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手書きの醍醐味「滲み出す、自分」。文具のワンダーランド蔵前「カキモリ」

  • 2022.2.7
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まさに「たのしく、書く人。」をコンセプトに2010年にオープンした蔵前の「カキモリ」は、手書き派や文具好きはもちろん、アートやカルチャーに興味のある若い世代にも愛されるショップ。これから「書く」を始める人に、手書きの愉しさやそのためにおすすめのアイテムを紹介してもらった。

手書きの聖地ともいわれる「カキモリ」があるのは、台東区蔵前。昔ながらの工場や職人さんも多く、モノづくりの街として近年定着してきたエリアだ。
2010年秋頃にオープンしたカキモリは、2021年2月に現在の場所で2階構造の店舗へと成長。実際に手にとって試せるというディスプレイが人気となり、多くの文具ファンや手書き派の人々に愛されてきた。

お店にずらりと揃うのは、 万年筆、ガラスペンなどの「ペン」。そして、カキモリの人気アイテムである「オーダーノート」などの「紙」。さらに近年人気が高まっている「インク」の主に3つのカテゴリーの商品たちだ。

カキモリの特徴はそのほとんどが試せること。都内の文具店では高級品はショーケースの中に入っていることが多い。だが、カキモリではなかなかの高級品であってもすぐ手に取れるような棚に陳列されているのだ。買う気もないのに店員さんをわざわざ呼んで見せてもらう……そのハードルがない分、色々なものを手に取りやすい。

「デジタルが主流の時代、手書きって、手段として必ずしも“必要”ということじゃないですよね」と手書きについて語ってくれたのは、カキモリの岡本さんだ。
「必要ではなくなったけれど、本質的に人は、身体を動かすことを求めていると思うんです。アウトドアやヨガにしても、デジタルとの接点が多い人でも身体を動かしますよね。その本質というのは、身体を動かすことの心地良さや気持ちよさなんだと思います」
確かに、動かすのは手先だけかもしれないが、脳内の言葉やカタチを手を使って書き出すというのはある種“運動”でもある。

感じる愉しみと、見る愉しみ

手書きという運動は、書いている感触を“感じる楽しみ”と、書かれたものを“見る楽しみ”の両方がある。
「感触が愉しいですよね。ペンを握る強さなどの感覚です。それと、書いたものを見た時に、自分の状態が全面に出るというのも手書きならではかなと思います。なので、書いている時の楽しみもあるし、それを見たり受け取ったりした時の楽しみもありますね」
書いている時の自分の気持ちやコンディションは、書いた内容ももちろんだが、書いた文字を見ると微妙な筆圧や、揺れ、文字を書くスピードに差が現れるのだという。「手書きの方が気持ちが伝わるよ」とよくいわれることがあるが、それはまさにこのことなのだろう。

デジタルが主流になる前は、手書きが愉しい愉しくない以前に、手段として必ず必要だったもの。文具には「軽い」「長持ちする」「手が疲れない」など機能の優秀さが求められていたのだという。
「手書きが必要じゃなくなった時代だからこそ、趣味に近い領域へ変化していっていますよね。書く時間をより楽しくするには?という観点でアイテムが選ばれているという体感があります」

コロナ禍で大きく変わった、手書きシーン

「最近は、使い始めたばかりの若い方が多いという印象です。特に万年筆やカラーインク・ガラスペンが人気になっていったのはコロナ禍の影響が大きいです」
インクを使うペンは、持ち運びが難しい。そんなに家にもいないし、気にはなっていたけれどやる機会がないと思っていた人が多いのだそう。コロナ禍で増えた「おうち時間」は、インクと万年筆を使ってみるというもってこいのチャンスだったのだ。

「ガラスペンは家で使うアイテムではあるんですが、万年筆に比べて扱いが簡単なんですね。メンテナンスもほとんどないという、実は初心者向けのアイテム。なので、このタイミングで始める方は「ガラスペン」、もしくは「つけペン」からスタートする方が多いんです」
改めて手書きの温かさを見つめ直したいという時代の空気と、コロナ禍での物理的なおうち時間の発生が、「インクブームを急激に加速したといえるだろう。

手書きで書くものは、世代やキャリアで変化がある

カキモリのお客さんは若い人が多いように見受けられる。実際、それらのアイテムを使って何を書いているのだろうか。
「みなさん、日記やお手紙などに使っている印象ですね。特に若い方はプライベートの利用が多い気がします。仕事に使われている方で印象的なのはデザイナーや建築系の方でしょうか。自分のアイデアをそのままゼロ距離で紙に落とせる、というのは手書きならではで、デジタルと併用しても使われているみたいです」
社会に出て20代のうちは無我夢中の日々だ。「手軽なもの」「便利なもの」を求めたい傾向にある。だが、30代に差し掛かるとだんだん社会生活にも慣れてきて、「より心地いいもの」「より自分らしいもの」を求め始める。生き方を良くしていきたい、豊かにしていきたい。その過程で、より自分らしさが出る「手書き」には、30代からこそチャレンジしてみるのがいいだろう。

手書きをより愉しむための、アイテムをカキモリから紹介してもらおう。

書きたくなるペン、書きたくなるノート、書きたくなるインク…… ①手書きならではの楽しみ方ができるペン「Metal nib」

まずおすすめなのが、金属製の「Metal nib」というカキモリオリジナルのペン先(¥3,850-4,400 税込)だ。持ち手となる「Nib holder」 つけペン軸(¥2,750-5,500 税込)と組み合わせて使用する。
通常の万年筆のインクが出てくるのはペン先だが、この「Metal nib」は、ペン先に縦長に入った溝からもインクが出てくるようになっているのが特徴。
書く角度によって太細や濃淡に差が出るので直感的に、落書きのような楽しさが手で感じられる。書き味はその人のコンディションでだいぶ変わるため、にじみや揺れ方なども含めて「クセ」が強く出るのが面白い。
ステンレスともう1種類用意されているのが【Metal nib真鍮】。真鍮はステンレスに比べて経年変化がある柔らかい金属なので、使い込んでいくと変化があるのもまた楽しめるだろう。強弱が出しやすくなるので、カリグラフィーや絵画に近いものを描きたい人にも向いている。

②ここで選ぶから愛着が。どんどん描きたくなる「オーダーノート」

サイズ・表紙・裏表紙のデザイン・中紙・リングの色・留め具……ノートを構成する5項目すべてを自分の好みの仕様で作れるノートは、書く行為を愉しくさせてくれる。

手書きのよさを伝えるために「愛着があるノートを作ってもらう」という想いからスタートした、カキモリのシグネチャーとも呼べる商品だ。常時60種類くらいの表紙・裏表紙用デザインのラインナップは見ているだけでもテンションが上がる。
仕様として“選べる”のも重要だが、実際にたくさんの中から選び、合わせたりイメージしたりしながらこの場所で「つくる」という行為をすることで、より愛着が湧く一冊に仕上がるといえるだろう。

中紙のデザインも、素材など約30種類のなかから選べる。万年筆に合う、にじみにくい紙や、写真やシールを貼るのに適した紙など、自分がどんな一冊を作るのかイメージしながら選べば、時間があっという間に過ぎていく。
罫線やドットが実は薄いグレーの“手書き”で書いてある。よくみると微妙な揺れや濃淡が感じられ、手書きのノートと相性がいいのも嬉しいポイントだ。

③Inkstandで“つくる”オリジナルインク

最後に紹介するのは「書きたくなるインク」をオリジナルで作れるコーナー「インクスタンド」だ。ワークショップスタイルでインクを作成することができる。17色の中から、好みの色を目指して調合していくのは、1時間弱の体験だ。

自分の手を使って、悩みながら一滴一滴色を混ぜていく。その細かい作業の一つひとつが、その色への愛着へと繋がるっていく。そもそもインクを日常的に利用しているという人よりも、「インクもガラスペンも触ったことがないが、何か楽しそう!」と直感的に参加する人が多いそう。

自分“らしい”色で、自分らしさがより出るアイテムを使って「書く」。
書いたものを一人で大切にするか、SNSなどのメディアで発信するか、はたまた実用で使うか。何にせよ、手書きという行為そのものがその時点での自分らしさが滲み出ているものであることに間違いはない。まずは自分らしさが出てしまうもので、その断片を残していきたい。

撮影:浦将志
取材協力:カキモリ

カキモリ
東京都台東区三筋1-6-2 1F
TEL : 050-1744-8546
営業時間 : 平日12:00-17:00/土日祝日11:00-18:00 ※月曜日は定休日
https://kakimori.comHarumari Inc.
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