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室井佑月さんインタビュー「乳がんが見つかったことはいろいろな意味でラッキーでした」#3

  • 2022.1.3
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テレビやラジオのコメンテーターとして、コラムニストとして、小説家として幅広い分野で活躍中の室井佑月さん。歯に衣着せぬ物言いとエネルギッシュな姿が印象的な室井さんですが、実は何度も大病を患っているそうです。3回目の本日は、49歳のときに患った乳がんと心身の調子を保つ方法についてお話をうかがいました。

49歳のときに乳がんが見つかった

――2019年7月には、室井さんが乳がんを患ったことがニュースとなりました。

室井さん もう病気はたくさんだと思っていたので、「なんで私が……」と思いましたね。でも私、すごくラッキーだったんです。

――それはどういう意味なのでしょうか?

室井さん 漫画家の友だちと久しぶりに食事に行ったとき、いつも一緒にいたアシスタントさんが乳がんで亡くなったことを知ったんです。その日の夜、お風呂に入ろうと思ったら操作ミスで浴槽にお湯がたまっておらず、お湯を張り直している間、何の気なしに乳房を触ってみたんですね。そしたら、右胸にしこりがあったんです。

びっくりして一緒に食事に行った友だちに電話をしたら、「明日、絶対に病院に行って!」「行かなかったら友だちやめるから!」って言われたんです。穏やかな彼女の強い口調に驚いてしまい、次の日、糖尿病でお世話になっている病院へ行きました。実はその日は大雨で、乳がんの権威の先生の予約がポンって空いていたんです。

触診をした瞬間、先生に「これは乳がんだろうから、覚悟をしてください」と言われました。本来なら別の日に細胞検査の予約を入れるらしいのですが、その日は午後の検査枠に空きが出たということで細胞検査も受けることができました。

――細胞検査で乳がんと診断されたのでしょうか?

室井さん ステージⅠの乳がんが見つかりました。手術を受けることになったのですが、先生の予定や病室の調整に時間がかかると言われたんですね。ところが、お盆の時期にベッドが空くことがわかり、8月9日に手術が決まりました。乳がんが見つかって1カ月弱で、しかも名医の手術を受けられるなんて、「私ってツイてるなぁ」って思いましたね。

――ある意味、とんとん拍子ということですよね。

室井さん そうなんです。ただ、先生には「なんでこんなことをしたんだ!」って豊胸手術を怒られました。私は乳がんと知ってショックを受けていたこともあり、「じゃあ先生、過去の私に『そんなバカなことはするな!』って言ってきてくださいよ」って言い返したんですけどね(笑)。

乳がんを患ったことで視野が広がったような気がする

――息子さんに乳がんのことは話したのでしょうか?

室井さん はい、話しました。当時、息子は19歳ですごくショックを受けていましたね。でも、先生には「この乳がんで死ぬことはないから」と言われていたので、息子にもそう伝えました。手術自体、膵臓の手術に比べると、とてもラクに感じられました。

――術後は何か治療がおこなわれたのでしょうか?

室井さん 放射線治療を受け、その後は緩い作用の抗がん剤を毎日飲んでいます。この抗がん剤は20年飲まないといけないらしいんです。その20年間は年に2回、経過観察で病院を受診するようにと言われています。

――ご病気を経験し、ご自身のなかで何か変化はありましたでしょうか?

室井さん もし、私が乳がんになっていなかったら、がんを患った人に「ステージⅠなら軽くてよかったね」と言っていたかもしれないです。でも、ステージⅠのがんでもその後、治療が続きます。働きながらがんの治療を受けている人ってすごく多いんです。そうした現実を知ったことで気づかえることもありますし、ある意味、視野が広がったような気がします。

――ご病気と向き合うなかで不安を抱えることもあったかと思いますが、どんなことが支えとなったのでしょうか?

室井さん やっぱり息子ですね。特に膵臓の手術を受けたころはまだ息子が小さかったので、「息子を残して死ぬわけにはいかない」、「息子の成長を見たい」。その一心でした。

――その息子さんもだいぶ大きくなられたことと思います。

室井さん 息子は大学生になりました。息子が成人し、パートナーができて支えてもらっていますし、毎日10時間くらい寝ていますし、今の私はすごく気が緩んでいますね。

――最近の体調はいかがでしょうか?

室井さん 悪くはないですね。ただ、疲れやすくなりました。若いころは息子を連れて友だちと仕事が終わった後に弾丸ツアーに出かけたりしていましたが、もう無理です。今は温泉に浸かりながら昔話をするのが楽しいですね。

女性は自分で自分をご機嫌にすることが大切

――室井さんの元気の秘訣も教えていただきたいです。

室井さん 私は我が強くて欲張りな人間だと思うんです。ずっと思っているのは「自分の人生は自分のものだから、自分で好きなようにする」ということ。だから嫌なことはしたくないし、誰かに合わせたりもしません。その結果、まずい状態になったとしても自分で責任をとるって思っています。

あと一喜一憂しないことですね。私、糖尿病の影響でちょっとむくんでしまうことがあるんです。でも「シワが伸びて若く見える」って思うようにしています。心はすごく大事なものだから、「私はもともとイケてる」って思うくらいがちょうど良いんじゃないかなぁって。

――心の持ち方が大切ということですね。

室井さん ある程度の年齢の女性にとって一番大事なのは、自分で自分を気持ち良くすることだと思うんです。例えば、旬のおいしいものを安く買えたり、育てていた花が咲いたりしたら、それだけでうれしくなりますよね。そういうちょっとしたことで良いと思うんです。

――室井さん流の自分で自分を気持ち良くする方法を知りたいです。

室井さん 年に1回くらいすごく落ち込むことがあるのですが、そういうときは新しい靴を2足買うんです。新しい服を着たり、新品の香水を開けたりすることもありますね。あと、私は歯医者さんが嫌いなので、歯医者さんの帰りには必ずドラッグストアに寄って、400円のリップクリープとか、500円のアイシャドウとか、プチプラのコスメを1つ買います。嫌なことを頑張った自分へのご褒美です。

――室井さんもプチプラコスメを買ったりするんですね。

室井さん もちろんです。プチプラコスメ、大好きです。毎日、自分のご機嫌を取れるのは自分だけですから。自分で自分の気分を上げる方法を持っておきたいですよね。

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PROFILE:室井 佑月さん

1970年青森生まれ。ミス栃木、モデル、女優、レースクイーン、銀座のクラブホステスなどの職業を経た後、97年に「小説新潮」5月号の「読者による『性の小説』」に入選。以後、「小説現代」「小説すばる」などに作品を発表し、98年に『熱帯植物園』(新潮社)を上梓した。 さらに同年『血い花(あかいはな)』(集英社)を発表。99年9月には『piss』を講談社より刊行した。最近では活動の幅を広げて、若い女性の代弁者、恋愛の教祖、そしてお母さん、という立場からテレビ・ラジオでコメンテーター、シンポジウムでパネリストとして活躍中。近著に「ぷちすとハイパー!」(中央公論新社)「ママの神様」(講談社)がある。


著者:ライター 熊谷あづさ

ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。

ベビーカレンダー/ウーマンカレンダー編集室

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