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『22年目の告白』の残酷なまでの冷静さ 藤原竜也×伊藤英明の狂気の演技に震える

  • 2022.1.28
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『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』(c)2017 映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会

大切な存在を失った時の苦しみは、“ファントムペイン”に似ているらしい。手足を切断された患者が、失ったはずの部位に痛みを感じる。「痛い」「助けて」と救いを求めても、直しようがない。もう、その部位は存在しないから。2017年に公開された映画『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は、この“ファントムペイン”がひとつのテーマになっている。

本作は、藤原竜也と伊藤英明がW主演を務めたサスペンスストーリー。1月28日放送の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で地上波放送される。

1995年に起きた連続絞殺事件が時効を迎えたあと、真犯人を名乗る男・曾根崎雅人(藤原竜也)が現れる。「はじめまして。私が、殺人犯です」と不敵な笑みを浮かべた彼は、告白本を出版。あっという間にベストセラーになり、“カリスマ”として人気を集めるように。当時、事件を担当していた刑事・牧村航(伊藤英明)は、その様子を悔しそうに見ていた。真犯人がこんなにも近くにいるのに、“時効”が邪魔をして逮捕することができないから。

予告やあらすじを見るかぎりだと、刺激的なサスペンス作品という印象を受ける。サイコパスな主人公が、次々と予想だにしないことをやってのける。その様子を、ハラハラしながら観る作品なのだろうと思っていた。しかし、映画を観たあとは、作品に対するイメージが大きく変化することになる。自分がラクになるのなら、それでいい。たとえ、他の人が傷ついたとしても……と考える醜さを、残酷にかつ冷静に描いているのが、『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』なのだ。

事件の映像や、SNSで拡散されていく様子などリアリティを追求している本作。映画のなかの世界観にグイグイ引き込まれるのは、この“リアル”さが影響しているのだと思う。メガホンを取った入江悠監督の細部までこだわった作品づくり。そして、役者陣の魂のぶつかり合いも、本作の見どころのひとつだ。

曾根崎雅人という謎の男の奇妙さを、見事に表現していたのが藤原竜也。彼は、言うまでもなくカリスマ性を持っている俳優だ。だからこそ、熱狂的な支持を集めるキャラクターを演じていても、説得力がある。また、瞬きの回数を少なくしているからか、血が通っていない人形のような冷たさを感じさせた。この冷酷さが、後半とのギャップを生み出すことになる。

そんな曾根崎と対極にいるのが牧村だ。牧村は、事件の真相を追い求める熱い刑事。演じた伊藤は、『海猿』(フジテレビ系)の仙崎のような正義の味方から、『悪の教典』で見せたサイコパス演技まで、とにかく役の振り幅が広い俳優である。だからこそ、「もしかして……?」と疑ってしまう場面も多々あった。物語中盤で起きる“どんでん返し”に、ぜひ注目してほしい。

さらに、連続絞殺事件で父を殺された美晴(夏帆)が放った「死んで、死んでよ……」という台詞も印象に残っている。彼女は、残された遺族の苦しみを体現している存在。清楚なイメージが強い夏帆が見せる狂気的な演技は必見だ。

事件に“時効”があったとしても、遺族の悲しみは決して消えることはない。ならば、その痛みはどこに向ければいいのだろう。本作は、痛みと向き合い、その苦しみをどうにかして乗り越えようとする人々の生き様を描いている。「終わった……」と一息ついたところにさらなる衝撃が起きるので、最後まで気を抜かずに観てほしい。 (菜本かな)

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