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【ロングインタビュー】“シングルマザーに敬意” 映画『スティルウォーター』カミーユ・コッタン

  • 2022.1.14
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現在日本公開中の映画『スティルウォーター』より、物語のカギを握る女性、ヴィルジニー役を務めたフランス人俳優、カミーユ・コッタンのロングインタビューをフロントロウ編集部独占解禁。(フロントロウ編集部)

マット・デイモン主演映画『スティルウォーター』が日本公開

映画『スティルウォーター』は、第88回アカデミー賞で作品賞を受賞した映画『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー監督最新作。フランスのマルセイユを舞台に、殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、父親が真犯人を探し出すというサスペンス・スリラー。

主演は、映画『オデッセイ』、『ジェイソン・ボーン』のマット・デイモン。異国の地での真犯人探しに奮闘するアメリカ人の父親ビルを、泥臭くもリアルに体現し、海外メディアからは「最高の演技を披露した」と絶賛された。

画像1: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

娘アリソン役には、『リトル・ミス・サンシャイン』で映画ファンの心を掴んだアビゲイル・ブレスリン。『ゾンビランド:ダブルタップ』での好演も記憶に新しいが、本作では、留学中にガールフレンドを殺した罪で逮捕されるという難しい役柄を見事に務めた。

画像2: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

そして、困難な道を歩むビルを手助けするシングルマザーのヴィルジニーを演じたのは、フランス人俳優のカミーユ・コッタン。カミーユは、ドラマ『エージェント物語』や映画『マリアンヌ』などで知られ、リドリー・スコット監督の最新作『ハウス・オブ・グッチ』にも出演している。

画像3: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

フロントロウ編集部では、そんなカミーユとのインタビューを独占解禁!本作にかける想いや撮影秘話について詳細に語って頂いた貴重なコメントをまとめてご紹介。

『スティルウォーター』カミーユ・コッタン インタビュー

画像4: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

本作を作り上げる道のりは、いかがでしたか?

カミーユ・コッタン: 「道のり」という言い方は素敵ですね。だって本作はまさに「道のり」なのですから。フランス人女優としてこの素晴らしいプロジェクトに参加できることはまさに信じられない経験でした。かかわっているひとたちを見てみてください。まず、トム・マッカーシー監督。『スポットライト 世紀のスクープ』を見て私は大ファンになりました。もちろん、マット・デイモンも。彼の作品が大好きで、彼の演技を私は大きく称賛しています。そしてアビゲイル・ブレスリン…彼女は今や、伝説です!まだとても若いのに。だから、本当にワクワクしました。トムの映画が本当に好きです。なぜなら、彼の人間性が作品で感じられるし、人間関係に対する彼のアプローチはとても繊細だからです。本作での彼の監督・演出方法や、撮影方法。私は親であること、愛を描き、表現する映画に夢中で、トムがそれを練り上げ、この繭や巣を作り上げることに成功した彼のやり方は、彼の繊細な知覚力の成果だと思います。彼が私をそこまで連れていってくれました。マット・デイモンは才能あふれた大仕事を成し遂げ、小さなリル(・シャウバウ。ヴィルジニーの娘マヤを演じた)も素晴らしかった。トムの構想は、そうですね、私は自分たちが描いている物語を完全に信じていました。私は現実にビル・ベイカーと一緒にいて、あの少女は本当に自分の子どもだと感じていた。私自身にはもう少し小さな娘がいるのだけれど、リルは娘を思わせる存在でした。ヴィルジニーには完全に共感しました。彼女はとても美しいキャラクターだと思うので、彼女になることができてとてもうれしかったです。

画像5: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

3人の間で家族の絆を築くのは簡単でしたか?

カミーユ・コッタン: ええ。リルとはとてもやりやすかったです。彼女を好きになれない人はいないと思います。彼女は年齢の割に大人びています。マットもそう言っているんですが、本当にそのとおり。美しい個性を持っている。そして一緒に仕事をするのに素晴らしいエネルギーの持ち主でもあります。子どもは大人のエネルギーとは全然違うエネルギーを持っていることがあるけれど、それは時に強すぎることもある。彼女の場合はクールなエネルギーで、彼女はダンサーでもあります。それは本当に強みだと思います。

彼女が静かにセットで遊んでいて、「カメラ回ってます、アクション!」の声が聞こえると、彼女は遊びを続ける。マット・デイモンは私にとって完全にビル・ベイカーになる。映画が終わった時私は寂しかったです。もうビル・ベイカーに会えないんだから!現実ととても混ざり合っていて、おもしろかったです。彼らには家族がいなく、場違いの人間でもありました。私は自分の国にいたけれど、周りは外国人ばかりで、全てを時系列どおりに撮影しました。私はパリ出身で、ヴィルジニーもパリ出身でマルセイユに定住していると書かれてありました。私はとても地中海的人間なんです。そういう風に強く感じます。私をそういう風に育てた母親が、私にはいる。だから、本作と現実との共通点はとても多かったです。

画像6: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

マルセイユでの撮影はどうでしたか?危険な撮影地域もありましたが。

カミーユ・コッタン: 撮影した場所は危険ではなかったと思います。でも危険な区域がマルセイユにあるというのは本当ですね。

娘を救い出そうとするビルの道のりと、そのやり方についてはどう思いましたか?

カミーユ・コッタン:その質問はまさに、本作を見ながら観客が抱く質問ですね。私だったらどこまでやるだろうか?と。それはその人次第。それは大切なことだと思います。個人的な問題対政治・社会的問題に一石を投じるものですね。

画像7: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

あなたが演じる人物は、才能ある俳優だと思いますか?

カミーユ・コッタン: まず、彼女が子を一人で育てているという事実に敬意を表します。彼女は芸術における自分の夢を犠牲にしたくはない。そしてそれは難しいこと。後の方で彼女はそれについて話します…。テレビ番組に出演することが決まって彼(ビル)が「すごいじゃないか」と言う時に、突然、見ている者はそれを理解することができる。その後彼女は「すごいかどうか分からない」と言うんですよね。舞台の経験が豊富だと、舞台が大好きになる。それは現実です。でも、財政面ではテレビや映画に出るのとは差がある。だから、芸術的な探求という面ではもっと自由があるのかもしれない。

ヴィルジニーは子持ちで、夜のベビーシッター料金を支払うと大抵、ベビーシッター代は舞台への出演料と同じになります。彼女自身は母親がおらず、手助けが得られません。だから私は彼女の女優としての才能を疑問に思ったことはありませんでした。私には多くのシングルマザーの知り合いがいるので、シングルマザーを演じることは(彼女たちに)敬意を表することができる、喜ばしい体験でした。シングルマザーでいることは本当に大変なんです。

人生には男が必要だと言っているわけではありません。パートナーなしで子供を一人で育てることは、本当にタフだと言いたいんです。マットが演じる人物に対してヴィルジニーがガイドの役割を果たすところが私は好きです。彼女はとても生き生きしていて、自分の扉をビルに対して開ける。ヴィルジニーはタフな状況にいるのに、他人を助ける時間も見つける。美しいキャラクターだと思います。

画像8: © 2021 Focus Features, LLC.
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本作では彼女の芸術コミュニティーも垣間見ることができます。

カミーユ・コッタン: ええ。ヴィルジニーが最終的にベッドを共にすることになる演出家について、少し愚痴を言い始める場面ですね。彼女は、「彼は田舎者だ」と言うけど、これってとてもパリ人的な表現なんです!探求したり稽古するあらゆる瞬間が詰めこまれていて、素敵な場面だと思います。トムも俳優として舞台の経験がある。だから、自分がどこへ向かっているのか分からない創造の瞬間をとてもよく表していると思います。ビルがヴィルジニーに会いに来る時、彼女は彼の感想を知りたがる。実際、(俳優は)他者の反応や感情に頼っているから。

画像9: © 2021 Focus Features, LLC.
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あなたの演じる人物は、ビルとは正反対の性格ですね。演じていてそのように感じましたか?

カミーユ・コッタン: 2人が共有する親密さを守ることが最初は難しかったと思います。私たち2人にとって共通の課題の1つだったと思う。「この2人が一緒にいることについて、観客はどう受け入れるだろうか?」と考えながらいました。魂の本質みたいなものだから、とても興味深いと思います。私が演じる人物の視点から言うと、彼女はこの2人を一緒にする状況が何なのかを理解していて、彼女はこう信じてもいます。知的で親切で繊細で、それまでは未知だった現実の一部を明らかにする誰かと一緒にいれば…彼女は、彼が彼の視点を変えられると信じているんです。

画像10: © 2021 Focus Features, LLC.
© 2021 Focus Features, LLC.

アメリカ式演技は、フランスのそれと違う部分がありますか?

カミーユ・コッタン: たとえばトム・マッカーシーが監督したやり方を私はとても気に入っていました。なぜなら、彼自身も俳優なので、各シーンのエネルギーに彼も浸っていて、私たちと一緒にその瞬間を生きていたからです。それはとてもオーガニックで物理的なもの。私はマットの働き方を愛でながら見ていました。

彼は体や体の研究に集中し、エネルギーを持っている。彼は常に、自分の役のエネルギーの中にいました。彼が何も言葉を発していないのに、私たちが彼の内面にすごく近づくことができたのは、すごいことだと思いました。彼のパフォーマンスとその深さには恐れ入りました。

違うアプローチがあるかという質問についてだけれど、それは分かりません。私はアメリカ式演技と英国式演技が大好きです。アングロサクソンには非常に身体的なアプローチがあるようです。彼らが脚本と役柄について熟考することは確実で、それでいて物理的・身体的側面から人物を生きることも大好きなんだと思います。私はそういうところがとても好き。彼らは自らを変身させるのが好きなんです。自分のエネルギーを取り出して、他の体に入れることが大好きです。アクセントにも取り組む。フランス人俳優は決してアクセントに取り組んだりしない。絶対にね。(アメリカやイギリスには)アクセントのコーチが本当にたくさんいる。そしてアクセントは完全に、俳優が生む証明の一部になります。彼らは自分が光を当てる人々にできるだけ近づきたいと思っているんですね。

カミーユ・コッタンの出演シーンの本編映像が解禁!

今回、インタビューに応じたカミーユが出演する本編シーンを特別に解禁!

このシーンは、娘の無実を証明するため単身マルセイユに渡ったビルが、現地の協力者ヴィルジニーと共に聞き込み捜査を独自に行うところ。娘アリソンが真犯人だと主張するアラブ人のアキムを事件当時目撃したというバーの元オーナーを訪ねるのだが、聞き込みはうまくいかない…。

映像からは、カミーユの豊かな感情表現が伝わってきて、まさに本作を作り上げる「道のり」に心血を注いだことを感じ取ることができる。

映画『スティルウォーター』は、現在日本の劇場で公開中。(フロントロウ編集部)

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