1. トップ
  2. グルメ
  3. 香港のお袋の味から豪華版まで、滋養あふれる広東スープ。

香港のお袋の味から豪華版まで、滋養あふれる広東スープ。

  • 2022.1.3
  • 772 views

日頃の料理はお手伝いさんまかせもしくは外食という人も多い香港で「お袋の味」というイメージにもっとも近い料理といえば「広東スープ」だ。

「仕事が忙しくて疲れていると言うと、実家の母が『スープを飲みなさい』と作って届けてくれる」という話をよく耳にするし、体調を崩したと言うと「ちゃんとスープは飲んでる?」と香港人女性に聞かれたりする。

広東スープには、1年中その時の気候や食べる人の体調に合わせた食材を組み合わせるレシピが無数にあり、効能も美肌から疲労回復、むくみ解消、解毒などさまざま。

家庭では大鍋にどっさり材料を入れて煮込むのが普通だけれども、高級店やスープ専門店で主流なのは、材料を入れたひとり分のうつわを蒸し器に入れて3~5時間ほどじっくり加熱する「ダブルボイルドスープ」という調理法。手間がかかる分高価になるが、丁寧な調理法によってクリアに仕上がるスープには食材の旨みと栄養分もじんわり最大限に引き出されて、おいしくて身体にいいことこの上なし。

なかでも、フルーツや野菜をくり抜いてまるごと器として使用したダブルボイルドスープは、プレゼンテーションも楽しい。とくに伝統的なココナッツのスープは、体内の余分な熱を冷まし身体をすっきりさせつつ、しっかり栄養補給をしてくれる。ベースの味はチキンやポークの組み合わせが一般的だが、コラーゲンたっぷりの高級食材「魚の浮き袋」をメイン具材にしたココナッツスープが、最強の美肌スープとして女性に人気の一品だ。

また、宴会を盛り上げる広東スープといえば、巨大な冬瓜をまるごと使うタイプ。10人以上でシェアできるボリュームがあり、テーブルに運ばれてくると歓声が沸くこと必至。

また、パパイヤは「フルーツだからデザート?」と思ってしまいがちだけれども、広東料理にはパパイヤの中に白キクラゲやフカヒレなどを入れて丸ごと蒸したスープもある。見た目の華やかさだけでなくパパイヤの甘さが優しく引き出されて、ベースの上湯との相性がとてもいい。ちなみに広東料理の基本となるスープのベースである上湯は、一般的に金華ハム、鶏丸ごと一羽、豚骨、生姜、ネギなどを使って調理されている。

パパイヤはビタミンCがたっぷりで、一緒に煮込むほかの食材のコラーゲンの吸収率をよくする役割を果たす。少しずつ果肉を削ってスープとともに食べると、ほっこりとした甘さで美味。

スープでよく使用される食材を挙げるとすると、血液循環をよくするなど婦人科系の悩みがある人におすすめなのがクコやナツメ。苦みのある漢方の食材がスープに使用される場合に、甘みを加えて味のバランスを整える役割を果たし、見た目も華やかにしてくれる。

最高級食材を手間ひまをかけて調理したゴージャスな広東スープであれば、1杯¥4,000~¥15,000ほどの価格も当たり前。一方でより日常的に広東スープが飲めるようにと、スープ専門店のデリバリーやレトルトパックなど¥1,000未満で買える手頃な選択肢も充実しており、忙しい人に人気が高い。

カジュアルなスープ専門店のメニュー。1杯¥800くらいから食べられる。

豚肉、冬虫夏草、龍眼などが使われたデリバリー専門店のスープ。

ちなみに年間を通じて温かい香港でも、12月~2月頃は最低気温が10度を切ることもある。冬に身体を温めるための伝統食と言えば蛇スープ!蛇と聞くとぎょっとするかもしれないが、蛇肉の味はほとんど鶏肉と変わらず癖はない。1895年創業の蛇料理店、蛇王芬(サーワンフン)のスープベースには、蛇の骨、干しアワビ、鶏肉、陳皮などのほかに多数の食材が使われており、歴史的に有名な蛇料理名人から受け継いだレシピは門外不出。食べているとたちまち体がホクホクと温まって元気が出てくる。

老舗蛇料理店、蛇王芬の蛇スープ。具として蛇肉と鶏肉がほぼ同量使われているので、蛇料理が初めての人にも抵抗が少なく食べられる。

漢方の基本は、病気を未然に防ぐこと。それをおいしくいただけるのが、滋養あふれる広東スープだ。今日も香港中でありとあらゆる広東スープが、香港人の心と身体を労わり、整えている。

元記事で読む
の記事をもっとみる