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『劇場版 呪術廻戦 0』で知る狗巻棘の優しさ 乙骨憂太から学んだ“共闘”の道

  • 2022.1.25
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『劇場版 呪術廻戦 0』(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社

現在公開中の『劇場版 呪術廻戦 0』は、2020年にアニメ放送されていた『呪術廻戦』の1年前を描く前日譚。そのため、アニメ版で2年生だった都立呪術高専の生徒がまだ1年生の時を描いているため、より彼らの本質や内面的な部分を垣間見ることができる。そのなかでも、やはり呪言師・狗巻棘は作中のなかで最もたくさんのことが知れたキャラクターではないだろうか。

1年生の時の狗巻のビジュアルは、髪型など含めその後の主人公・虎杖悠仁にとても似ている。もちろん、作者である芥見下々は映画の原作となっている通称『0巻』の方を先に発表しており、その時点では後の『呪術廻戦』のような連載化は視野に入れていなかった。そのため、狗巻が虎杖に似ているだけでなく、主人公の乙骨憂太も後の伏黒恵のような髪型だったのだ。そして連載開始後にビジュアルの差別化を図るため、それぞれ見た目を変えている。

狗巻は一見、尖っていて怖いような印象も与える。なにより、呪言師だからこそ無闇に会話もしなければ、語彙力をおにぎりの具に絞っていることもあって何を考えているのか分かりづらい。乙骨も最初の頃はそういったことから彼のことを少し怖がっていた節がある。しかし、ともに挑んだ商店街の任務で狗巻の人となりを知ることになる。

・おそらく誰よりも優しい呪言師としての一面

アニメ版では、禪院真希やパンダのように高専に来るまでの過去などがあまり多く語られなかった狗巻。しかし、誰よりも気になる存在だ。まず、そもそも「語彙力がおにぎりの具しかない」という時点でかなり引きのあるキャラクターであることには違いない。余談ではあるが、1月9日にTik Tok LIVEにて行われたスペシャルトークライブに参加した、狗巻の声優を務める内山昂輝は、劇場版の収録の際に作者・芥見からおにぎりのセリフそれぞれの意味が書かれた資料を受け取っていたそうだ。そのため、その意味を把握しながらニュアンスで声の表現を変えているらしい。

また、狗巻が気になる最大の理由は、彼が呪術界でも有名な呪言師の末裔であることだ。中でも狗巻家は呪言師を家計から絶やそうとする特異な名家として知られており、彼やその家系の謎は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の最新話でもまだ語られていない。アニメ版では第5話の後半で初登場。第8話では、伏黒を叩きのめそうとする東堂葵の間に入った際に呪言で彼の動きを止めた。他の2年生に比べ、その能力について割と早い段階で描かれていたが、本領発揮したのは京都姉妹校交流会編である。

第18話で、真希に惨敗した三輪を電話越しに呪言で眠らせる狗巻。同行していた伏黒の式神である玉犬を撫でるという優しい一面を見せたと思いきや、すぐに近くにいる特級呪霊の花御の気配に気づくと、自分より格上の相手だとわかっていても一人で迎え撃とうとした。そして近くで戦っていた伏黒と加茂憲倫を安全に“逃げさせるために”呪言を使ったり、吐血をしてまでも伏黒に“切り札”を使わせず代わりに前に出たり、彼の行動は節々に仲間や後輩への気遣いが見られるのだ。そしてその性格は、乙骨のことを気にかけていた1年生の頃から変わっていない。

狗巻が乙骨のことを入学当初から気にかけていたのは、彼もこれまで意図せずに周囲の人間を傷つけてきたことがあるからだ。生まれてから呪言が使えた彼は、何の気なしに言った一言でこれまでも相手を呪ってしまったことがある。だからこそ、もう誰も傷つけないように語彙をおにぎりの具に絞った。しかし、そうすることで(それ以前の話でもあるが)コミュニケーションにおける問題が出てくる。当たり前だが、何を言っているかわからない。そういったことも含めて、いろいろ誤解もされやすい。しかし、それでも小説『夜明けのいばら道』で外国人に道を聞かれた際ジェスチャーで何とか助けようとするなど、パンダが乙骨に説明するように、彼は善人であり続けているのだ。

・乙骨から学んだ、“誰かと戦うこと”

劇場版で描かれた1年生の頃、狗巻は学年で唯一の二級術師だった。そのため、単独での活動も許されている。商店街での初手から見るに、一人だけでも十分すぐに任務を遂行してしまうから、これまでも一人でアサインされることが多かったことだろう。しかし、だからこそかえって狗巻の任務に乙骨がサポートでついてきたことは、良かったかもしれない。商店街で突如現れた、予期しない(夏油が放った)呪霊が攻撃を仕掛けてきたときも真っ先に乙骨の安全を考えて突き飛ばし、代わりに自分の指を犠牲にした。

その後も一人で立ち向かおうとするものの、喉を痛めて倒れてしまう。ワンオペでこれまで任務をこなしてきたからこそ、“誰かに頼る”ことにも慣れていないし、その場にいる誰かはいつだって“守る対象”だったのではないだろうか。乙骨に、怪我が大したことないよう着丈に振る舞い、のど薬を飲んでいないのに再び一人で戦いに向かおうとする。彼の様子を気にして追いかける乙骨のことも、片手で「大丈夫」とでも言うように制した。しかし、そこで乙骨が何とも言えない顔で俯き、「“ありがとう”、狗巻君」と言う。この「ありがとう」のセリフは、原作『0巻』でも強調されており、それを聞いた狗巻が目を見開いて驚いている様子が描かれている。そんな様子から、彼がその感謝の言葉を聞き慣れていないように思えるのだ。

呪術師は、非呪術師にその身分を明かさないし(呪霊の存在を知られてはいけないから)“守ることが自分の当然の行い”なので、改めてそれを感謝されたことがあまりないのかもしれない。はたまた、「来るな」という割と強い拒絶の態度をとったにもかかわらず、その奥にある乙骨を守りたいという気持ちを組んでくれたことへの驚きかも知れない。なにせ、彼はこれまで誤解されてきたことも多いようだから。

続けて乙骨が「二人で頑張ろう」というセリフも、狗巻にとっては新鮮だったに違いない。このシーンは、これまで孤独だった乙骨が初めて里香を顕在させずに自分の力で戦う場面であると同時に、仲間と戦うことを覚える場面だ。しかし、それは狗巻にとっても同じだ。彼は言ってしまえば高専時代の五条悟の立ち位置に近く、相手によってはほぼ一瞬でかたがついてしまう呪言の性質も相まって、単独で任務をこなすことが多かったからこそ仲間に頼ることも、共闘することも知らない。そんな彼に“乙骨が”チームワークを教えている場面でもある。だからこそ、二人が連携して呪霊を倒してハイタッチをする時の二人の表情が、なんだかすごく良いのだ。

その後も、百鬼夜行では新宿で他の術師のサポートに回ったり、五条に乙骨を“死守しろ”と言われても、戸惑うことなく、むしろ力強い表情で高専に向かったりと大活躍した狗巻。2年生になってからも実は面倒見がよく、ときには悪ふざけもして(公式ファンブック曰く、好きなことは“悪ふざけ”)、基本的に無表情で言葉も少ないながらにたくさんの魅力を持ったキャラクターとして成長している。それに、髪型のせいかもしれないがどことなく雰囲気も柔らかくなった。真希もそうだが、乙骨が同級生に与えた影響はこういったところでも現れており、計り知れないものだと改めて実感させられるのであった。 (アナイス(ANAIS))

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