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家庭菜園を始めよう! オーガニック農家が教える、はじめの一歩【マイエシカルでいこう。11】

  • 2022.1.9
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第11回 空き容器やペットボトルで作る、超ビギナー向けミニ菜園

「綾善ファーム」花島綾乃さん

新しいことにチャレンジしたい。そんな気持ちが一年でいちばん高まるのが新年です。スキルアップのための勉強や、新しい趣味、運動など、さまざまなチャレンジがありますが、2年以上続いたコロナ禍の影響もあって注目されているのが「家庭菜園」です。

プランターや土、種、苗など、必要なものはホームセンターや園芸店で簡単に手に入るため、今すぐにでも始められます。とはいえ、植物に触れたことがほとんどない人や、自宅にプランターなどを置くスペースがない人などにとっては、やはりハードルが高いもの。そこで今回は、千葉県松戸市のオーガニック農家「綾善ファーム」の花島綾乃さんに、超ビギナー向け家庭菜園の始め方を教わりました。身の回りにあるものを活用し、最小限の準備で、ちょっとしたスペースがあれば簡単にできる方法です。

5分でできる、簡単種まき3ステップ

購入するものは、野菜用の培養土と、植物の種の2点のみ。土を入れる容器は、買わなくても手近なものでOK。綾乃さんは、キッチンで不要になった保存容器を用意してくれました。

「プランターじゃなくてもできます。2リットル入りペットボトルや牛乳パックを切って器にしてもいいですね。土は『野菜用』と書いてあるものを買ってください。種はホームセンターでも売っていますし、ベビーリーフなら100円ショップにもありますよ」

水で濡らしたキッチンペーパーやスポンジだけで育てる方法もありますが、この方法では発芽が難しい種もあるため、ここでは土を使います。手順は以下の3ステップのみ。

1.容器に土を入れ、水を適量入れて湿らせる。

全体に水分が行き渡る程度の水をかけ、手で土を混ぜます。

「乾いた土に種をまいてから水をかけてもいいんですが、湿らせておいたほうが均等に水分が回って保水性が良くなります。根も張りやすくなりますよ」

あらかじめ湿らせた土に種をまく(※撮影時は花壇の土を使用しています)撮影:成見智子

2.土に指で筋をつけて浅い溝を作り、そこに種をまく。

今回は、サラダなどにもよく使われるベビーリーフの種を使います。

「種が重ならないようにまくといいですね。でもベビーリーフなら多少混みあっていても育つので、あまり神経質にならなくても大丈夫。パラパラとまいてください」

指で溝を作り、種をまく 撮影:成見智子

3.種の上に土をかける。

溝の両側を指でつまむようにして種の上から土をかけ、溝を埋めていきます。

かぶせる土の厚さは種袋の説明を参考にする 撮影:成見智子

以上で完成です。芽が出るまでは、特に水分を切らさないようにするのがポイントです。

「水やりは、毎朝1回が目安です。土がべちゃべちゃになるほどあげる必要はないですが、霧吹きだとちょっと物足りないかな。大きめのスプーンで、土が乾いた部分に少しずつ水をかけていくといいですね」

わずかな手間でできる種まき 撮影:成見智子
日当たりのよい場所に置き、スプーンで水やりする

発芽後は、土の表面が乾いたら水をかけるようにしましょう。日光が当たる場所に置いておけば屋内でも十分育ちます。室内に明るい場所がない場合は、日中だけ外に置いておき、冬季は夕方に取り込むようにして管理します。上記のステップ2で種を重ねてまいてしまっても、発芽してから間引きをすれば大丈夫です。

市販の野菜用の培養土にはあらかじめ肥料分が含まれているため、ベビーリーフのような葉ものなら収穫まで肥料をやらずに育てられます。初めは5リットルサイズなどの小袋の土を購入し、小さな容器で始めるといいでしょう。

今回はベビーリーフの種をまきましたが、はつか大根やハーブ類などもおすすめだそうです。

「はつか大根は、その名前のとおり種をまいて20日で収穫できますよ。ハーブなら、たとえば香りの良いミント。手間をかけなくてもよく育つし、どんどん増えます。芳香剤替わりにトイレに置いてもいいし、うちではハーブティーやお風呂にも使います。このあいだ遊びに来た友達は、カクテルのモヒート用にスペアミントを摘んで帰りましたよ(笑)」

鮮やかな色で、食卓のアクセントにもなるはつか大根 撮影:成見智子
使うぶんだけ収穫し、葉ものを長く楽しむ

ここではごく初歩的で簡単な方法を紹介しましたが、植物によって種をまく間隔や、かぶせる土の厚さなどは異なります。種袋に書いてある説明を参考に、それぞれの植物に合った方法を実践しましょう。慣れてきたらプランターを購入するもよし、魚介類を入れるトロ箱などでも代用可能です。

3ステップは、種をまいて育てる方法ですが、苗を買ってきて定植する方法もおすすめです。空いている植木鉢や器、バケツなどに土を入れて湿らせたら、苗の大きさにあわせて穴を掘ります。苗をポットから出して植え付けたら、倒れないように土を軽くおさえ、株元に土を寄せます。この時、新葉が出て来る「生長点」を埋めないように注意しましょう。

苗の大きさにあわせて穴を掘り、定植する 撮影:成見智子

綾乃さんは手元にあった白菜の苗でお手本を見せてくれましたが、初心者なら、この時期はリーフレタスや春菊などを植えると長く楽しめるといいます。

「株ごと抜いて収穫するのではなく、使うぶんだけ外側から葉を摘んでいきます。生長点から新しい葉がどんどん出て来るので、長い間収穫できますよ」

もし土が余ったら、野菜の保存に利用することもできます。花島家では、自宅前の花壇で長ネギが保存されていました。

「根っこがついたままの泥ネギなどは土に挿して、白い部分が隠れるように土をかけておくと長持ちしますよ」

花壇がなくても、バケツなどの深めの容器に土を入れ、そこにネギを挿しておけばOK。ニンジンなども、土やひげ根がついたままのものであれば同じように保存可能です。

花島家の花壇で育つハーブや葉物野菜。手前はパクチー、奥が春菊 撮影:成見智子
ネギの土寄せ。白い部分が隠れるくらいに土をかけておく 撮影:成見智子
子どもと一緒に「作り手」になってみる

綾乃さんは、夫の隼さんと2人で有機農業を始めて5年目。夫妻は自宅で直売所を開き、産直サイトにも出品していますが、最初は独学で栽培を学んだそうです。家庭菜園で野菜を上手に作る秘訣を隼さんに尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「自分が納得できれば、それが正解です。やり方はいろいろありますが、自分はこれでいこうと決めたら、とにかく始めてみる。教科書通りじゃなくても、ちゃんと食べられる野菜ができたらそれでいいんです。失敗しても、どうやったらうまくできるかなと考えるのも楽しいですよ」

家庭菜園で野菜作りの大変さを実感し、スーパーで野菜を買う時の気持ちが変わったという声もよく聞くそうです。子どもと一緒に作り手になってみることも、エシカル消費のひとつ。自分たちがふだん食べているものがどう作られているか、親子で深く考えるきっかけになるでしょう。

「野菜の味が濃くておいしい」「子ども達にも大好評でした!」「レシピが入っていて助かる」など、購入者からも好評で、千葉県松戸市のふるさと納税の返礼品にもなっている綾善の野菜。次回は、夫妻が農業を始めた頃のエピソードや、2児の子育てライフなどについて紹介します。

綾善ファームの野菜セット。S・M・Lの3サイズで、価格は1000~3000円 撮影:成見智子

綾善ファーム
直売所:千葉県松戸市五香西5-3-3
ウェブサイト:https://www.h-ayazen.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ayazen05/?hl=ja
Facebook:https://www.facebook.com/ayazen.h

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