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いよいよ4月から男性の育児休暇が変わる!?パパの産休もできるって本当?改正後のポイントは

  • 2022.1.31
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4月からパパの育児休暇が大きく変わるって知っていますか。これまで「取りづらい」とパパの育児休暇取得率が低かった日本の子育て事情。今回の育児・介護休業法改正に伴い、パパの育児参加スタイルががらっと変わるかもしれません。その背景とは? 父親の育児事情に詳しい大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に解説してもらいました。

パパの育児休暇が2022年4月から大きく変わる!?

「実は日本の育休制度は、世界的に見てとても充実しているんです。期間や手当ては世界トップレベル。こんなにいいものがあるのに取ってない。取らないと損。もったいないです」と話すのは大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生。小崎先生は保育士の経験があり、自身も3人の男の子の育児で育児休暇を取得した経験があります。

しかしそんないい制度があっても「取りづらい」という根強い日本の文化があり、あまり活用されてきませんでした。今回の育児・介護休業法の改正で何が大きく変わるのでしょうか。

「これまで従業員が企業にお願いして取っていた育休ですが、4月から企業側から『ぜひどうぞ』と促すことが義務化されたんです。10月からは“パパのための産休”もスタートします」

改正の大きなポイントは“パパの休暇”にフォーカスしている点です。

「1992年から育休は制度としてあるけれど、何度か改正されてきました。意外かもしれませんが、当初から男女ともに取れる制度だったんです。ところが実際の取得率をみると、圧倒的に女性が多い。僕が育休を取った25年前は、男性の取得率は1%以下でした。その背景には男性は仕事、女性は家事育児という社会的な分業があったんです」

出典:令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-(厚生労働省)

しかし2000年ごろを境に、共働き世帯が急増。現在は、圧倒的に共働きが多い状況となり、共に働き、共に育てるというスタイルがスタンダードモデルとなりました。

出典:令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-(厚生労働省)

「女性の社会進出が推奨されて、『ぜひ働いてください』ということになったのですが、気を付けないと女性ばかりが家事・育児・介護の 負担を強いられてしまう状況でした。女性の社会進出と男性の家庭進出はセットであるべきなんです。これは働いている人が自分の家族を大切にするための法律です。今回の改正で父親の立場を狙い撃ちしているのは、これまで母親の負担が重すぎたからです」

「産後うつ」や「産後クライシス」という言葉が飛び交う社会状況は、結果的に深刻な少子化を招きました。厚生労働省によると、女性1人が生涯のうちに生むと見込まれる数である「合計特殊出生率」は、2020年で1.34まで低下。育児不安の要因の一つが「男性が育児に関われていない」という現実でした。

出典:令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況「結果の概要」(厚生労働省)

次にどのように改正されたのか、具体的なポイントをみていきましょう。

新しい制度のポイントは?

こうした日本の状況を打開すべく、育児・介護休業法が改正されました。具体的な制度改正のポイントは大きく2つあります。

1)企業側から育休を打診することが義務化

従来の育休制度は「会社の理解がない」「言い出しづらい」という取りづらい文化があり、あまり活用されていませんでした。そんな世の中の流れを、がらっと変える仕組みが導入されました。

今まで従業員からお願いしていた育休取得が、会社から確認することが義務化され、まったく逆の流れになったのです。

改正された育児・介護休業法は、4月から段階的にスタートします。4月から始まるのは企業側から従業員への「育休の周知と取得の意向確認」です。

「社員から会社側に妊娠や出産の申し出があった場合、会社は『新しい制度や育休ありますよ』『育休を取りませんか?』とアプローチしないといけない。それが企業に義務付けられたんです。これは状況が180度転換したといってもいいでしょう。上司や同僚が『男親なのに取るの?』と言うのはハラスメント。それも明確に禁止されています」(小崎先生)

2)「パパの産休」が10月にスタート

今回の改正のもう一つの目玉が、「パパの産休」とも言われる「産後パパ育休」の新設です。育休とは別の産休で、新しく創設されました。

特徴は5つ。

1.パパも「産休」がもらえる!
2.産後8週間以内に4週間まで取得可能
3.休業の2週間前までの申し出でOK
4.2回に分割して取得することが可能
5.労使協定を結んでいれば、休業中に働いてもOK

そのほか、育児休暇も今年10月から次の表の通り改正されます。

企業側の本気度が試される

先ほどの表のような新しい仕組みが4月から段階的に導入されますが、企業側はどんな課題に直面するのでしょうか。

「当然ながら企業の仕事は煩雑になりますね。育休の申し出は原則1カ月前までですが、パパの産休は2週間前まで。育休の取り方も多様化します。かなりフレキシブルになるので、働き方やキャリアのあり方もフレキシブルになります。誰一人として同じ生活パターンはあり得ません。来年4月からは大企業は育休取得状況の公表が義務化されますから、企業側の本気度が試されるでしょう」

この法律の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。その名の通り「育児」と「介護」がセットになっているところがポイントだと小崎先生は言います。

「これから大介護時代がやってきます。要するに、部長クラスの年齢の人が親の介護に直面するんです。育休は突然始まらないし、子どもの成長に合わせて終わりが見通せる。でも介護はいつ始まるのか、いつ終わるのかも分からない。だから今は、子育て世代だけではなく、誰もが働きやすい職場を作っていく時期です。仕事が属人化しないようチームがトレーニングするタイミングです 。育休を単に個人のものとするだけでなく、会社や組織の業務や働き方の見直しに活用できれば良いですね。」

これからはパパも“産休”を取る時代。一緒に新生児期を過ごすことで、制度を超えたメリットもあるといいます。

「育児のスタートに関わることで、子どもを育てる癖がつくんです。直接母乳をあげることこそパパにはできないけど、それ以外ならパパにもできます。子育ては大変だけど楽しい。こんな楽しいことを、ママがひとりじめするのはもったいない! 覚悟と責任をもって“パパ”を経験してほしい」


取材・文/大楽眞衣子


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。


著者:ライター 大楽眞衣子

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

ベビーカレンダー編集部

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