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『鎌倉殿の13人』は“勝者の物語”をどう描く? 制作統括に聞く三谷幸喜脚本の醍醐味

  • 2022.1.9
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『鎌倉殿の13人』写真提供=NHK

「ドラフト指名」のような異例のキャスト発表など、放送前から視聴者を楽しませていた『鎌倉殿の13人』(NHK総合)が1月9日よりスタートする。『新選組!』『真田丸』を手掛けた、三谷幸喜脚本の3作目の大河ドラマとなる。放送を前に、本作制作の経緯や2022年に鎌倉時代を描く意義などを、制作統括の清水拓哉氏に話を聞いた。(編集部)

●三谷幸喜が描く“歴史の勝者”

――『鎌倉殿の13人』は三谷幸喜さんの脚本作品ですが、鎌倉時代の深いところに切り込んでいく作品にチャレンジすることになった経緯を聞かせてください。

清水拓哉(以下、清水):2016年に放送された『真田丸』が終わった後に、三谷さんともう1本やろうかという話になりまして。三谷さんは前々から北条家に非常に関心が強くあり、北条義時の目線でどのようにして鎌倉幕府ができて、源氏の将軍たちが倒れ、北条家がトップに立ったのかを描きたいとおっしゃっていて、なるほどなと思いました。三谷さんの大河ドラマとしては今回が3作目になります。近藤勇の『新選組!』と真田幸村の『真田丸』は敗者の美学、滅びていく者たちの輝きを描いた作品でしたが、今回の『鎌倉殿の13人』で三谷さんは「歴史の勝者を描きたい」ということで、すごい挑戦をされるなと、三谷幸喜が描く歴史の勝者はどんなものだろうとものすごく興味が湧きました。勝者だけれど、そのプロセスで傷ついている、多くの人を傷つけたであろう苦い勝者を描きたいというのは、逆に三谷さんらしいなとも思いますし、新しい大河ドラマができるんじゃないかという期待がありました。

――清水さんが思う、小栗旬さん演じる北条義時の魅力はどういった部分にあると思いますか?

清水:北条義時は三谷さんの好きな振り回される人ですが、振り回されながらも乗り越えなければならないミッションに全力で立ち向かっていくんですよね。彼にはその健気さ、一生懸命さがあります。彼自身に天才的な能力があるわけではないのですが、立ちはだかる試練に対して決して華麗ではない、泥臭い乗り越え方をしていくんです。それが、だんだん上手くなっていく。源頼朝(大泉洋)に影響を受けて、時に冷酷な行為も見事にやってのけていくんですよね。健気な人間が変貌していく、そこが北条義時という人間の恐ろしさであり、すごみなんだと思います。今までの大河ドラマにはない、ダークヒーローになっていく場面もありますが、別に小栗さんが笑顔で恐ろしいことをやってしまうような人では全然ないんですけど(笑)。小栗さんの人望の厚さ、器の大きさは、きっと北条義時に通じるものがあるんだろうなと思っています。

――大泉洋さんが演じる源頼朝は、どのようなイメージで描かれていきますか?

清水:源頼朝といえば、源氏の軍団を率いて平家を滅ぼし、鎌倉幕府を開いた人ですが、彼の敵は必ずしも平家だけではなかったんですね。一番の敵は、仲間だったんだと思うんです。そこの人間関係は濃密に描かれていきます。自分たちのことしか考えていない坂東武士団に対して、言うことを聞かせるというのはこれまで描かれてきてはいないと思いますので、楽しみにしていただきたいところです。板東武士団も豪華キャストになりますし、その中でパワーゲームを繰り広げていく大泉さんは新鮮だと思います。

――今回、新たに取り入れた映像技術はありますか?

清水:大河ドラマは『いだてん~東京オリムピック噺~』以降、4K/HDRとしても放送をしていますが、今年はそこからさらに進化していこうと、全て単焦点のカメラレンズを使って撮影をしています。昨今はサブスクリプションサービスの登場によって、世界中の作品と並べられる状況です。そういった中で、今の世界標準の映像表現をきちんと追求したいということで、スタッフが非常に頑張ってくれています。あとは、『スター・ウォーズ』のドラマシリーズ『マンダロリアン』で大規模に取り入れられ始めた、LEDパネルを本格的に導入しています。LEDパネルに背景を投影してその前で芝居をする、技術的には難易度が高いトライアルですが、日々現場がチャレンジを繰り返しています。グリーンバックでの合成ももちろん使用していますが、技術的にもさらに進歩していって、LEDパネルがスタンダードな撮り方になっていくといいなと思っています。

――大泉洋さんをはじめとするメインキャストが番組の公式Twitterで発表される、大河ドラマとしては異例の試みが『鎌倉殿の13人』では行われました。

清水:SNSが主流になってからは、視聴者のみなさんにはこれまでとは違った楽しみ方をしていただいているなと感じています。『新選組!』の時は、「2ちゃんねる」の盛り上がりが僕らの背中を押してくれましたし、たくさんの勇気をもらいました。そんなに楽しんでくれるのなら、じゃあこういうのをやるよ、ということもあったりして。そのことがずっと幸せな体験として記憶に残っています。それがTwitterの時代になり、今回も視聴者のみなさんと楽しいキャッチボールができたらと思っています。みなさんが盛り上げてくだされば、僕らも調子に乗っていろいろやりますので(笑)。

●800年続いてきた物語の強さ

――清水さんから見た『鎌倉殿の13人』という作品が持っている現代性を教えてください。

清水:今回の企画を通す時に、「なぜ今、北条義時なんだ。鎌倉の話なんだ」と聞かれたのですが、正直言って僕はそこにあまり関心がなかったんです。なぜかというと、800年近くの間、日本人が面白がってきた物語だということ、そして、長く親しまれていろいろな形でフィクションにされてきたものが題材として面白くないわけがない。僕が思う大河ドラマの良さは、ある種のクラシックだと思うんですよね。50年後の人が観ても面白いと思ってほしい。そのためには、800年後の今の時点から振り返る彼らの感覚ではなく、その時彼らがどう感じていたのか、後付けでないリアルタイムな物語を展開していけば、それは自ずと普遍的な作品になっていくと思うんです。それぞれの時代で観た人が、きっと自由に、その時の自分や社会の置かれている状況から何かを感じ取ってくれるんだろうと思っています。だから決して、この2022年だけで受け取られるドラマだとは全く思っておりません。800年続いてきた物語の強さを信じてみたいと思っています。

――『鎌倉殿の13人』は役者同士の会話劇が見どころの一つですが、実際の現場での声を教えてください。

清水:三谷さん脚本のドラマの魅力はコミカルな一方で、歴史劇だからこその非常に残酷だったり、不条理なシーンがある。役者のみなさんはその振れ幅が非常に大変だとおっしゃっていますね。みなさんそれぞれのアプローチをされていると思いますが、とにかく嘘のないように、全力でその時に起こった感情を大事に演じている印象です。これは作り手側としても、面白いシーンとシリアスなシーンを一本のドラマにまとめ上げていくのが、三谷作品の難しさであり、醍醐味だと思っています。一大エンターテインメントとして、期待を裏切らない内容になっていますので、ぜひオンエアを楽しんでいただければと思います。

(構成=渡辺彰浩)

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