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ふるさと納税にもデメリット? 返礼品がお得でも税収減のツケは誰が負担?

  • 2022.1.6
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年末になると毎年、恒例のように「ふるさと納税」の記事が増えます。年内の税額控除を受けるためには、年内にふるさと納税の支払いを完了させなければならず、駆け込みで納税(寄付)しましょう、ということなのでしょう。

創設当初の意義を大きく外れる「ふるさと納税」

筆者自身は、今まで一度もふるさと納税をしたことがありません。そのことを知人に言うと、ほとんどの人から「どうして、もったいない」と言われます。この知人からの進言からも分かるように、今や「ふるさと納税」は創設当初の意義から大きく外れ、2000円の自己負担分によって本来納めるべき税金の一部を寄付金で相殺し、払い込んだお金で自分が欲しいと思う「返礼品」と称したモノやサービスを買う制度に堕しているというのは、言い過ぎでしょうか。

そう思ったのは、2021年12月26日の読売新聞オンラインに「返礼品に『スノーピーク』、ふるさと納税寄付額が倍増」と書かれた見出しが目に入ったからです。

記事の内容は、新潟県三条市に本社を置く、アウトドア製品の開発・製造・販売を手掛けるスノーピークの商品を、三条市がふるさと納税の返礼品として用意したところ、瞬く間に品切れになる商品が相次ぎ、11月の寄付額が2億5000万円を超え前年同月比2倍以上になる見込み、というものでした。三条市の担当者によれば、「スノーピークの商品が寄付額アップにつながった」そうです。

そもそもふるさと納税が、どういう経緯で創設されたのかをご存じでしょうか。

自分を育んだ“ふるさと“に納税できる制度を

この制度が発足したのは2009年で、西川一誠前福井県知事による「故郷寄付金控除導入の提案(2006年10月)」に端を発しています。この提案を受けて、当時、総務大臣だった菅義偉前首相が「都市部の税収を地方に還元する制度」の創設に向けて動き出したことから、この制度がスタートしました。

総務省の「ふるさと納税研究会報告書」によると、制度の意義についてこう書かれています。

「多くの国民が、地方のふるさとで生まれ、教育を受け、育ち、進学や就職を機に都会に出て、そこで納税をする。その結果、都会の地方団体は税収を得るが、彼らを育んだ『ふるさと』の地方団体には税収はない。そこで、今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意志で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」。

実際問題として、地方から大都市圏、なかでも東京圏への人口流入は群を抜いています。転入数と転出数を比較し、転入数が転出数を上回っていることを「転入超過」と言うのですが、2020年の住民基本台帳人口移動報告によると、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の転入超過は1996年から25年連続です。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響があり、東京都の転入者数は大幅に減少しましたが、それでも43万2930人の転入者がおり、次いで神奈川県の23万2772人、埼玉県、千葉県、大阪府、愛知県、福岡県の5府県が10万人台で、これら7都府県への転入者数は、合計140万3988人。転入者総数の実に57.0%を占めています。それだけ、地方から大都市圏への人口移動が進んでいるということです。

地方から大都市圏への人口移動が起こる理由は、大学進学で東京に出てきたものの、生まれ故郷には十分な仕事がないため、そのまま東京をはじめとする大都市圏の会社に就職し、そこに生活の基盤を置く人が多いからというのが、その最たるものでしょう。

ただ、地方から見れば、子どもの頃は住んでいる地方の自治体から医療や教育などの住民サービスを受けて育ったのに、大学は東京の学校に通い、そのまま東京で就職・生活されたら、納税者である社会人になった途端、住民税をはじめとする地方税を、東京などの大都市圏に奪われてしまう形になります。将来、大人になった時、納税者として税金を納めてくれるという前提で、子どもに対してさまざまな自治体サービスを提供したのに、大人になったら「さようなら」というのでは、確かに納得できないところもあるでしょう。

いま住む自治体の減収分は、住民サービス削減の可能性も?

その意味において、大都市圏に納めている地方税の一部を再配分する機能として、ふるさと納税が機能するのであれば、それはそれで存在する意味も分からないわけではないのですが、今のふるさと納税は、返礼品をもらうことが目的化しているように見えます。その結果、返礼品の内容をカタログ化したサイトが増え、「おトクだから」という理由だけで、自分とは縁もゆかりもない地方自治体に寄付をする人が増えています。

一方、大都市圏の人々が一所懸命に「おトクなふるさと納税」を行った結果、今度は自分が住んでいる自治体の税収が悪化するという事態も生じています。たとえば世田谷区は、ふるさと納税による減収分が70億円にも達し、事業の先送りや住民サービスを削る選択を迫られています。

もちろん、それでも大都市圏の地方税収は、人口流出に苦しむ地方に比べて大きいはずですから、大都市圏の自治体がどこまで業務の効率化を進め、そのうえで税収が本当に不足しているのかどうかを精査する必要はありますが、本来、地方税は自分が生活をしている自治体の住民サービスを維持するために納めるものです。それが、ふるさと納税の行き過ぎによって必要最低限の税収を確保できなくなったとしたら、それこそ本末転倒です。

マネー情報サイトなどでも、ふるさと納税を積極的に推す声がたくさんありますが、その大半は「生活者にとっておトクな制度だから」という理由です。

確かに生活者一人一人にとっておトクな制度かも知れませんが、本来の地方税のあり方を歪めてしまう恐れがあるのも事実です。その歪みが取り返しのつかない状況になる前に、人口の偏在と再配分の仕組みを見直す必要があります。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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