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小さな世界へ早春の時空旅行!ホテル雅叙園東京「時を旅する百段階段」体験レポート

  • 2022.2.9
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立春を迎え、あとは春を待つばかり。目黒駅から行人坂を下ったら見えてくる、日本美に彩られた唯一無二のミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」。館内にある東京都指定有形文化財「百段階段」(以外、文化財「百段階段」)では、2022年4月10日(日)まで企画展「時を旅する百段階段」が開催中です。ミニチュアアートやお雛様の愛らしい小さな世界と文化財「百段階段」の美を一緒に巡る旅へ出かけてみました。

85年以上の歴史ある文化財「百段階段」で芸術鑑賞

豪華絢爛な「ホテル雅叙園東京」の館内にある、通称「百段階段」は、1935(昭和10)年に建てられて現存する唯一の木造建築であり、東京都指定有形文化財に指定されています。

ケヤキ板の99段の階段廊下が繋ぐ7つの宴会会場には、当時の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれ、各間を会場に季節ごとに色々な企画展が開催されています。

2022年4月10日(日)までは「時を旅する百段階段」が開催中。1月1日(土・祝)〜「初春の見学会」(終了)、1月15日(土)〜3月27日(日)はペーパークラフトやミニチュアの世界やお雛様が集まった「ちいさな世界」、3月28日(月)〜4月10日(日)は桜の名所である目黒川の散策と四季の花々の日本画などを愉しめる「春の見学会」、という3つの会期で春の喜びを繰り広げています。

今回は「ちいさな世界」を覗いてみました。会場は和室なので素足NG、靴を脱ぎスリッパ持参・靴下着用での見学です。さっそく行ってみましょう!

エレベーターホールのお雛様

3階でエレベーターを降りると、浅草橋にある「原孝洲(はらこうしゅう)」の雛壇が桜とともにお出迎え。

1911(明治44)年創業の「原孝洲」。初代・原米洲さんが完成させた木目込み人形の崇高な美意識を、二世・原孝洲さんが気品よく創り上げ、三世・原裕子さんが現代感覚を融合し洗練させた人形美の世界。細部まで装飾は美しく、ふっくらと柔和な表情が印象的です。

重厚美の「十畝の間」

最初の部屋は「十畝の間」。日本画家の荒木十畝(あらきじっぽ)の四季の花鳥画が天井などに色鮮やかに描かれています。

格子にも螺鈿細工や七宝細工を飾り部屋を輝き囲っています。床の間や組子障子も各部屋によって違うので、隅々まで造りを鑑賞しながら巡りましょう。

また、各部屋では創業当時からのエピソードなどを映像と音声で紹介しているので、鑑賞しながら背景を知ることができます!

金と迫力の「漁樵の間」

純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げた豪華な「漁樵の間(ぎょしょうのま)」。

天井には菊池華秋(きくちかしゅう)原図の四季草花図、欄間には尾竹竹坡(おたけちくは)原図の五節句が浮き彫りで表現され、

推定樹齢200〜300年の大きな檜の床柱には「中国の漁樵問答」の一場面も彫刻で表し、部屋全体の息づかいを今も感じて圧倒されます!

多様な芸術が開花した昭和。世界的恐慌のため職を失う芸術家や職人が続出した時代、創業者である細川力蔵さんが日本画家達の作品を買い上げ、画家や職人を住み込みで雇い館内の芸術創作に尽力されたそう。名のある画家から若い作家の作品までそろう、まさに芸術の場。

ひゐな遊びの「草丘の間」

元々2つに分かれていた部屋が1つになって広々とした「草丘(そうきゅう)の間」 。

礒部草丘(いそべそうきゅう)が描いた四季の草花や鳥、力強い枝の松原の風景に囲まれた広い部屋の中央には“小さなおうち”が展示されています。

埼玉県・北浦和にある会席料亭「二木屋(にきや)」所蔵の懐かしいおうち。

おうちの中には、こたつや火鉢にお雛様が飾られていたり、

端午の節句の甲冑も飾られ、子どもの成長を願っています。

同じく「二木屋」所蔵の木目込み人形「ちいさなお雛さま」は、本当に小さくて表情豊か。

埴輪や下駄など可愛らしい玩具も大集合!

茨城県稲敷市の「江戸崎つるしびなの会」が創作した縁起の良いつるし飾りや、干支の創作人形なども飾られ賑やか! 一つひとつに丁寧な愛情が伝わります。

これまた縁起の良い赤の色打掛と桃の花! ちいさなものを愛でる「ひゐな遊び」を語源とする「雛あそびの世界」から、子どもの幸福を願う大人の愛が溢れる間です。

極小世界の「静水の間」

橋本静水(はしもとせいすい)や池上秀畝(いけがみしゅうほ)、小山大月(こやまたいげつ)などの日本画伯たちが鳳凰や草花などを描いた「清水の間」には、温かな極小の世界が広がります。

中央のテーブルには、ミニチュア木彫作家「小出信久」さんの作品。木を主な素材にさまざまな材料を用いて制作された、肉眼では見えないほど小さな小さな世界! 猫、鼠、兜、船など、虫眼鏡を覗いて細部までギューッと引き込まれます!

ミニ盆栽や苔玉などの販売を行う「みどり屋 和草(にこぐさ)」の「枯山水」。ちいさな箱庭の世界を見ているとだんだん心にも静けさが訪れます。

こちらは、福岡市在住の「入江千春」さんのあかり絵作品。昔ながらの瓦屋根の小さなおうちの中で素焼きの人形が生き生きと暮らしています。

作品のタイトルは地元愛あふれる博多弁! 作品題『あんしゃん、はよはよっ』は、鯉のぼりを手にして、ちょうど端午の節句ですね。新聞紙の兜をかぶってお馬の兄さんにまたがって、子どもの笑い声が聞こえてくるよう。

作品題『まちっとはなれて見んしゃい』では小さな子たちはブラウン管テレビに夢中な一方、お土産でしょうか、兄さんは博多名物「博多通りもん」を開けて喜んでいます! 1軒ずつのおうちの中で温かな日常の瞬間を切り取り、見ている側は故郷に思いを馳せます。

料理の世界の「星光の間」

板倉星光(いたくらせいこう)が四季の草花を描いた「星光の間」。柿やトンボなど故郷を懐かしむ身近なモチーフで描き、天井が低くほどよく狭く、不思議と落ち着く空間です。

「ホテル雅叙園東京」の前身の「目黒雅叙園」の創業当時は日本料理と北京料理をメインにしており、この時分、“席に座ったまま料理をとりわけ、次の人に譲ることができないか”というおもてなしの心から回転テーブルが取り入れられたのだそう。

奥間には、座布団と回転テーブル、料理を運ぶ仲居さんの影と、当時の宴会の様子を再現。腰を下ろすと天井画まで視界に入り贅沢感に浸れてと、計算されています。

こちらには、大人にも子どもにも大人気のカプセルトイを展開する「Kenelephant(ケンエレファント)」のミニチュアのお料理やテーブルの展示。ポップでおいしそうで集めたくなりますね!

名場面に入り込む「清方の間」

美人画の大家・鏑木清方(かぶらききよかた)が愛着をもって造った茶室風の「清方の間」。

四季の草花や美人画が描かれ、太陽に透かされた障子建具や組子が畳に影を落とす空間の床の間には「作るコトを楽しむ」をコンセプトに生まれたDIYキットブランド「つくるんです®」のペーパークラフトやウッドパズル、

ドールハウスキットやミニチュアパーツを扱う「Billy(ビリー)」の和洋の緻密な部屋や商店街に、

立体間取りアーティスト「タカマノブオ」さんの、アニメや映画などの住宅模型などが展示されています。

家屋の中では電気が点灯して物語が続いているようで、自分が巨人になった気分!

ペーパーアーティスト「太田隆司」さんの作品は、車、看板の書体、人々の服装など昭和レトロな東京下町の風景。1枚の紙が重なり、嫁入りの祝福の空気を立体的に創っています。

結婚式の美「頂上の間」

最後に辿り着く「頂上の間」の、天井画は松岡映丘(まつおかえいきゅう)門下の作品。

こちらの格子作りは、奥へと続くほどに陰影美しい……。

日本初の総合結婚式場であるホテル雅叙園東京の式場の歴史の展示や、所蔵する華やかな色打掛を拝見でき、日本の芸術文化の豊かさと価値の高さを実感します。

ちなみに、百段階段が実は99段という理由には、割り切れない奇数は縁起の良い数だという説と、100という完璧な数字からあえて1を引いて、まだ良くなる余地を残した「未完の美、発展性のある数字に」という日本人的な験担ぎの説があるそうです。

自宅で小さな世界を作って旅の続きを

帰りには「ミュージアムショップ」に立ち寄ってみましょう。ミニチュアハウスや3Dウッドパズルなどが展示・販売されているので、ご自宅で小さな世界の続きを楽しめます。

かつての芸術家たちの作品と現代の芸術家たちの作品が時空を越えて交差する「時を旅する百段階段」。見所満載で写真を撮る手も止まらない、小さな世界を覗いて無限の世界に触れ、春を祝うおでかけをしてみませんか?

「時を旅する百段階段」

開催期間:2022年1月1日(土・祝)〜4月10 日(日)

「初春の見学会」1月1日(土・祝)〜 1月13日(木)は終了

「ちいさな世界」1月15日(土)〜3月27日(日)

「春の見学会」3月28日(月)〜 4月10日(日)

●時間:12:30〜18:00(最終入館 17:30)

※3月27日(日)は17:00閉館(最終入館 16:30)

●料金:当日券は大人1,000円、学生500円(要学生証呈示)/オンライン限定(特典付き数量限定)はミニチュア食器付チケット1,800円、3Dウッドパズル付チケット2,500円、日時指定専任ガイドの解説付チケット 1,000円

●会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」

●住所:〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-8-1

問合せ:03-5434-3140(イベント企画10:00〜18:00)

●交通:「目黒駅」より徒歩約3分

[all photos by kurisencho]

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