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私たちの首を絞める「自己肯定感」という呪い。

  • 2022.2.17
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近年、何かと「自己肯定感」が話題だ。あなたがうまくいかないのは自己肯定感が低いせい。幸せになるには、自己肯定感を高めよう。そんなうたい文句があふれている。あなたも、「自己肯定感を高めなければ」と思っているうちの一人ではないだろうか。

しかし、その「自己肯定感」こそが、いま私たちの首を絞めているのではないか――。「自己肯定感至上主義」の風潮に一石を投じるのが、スポーツドクターとしてアスリートたちのメンタルをサポートしている辻秀一さんだ。辻さんの著書『自己肯定感ハラスメント』(フォレスト出版)で、私たちを苦しめる「自己肯定感」の正体が書かれている。

「自己肯定感を上げて、自信をつけて、頑張れ」。よく聞きがちなこういったフレーズに、人知れず苦しめられているアスリートたちを、辻さんはよく見てきたという。自己肯定感を高める方法として、まず求められるのが「成功体験」を積むこと。アスリートたちは成功や結果ばかりを追い求め、かえって苦しんでいるという。

この悪循環はスポーツの世界に限らない。仕事をどれだけ頑張っても、自分より結果を出している人がいる。SNSでたくさんフォロワーがいても、もっとフォロワーの多い人はいくらでもいる。「成功体験を積め」と言うが、自己肯定ができるような成功を成し遂げられる人のほうがまれではないだろうか。

さらに、何でも無理やりポジティブにとらえようとするのも、心の負担になる。ネガティブな自分に蓋をして、「自分最高!」というウソをついている節はないだろうか。

そもそも、高い・低いで語られる「自己肯定感」そのものが、優劣の概念をはらんでいる。その自己肯定感がすばらしいものと思われているいまの風潮は、私たちを決して幸せにせず、むしろ呪いとなっているのではないか。そう辻さんは主張する。

自己肯定感ではなく「自己存在感」

自己肯定感にかわって、辻さんは「自己存在感」を提唱している。外の世界の評価や基準と関係なく、自分自身の内側に目を向けて、幸せを感じるということだ。自己肯定感と似て非なる自己存在感。どのようにすれば身につけることができ、私たちはどうやって幸せになれるのだろうか。スポーツドクターとして、脳科学や心理学の視点から辻さんが解説してくれる。

「自己肯定感を高めよう!」という社会に、実は少し疲れを感じているかもしれない......と思ったあなた。本書を手がかりに、本当の幸せを見つけてほしい。

【目次】
第1章 「自己肯定感」が私たちを苦しめている
第2章 なぜ「自己肯定感」にすがるのか?
第3章 「自己存在感」が人を輝かせる
第4章 どうやって「自己存在感」を持つのか?
第5章 生育歴が大きく影響する
終章 「あとがき」に代えて、本書のまとめ

■辻秀一(つじ・しゅういち)さんプロフィール
スポーツドクター。産業医。株式会社エミネクロス代表取締役。
1961年東京都生まれ。北海道大学医学部卒業。慶應義塾大学スポーツ医学研究センターでスポーツ医学を学ぶ。1999年、QOL向上のための活動実践の場として、株式会社エミネクロスを設立。応用スポーツ心理学をベースに、個人や組織の活動やパフォーマンスを最適・最大化する心の状態「Flow」を生み出すため、独自理論「辻メソッド」で非認知スキルのメンタルトレーニングを展開。子どものごきげんマインドを育む「ごきげん授業」を日本のトップアスリートと展開する「Dialogue Sports研究所」の代表理事を務める。著書に『スラムダンク勝利学』『ゾーンに入る技術』『禅脳思考』『自分を「ごきげん」にする方法』他多数。

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