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1億円以上貯めた「地味な会社員」に直撃して気づいた彼らが共通して"やらないこと"3つ

  • 2021.12.24
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金融資産が1億円以上ある人は、どのような思考・行動の特徴があるのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「彼らは、仮想通貨やFXで一躍億万長者になったという特別な存在ではありません。とくに変わったことをするわけでもなく1億円という大きな資産を築いている。もしかしたら、あなたの隣に座る同僚が『億り人』という可能性もあるのです」という――。

会議中のビジネスチーム
※写真はイメージです
資産1億円以上の世帯は2.4%

最近、「億り人」という言葉がメディアやSNSによく登場するようになりました。これは昔、アカデミー賞外国映画賞を受賞した映画で納棺師を描いた『おくりびと』にお金の億円を掛け合わせたことばで、一般的には純金融資産が1億円以上ある人のことを「億り人」と言います。最近、私は『となりの億り人』(朝日新書)という本を書いたのですが、実は1億円以上の金融資産を持つ人はわれわれが考えている以上に多いようです。

2020年に野村総合研究所が発表したレポートによるとわが国で純金融資産1億円以上を持つ世帯の数はおよそ133万世帯あるそうです。日本における一般世帯数は2020年時点で5572万世帯ですから、その割合は約2.4%です。つまり100人いればその内の2~3人は億り人だということになります。私が今住んでいる団地は1500世帯ほどありますので、この割合で計算すると36世帯は「億り人」だということです。ひょっとしたら私の家の向かいに住む人やとなりに住む人もそうなのかもしれません。私の書いた本、『となりの億り人』というタイトルにはそんな意味も込められているのですが、このタイトルにはもう一つの意味もあります。

株の短期売買で巨額の資産を築いた人はいない

それは億り人になった人は特別な人ではない、ということです。一般的には「億り人」というと、“仮想通貨が爆上げして一躍億万長者に”とか“FXであっという間に1億円を達成!”みたいな記事やコメントが多いです。でもそういう人は全くいないわけではないでしょうが、実際には恐らく数万人に一人ぐらいで、とても100人に2~3人などという割合でいるわけがありません。

実際に私は40年近くにわたって3万人以上の個人投資家の投資相談を受けてきましたが、株の短期売買を続けて巨額の資産を築いた人はこれまで一人も見たことがありません。ところが地味な普通の会社員で、特に変わったことをしていなくても1億円以上の資産をこしらえた人はたくさんいるのです。短期売買どころか、本書でインタビューした億り人の1人に女性のビジネスパーソンがいますが、彼女は株式投資や投資信託すらそれほどやっていないと言います。

共通する考え方と行動

私が書きたかったのは「どうすれば億り人になれるか?」というノウハウではありません。やり方は人それぞれで、本書の中でインタビューした人たちもそれぞれ全く違ったやり方で億り人になっています。実はノウハウよりも大事なことは億り人になった人の思考方法や行動です。私は彼らに共通する考え方とやっていることがどのようなものかを明らかにしたかったのです。

実際に自分が相談を受けてきた人たちの話や自分が取材した億り人の人たちに共通することを書いています。それらの共通点の中で最も大事なことは「自分なりの価値基準を持ってお金を使っている」ということです。

ここに多くの人があまり認識していない事実があります。それは「収入のコントロールは難しいが支出のコントロールは可能だ」ということです。会社員であれば収入は安定しているものの、それを増やすことは容易ではありません。自営業では収入は極めて不安定です。ところが支出は自分でルールを決めることである程度抑制することは可能です。ただし、これは節約をしなさいということを言っているわけではありません。自分にとって価値のある支出かどうかを見極めなさいということを言っているのです。

黒板に書かれた上向きのグラフ
※写真はイメージです
億り人がしないこと3つ

面白いことに私がインタビューした億り人の人たちには明らかな共通点がいくつかあります。それは、

1.誰もあまり保険に入っていない
2.誰も節約をしていない
3.誰も“何となく消費”はしていない

ということです。

保険はとても大事なものなので、慎重に考えるべきです。保険の目的は貯蓄ではなくて保障ですから、できるだけ少ないコストで多くの保障が得られるコストパフォーマンスの高い保険を選ぶべきだし、そもそも社会保険でカバーされる金額をまず知り、その後に足りない分を民間の保険で補うという考え方が徹底されています。したがって自動車保険や火災保険にはみんな加入していますが、生命保険や医療保険は世間一般の平均よりもはるかに少ない金額になっています。

不要なものには一円たりとも使わない

また、節約というのは自分が欲しいものややりたいことでも我慢するというニュアンスがありますが、彼らはそういうことはやっていません。節約ではなく、あくまで意味のない無駄な支出かどうかを自分で判断して無駄なものへの支出をやめているのです。つまり自分にとって価値のあるものにはお金を惜しまないものの、不要と感じるものには一円たりとも支出をしないということです。

その結果として“何となく消費”はやっていないということなのです。“なんとなく消費”とは会社の帰りに必ずコンビニに寄って何か買って帰るとか、言われるままに深く考えずに入って保険料を払い続けている保険とか、最初は良いと思ったけどあとは全く使っていないサブスクリプションのサービスとか、いわゆるそういったものを厳しくチェックして無駄な支出である“なんとなく消費”を無くしているのです。このようにして、必ずしも節約をしているわけではなく「自分なりの価値基準を持ってお金を使っている」ということなのです。そして支出をコントロールすることでできたその資金を投資なり貯蓄なりに回しているということです。

20年間で5000万円の積立投資

昨今、投資信託の積立投資で億り人になったという人も見かけますが、忘れてはいけない大事なことは投入するお金の多寡です。実際にこの20年間で国際分散投資をしながら積み立ててきたことで1億円を達成したという人の例を見てみますと、20年間でコツコツと積み立てた金額の累計が約5000万円となっており、それが20年間の値上がりによって1億円を超えてきています。ということは平均すると年間250万円ぐらい積み立てをしてきたことになります。月額になおすと20万円ちょっとです。これはそれほど簡単にできる金額ではありません。

大江英樹『となりの億り人』(朝日新書)
大江英樹『となりの億り人』(朝日新書)

しかしながら私が本の中でインタビューした人たちもその多くはやはりそれぐらいの金額を実際に積み立てに回しているのです。彼らが一様に言うのは「その積立額の半分ぐらいは、無駄な支出を見直すことで実行が可能だ」ということです。つまり、上手に運用して儲けることよりも支出をコントロールして貯蓄や投資に投下する金額を増やしてきたという、ごく当たり前のことをしてきたにすぎないのです。

結局、メディアでよく取り上げられる「短期間で億り人になった」というエピソードは単にたまたま起きたことにすぎず、再現性はありません。自分なりの価値基準を持ってお金を使い、貯蓄や投資を地道に積み重ねていくことをなるべく早い時期から実践していくことが億り人への道と言っていいでしょう。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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