片道600円ですが、往復で買えば1,100円になります。

月山の東のふもとに位置する大蔵村は「日本で最も美しい村連合」に加盟する村のひとつ。「日本で最も美しい村連合」とは、その合言葉をもとに地域造りや広報活動などをする特定非営利活動法人で、全国で60あまりの村や地域が加盟しているそうです。景観や環境、文化を守り、資源を活かす地域造りをしている人口1万人以下の村や地域の連合だといいます。

肘折温泉 温泉街の冬

大蔵村に入り、さらに人家のない山あいに入っていくと、道路の脇の雪の壁もしだいに高くなっていきます。そして峠のループ橋をぐるっと回る時に、車の窓から肘折の集落が見えました。集落は盆地のような谷底にあるのです。

実は、この峠は太古のカルデラの外輪山らしいのです。そして温泉があるのが、そのカルデラの窪地。その窪地は1万2000年前の噴火活動によって形成された直径2kmの「肘折カルデラ」といい、その東の端に肘折温泉は位置しています。

峠を下ってようやく肘折に到着。上の写真は集落を流れる銅山川です。雪に埋もれていますが、それほどの量ではありません。多い時には4mもの積雪があるといいますから、まだまだ少ない部類でしょう。

しかも温泉街に雪は積もっていないのです。ちょうど屋根の雪下ろしをやっているところに出会いました。観光客の支障にならないように、こうやって時間があれば屋根の雪を下ろし、道路に積もる雪もすぐに排水溝に流しているので、温泉街の周囲は豪雪ですが、街なかは歩きやすいのです。

肘折温泉は銅山川に沿うように20軒ほどの温泉宿と商店などで形成されています。歴史は古く、平安時代にあたる約1200年前の大同2年(807年)の開湯といいます。「肘折」の名の通り、老僧が肘を折って苦しんでいたところ、お湯に浸かったら傷が癒えたと伝えられています。

昔と変わらない肘折温泉の街並み

探してみると、上の写真、以前訪れた時に撮影した肘折温泉の景色が残っていました。集落の姿は変わっていないようです。

夏場には毎朝5時半から肘折温泉街にお店が並んでいます。地元のお母さんやお婆ちゃんたちが、採れたての野菜や山菜、自家製の漬物などを持参して朝市が開かれます。

集落は太古の火口ですから、各所で温泉が湧き出すのです。温泉街を流れる銅山川の上流には「源泉公園」として共同源泉があり、以前訪れた時にはお湯が勢いよく湧き出す様子も見ることができました。

またその名の通り「黄金温泉カルデラ温泉館」と名付けられた日帰り入浴施設も集落から1kmほどの山あいにあります。こちらは全国的にも珍しい炭酸泉で、2022年2月現在は改修中で休館とのこと。2022年4月から再開するそうです。

肘折温泉自体の泉質は基本、ナトリウム塩化物炭酸水素塩温泉。切り傷ややけど、リウマチ、骨折などの外傷や、胃腸病、皮膚病に効能があるといい、古くから近郷の人々が農作業の疲れを癒やしたり、骨折や傷を癒やす湯治場として賑わったといいます。

今回訪れた温泉街では観光客の姿が少ないようでした。冬の真っただ中で、コロナ禍も大きく影響しているようですね。ちょっと淋しい光景でした。

そうそう。忘れてならないのは、肘折温泉では2022年シーズンも「ドカ雪・大雪割宿泊プラン」のキャンペーンを3月6日(日)までやっているとのこと。2018年2月に積雪445cmを記録してこのキャンペーンが話題になったのですが、宿泊前日15時時点の積雪量が446cm以上だと1泊宿泊無料で、30cmでも宿泊料金が2,000円割引なんだそうです。詳しくは大蔵村観光協会にお尋ねください。

温泉街散策 昼食をいただきます

昼食をいただくために温泉街から川を渡って蕎麦屋さんに伺いました。「寿屋」といいます。2020年夏の集中豪雨で銅山川が氾濫し、お店の前の橋が流されたそうで、お店は目の前に見えたのですが、ぐるっと遠回りして訪ねました。そのかいあって、いいお店に出会いました。

体を温めようと温かい天ぷらそばをお願いしました。なかなかの美味でしたよ。それと店内に置かれた薪ストーブの暖かさにホッとします。

さて、遅めの昼食を終えて宿に向かいます。実は寿屋さんに向かう時に、一度宿の前を通っていました。川沿いに建つ「優心の宿 観月」。橋の向こう正面が宿です。

この宿に決めた理由は、5階の屋上に展望露天風呂があるからなのです。展望風呂があるのは肘折でもこの宿だけだといい、開放感あふれる展望風呂から雪の温泉街を眺めてみたかったのです。

共同浴場と展望露天風呂 名湯に癒やされて

宿は大きすぎず、ちょうどいい頃合い。玄関を入ると、和風テイストのロビーラウンジがあります。とはいえ、客室に通されると広々としているのに驚かされました。それでは展望露天風呂に一直線。

と思いきや、チェックインの際に宿のスタッフさんから「上の湯(かみのゆ)」共同浴場への入浴を勧められました。大人は300円ですが、無料の入浴券をいただきました。ということで徒歩3分ほどの共同浴場へ。

意外なことに、共同浴場には誰もいません。以前入浴したときは地元の人たちや観光客など、大勢の入浴客でごった返していたのですが、このときはなんと貸し切り状態でした。

肘折温泉のお湯は少し緑っぽくもあり灰色っぽくもあります。いかにも効能豊かな色合いなのですね。

浴槽には地蔵尊がいらっしゃいます。1200年前に肘折温泉を発見したという老僧は地蔵尊だったということなのです。このお地蔵様の台座から源泉がかけ流されています。この共同浴場の源泉は上の湯第1号源泉(薬師の湯)といい、温度は50℃、pH6.4でここだけの源泉だそうで、宿の温泉とも微妙に違うそうです。

肘折温泉は、古くは霊峰月山に詣でるために最後に身体を清める場所だったそうです。多いときでは1日に2,000~3,000人がここから月山に登っていったといい、今も登山ルートは残されています。とはいえ、4〜5時間かかる難ルートなので現在では登山者も少なくなってきたようです。

さて続いて上の写真は宿の温泉。内湯も5階にあります。こちらも貸し切り状態でのんびり。ちなみに肘折温泉の旅館のほとんどが共同源泉で同じ泉質。温度も40~41℃で適温でした。

そして内湯からつながっている展望露天風呂へ。上の写真は露天風呂から見た肘折の雪景色です。目の前には銅山川が流れ、その向こうにもう集落はほとんどありません。小雪がちらついているのでお風呂から出るととにかく寒いのですが、開放感はありますねえ。

山形のふるさとの味

そしてお待ちかねの夕食。まずは鯉の洗い。鯉料理は新庄や大蔵村のある最上地方の郷土料理だそうです。あっさりとした味わい。泥臭くありません。そして個人的に大好きな山菜料理。ぜんまい煮になめこの和え物に、アケビの和え物。こういう料理がありがたいです。

上の写真は「鮎から揚げサラダ」。料理長ご自慢の一品だそうです。生野菜のサラダの上に鮎のから揚げがのっています。しばしば鮎は塩焼きで供されますが、サラダ仕立てになっていて、これは新鮮でした。

そして上の写真、山形県ならではの芋煮。キノコがたくさん入っているのがこちらの宿の特徴だそうで、具だくさんの芋煮のおいしかったこと。満腹になりました。

就寝前にふたたび内湯と露天風呂で温まりました。雪は音もなく降りしきり、静かに夜が更けてゆきます。しみじみと温もりが伝わる人里離れた山あいの温泉。これが秘湯の醍醐味です。

冬も夏も味わいのある小さな名湯でした。

肘折温泉 優心の宿 観月

住所:山形県最上郡大蔵村大字南山516

電話:0233-76-2777

 

「ドカ雪・大雪割宿泊プラン」については大蔵村観光協会

電話:0233-76-2211

[All Photos by Masato Abe]

 

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