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いまさら聞けない「執行猶予」の意味 判決後、生活はどうなる?期間中に再犯なら?

  • 2022.1.5
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執行猶予とは?
執行猶予とは?

裁判に関する報道などで耳にする機会の多い「執行猶予」。執行猶予というと「刑の執行が先延ばしになる」とだけ理解している人が多いと思いますが「そもそも、何のための仕組み?」「執行猶予期間中は普通に生活できるの?」「その期間中、また罪を犯したらどうなる?」など、さまざまな疑問を持つ人も少なくないようです。

いまさら聞けない執行猶予の意味や、被告の生活への影響について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「更生の余地がある場合」に付与

Q.そもそも、執行猶予とは何でしょうか。

牧野さん「有罪判決を下す際、被告人に更生の余地がある場合、収監するよりも早く社会復帰を実現できることから、刑の執行を猶予(延期)する制度です。例えば、『懲役2年、執行猶予5年』の判決が言い渡された場合、5年間は懲役刑の執行が猶予されます。

再び犯罪を行うことなく、猶予期間を経過すれば、言い渡された刑罰(懲役2年)を受ける必要はなくなります。つまり、執行猶予付きの判決を受けることができれば、被告人はその時点からすぐに社会復帰できるのです。なお、懲役3年までの有罪判決の場合、最低1年以上、最長5年までの執行猶予を付けることができます」

Q.執行猶予が付与された場合と付与されなかった場合、被告はそれぞれどうなるのでしょうか。

牧野さん「執行猶予の付与の有無は『刑務所に入るかどうか』の点で非常に大きな違いがあります。執行猶予が付かない有罪判決(実刑判決)の場合、判決が下されると、速やかに刑務所に収容されますが、執行猶予付き判決の場合、直ちには刑務所に収容されません。なお、執行猶予が付いても『有罪判決』には変わりませんので、無罪ということではありません」

Q.執行猶予付きの判決後、生活にはどのような影響や制限がありますか。

牧野さん「日常生活においては、次のような制限があります」

【海外旅行】日本のパスポート取得の段階で制限を受けます。執行猶予期間中のパスポートは渡航先・有効期間が限定された「限定パスポート」で、発行してもらうには判決謄本や旅行計画を提出し、事前の申請をしなければなりません。審査の結果、限定パスポートも発行されない場合があります。

ただし、執行猶予期間が経過すれば、有罪判決の効力が失われ、一般パスポートが発行されます。過去には、詐欺罪で有罪判決を受け、執行猶予期間中であることを隠して、「一般旅券」(パスポート)を取得した会社役員が旅券法違反(虚偽申請)で逮捕されたケースもあります。

次に、旅行先の国で入国を拒否される可能性があります。アメリカをはじめ、多くの国では『罪を犯したことがあるかどうか』を入国書類で尋ねられます。例えば、アメリカの入国書類は期間の限定なく、犯罪歴を尋ねるため、執行猶予期間の経過後もしばらく、ハワイに行けなくなるかもしれません。海外旅行が好きな人には大きな代償です。

【仕事】法律の規定により、公務員(警官や自衛隊員を含む)や教職員は執行猶予付きであっても、禁錮刑以上が確定すれば失職します。また、禁錮刑以上の有罪者が就けない仕事ではないとしても、会社など所属する組織の就業規則により、懲戒解雇も含めた懲戒処分を受ける可能性も高いでしょう。なお、弁護士、医師、公認会計士、弁理士など資格が必要な職業には就けなくなります。

【その他】有罪判決が確定したという事実については戸籍謄本や住民票などに記載されることはなく、一般に公開されません。そのため、通常は不動産関連(家を借りる/買う、引っ越しをするなど)、婚約・結婚・離婚、出産、借金、国内旅行、選挙権、就職には原則、影響しないでしょう。

ただし、ネット上には、掲載された情報がいつまでも残ってしまうため、採用や結婚などの際、相手の情報をネット検索することで前科の有無が分かってしまう可能性があります。最近では「前科経歴は要配慮の個人情報である」ことを理由に、プロバイダーに削除要求を行うことが裁判で認められています。

Q.執行猶予期間中に再び、罪を犯してしまった場合はどうなりますか。

牧野さん「執行猶予期間中に他の犯罪をして、裁判で有罪になると、原則として執行猶予は取り消され、直ちに刑務所に入らなければなりません。この場合、前に下された執行猶予付き判決の懲役に加え、執行猶予期間中に犯した罪に対する刑期も加算された期間、服役しなければなりません。ただし、新たな犯罪による刑が1年以下の懲役または禁錮であって、さらに、特に酌量すべき事情がある場合、再び執行猶予が付くケースもあります。

なお、猶予期間中の交通違反については、青切符の交通違反で反則金を支払った場合、執行猶予の取り消しにはなりません。しかし、裁判所で罰金を受けた場合、裁判所の裁量で執行猶予が取り消されることがあります」

Q.執行猶予期間が終了すると、どうなりますか。

牧野さん「再び犯罪を行うことなく、猶予期間を経過すれば、言い渡された刑罰を受ける必要はなくなり、先述のパスポートの制限などがない通常の生活に戻ることができます」

オトナンサー編集部

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