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藤田貴大がこっそり集めているもの「役者と等しく大切にする椅子と照明」

  • 2021.12.27
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役者と等しく大切にする
椅子と照明

藤田貴大
劇作家、演出家

東京郊外の某所。藤田さんが主宰する劇団の倉庫には、夥しいほどの椅子や机、照明器具、オブジェがぎっしりと詰まっている。まるで古道具屋のようだ。

「普通の演出家は公演ごとに舞台美術を業者から借りるのですが、僕は一度もそうしたことがなくて、すべて自分で選んで購入しているんです。旗揚げ以来ずっと変わらないので、その蓄積がものすごい量になっています。どれも捨てられないからたまる一方で(笑)」

骨董屋で見つけた古いスタンドライトや俳優さんの親戚が亡くなって引き継いだ家具一式、廃校になった学校の備品だった椅子、オフィス仕様のスチール椅子など、時代も国もテイストもさまざまだ。

「舞台美術だけでなく音響も照明も他人任せにせず、自分の手の届く範囲でやりたいという気持ちがあります。俳優をキャスティングし舞台に立たせることと、舞台上に椅子一脚を置く行為は僕にとって等価なのです。だからひとつひとつ思い入れのあるものを使いたい。今いちばん凝っているのは照明で、劇場に備え付けの光量の強い照明以外に、自分で入手したデスクランプやスタンドライトを間接照明として使います。それも重要な演出のうちだから。作品のストーリーとは別のところで、舞台上の道具にまつわる記憶や思い出が、役者たちのお守りみたいになってくれるんじゃないかな」

東京や京都、遠征先のイタリアの骨董屋などで購入したもののほか、俳優さんや知人から譲り受けた家具や、藤田さんが通った幼稚園の椅子なども。最近手に入れたお気に入りは工事現場用のバルーン投光機(右奥)。

「劇団のスタッフと海外に行くと、僕がまた大きな家具を買うんじゃないかと皆ヒヤヒヤしています(笑)」

GINZA2021年8月号掲載

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