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【西村宏堂のOut of the Box!#16】人生は映画。あなたが求めるストーリーは? 生き方と好きな映画はつながっている

  • 2021.12.24
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国内外で活躍するメイクアップアーティストにして僧侶、LGBTQ活動家でもある。そんな多様な顔を持つ西村宏堂さんによる連載コラム。タイトルの“Out of the Box”には「常識や枠にとらわれない」という意味があります。セカンドシーズンは、宏堂さんがハッとする気づきを得た出会いや体験、名言などを紹介しながら、“見えない箱から自分自身を解き放つ”ための問いをみなさんに投げかけます。あなたなら、何と答えますか?

もう年末ですね。カレンダーというものは人が決めたものなのに、年末年始は世の中がピーンとした不思議な空気に包まれるような気がします。新しい年を迎える人々の緊張感がこの空気を作り出しているのかもしれません。

さて、最近本棚を整理しているときに、幼稚園のときのお絵かきノートを見つけました。当時の私は自分と映画やアニメのヒロインを重ね合わせていました。今回のコラムは幼少期に見たキャラクターたちが、私が成長する上でどのような影響を与えていたかについてお話しします。

大好きだったセーラームーン(本人提供)

セカンドシーズンから、毎回ひとつの問いをみなさんに投げかけています。
それは、私たちが当たり前だと思っていることを問い直し、価値観をアップデートするためのクエスチョン。

読者のみなさんだけでなく、私自身への問いでもあります。
よろしければ、あなたもぜひいっしょに考えてみてください。

そして、あなたの考えを文末のコメント欄で共有していただけたらうれしいです。
引き続き、できるかぎりお返事もしていきますので、時々チェックしてみてくださいね。

今回の問いはこちらです。

Q.人生は映画。あなたが求めるのはどんなストーリーですか?
そして、その物語に添えたいテーマソングは?

みなさんには大好きな映画、不思議と心惹かれる映画はあるでしょうか?
私は幼い頃からプリンセスの物語が大好きでした。

ディズニー映画の『リトル・マーメイド』『アラジン』『シンデレラ』をはじめ、『プリティ・プリンセス』(原題:The Princess Diaries)や『美少女戦士セーラームーン』など、プリンセスやプリンセスのような主人公になぜか強く惹かれ、夢中で観てきました。

セーラームーンが大好きだったころ(本人提供)

共通するのは、主人公が苦難や修行を乗り越えて成長し、やがて他者を助ける立場の人物へと大きく開花するストーリー。

そして、数年前のあるとき、ハッと気づいたのです。

私は、そんなプリンセスたちに自分自身を重ね、まるで人生の映画をディレクションするように、日々の選択を積みかさねて、ここまで歩んできた。

こういうストーリーを、自分は無意識のうちに求めて生きていたんだ──と。

朝日新聞telling,(テリング)

好きな映画は生き方とつながっている?

世の中には、さまざまな映画がありますね。

冒険譚にロードムービー、ドタバタコメディ、ゆったりとした穏やかな物語。どんなストーリーに惹かれるかは、本当に人それぞれです。

そして、これは私の考えですが、好きな映画のテイストって、その人の生き方と不思議とリンクしている気がします。

実際、逆境続きの物語や悲劇、泣ける映画が好きな人は、苦労を嘆きながらも、実はそんなストーリーの人生を無意識に(ときには意識して)選んで生きていたりしませんか?

私はかつて、つらいことがあるたびに「なぜ?」と心の中で嘆いていました。

けれど、今となっては、差別や苦難さえ、自分を奮起させる“糧”として必要だったんだと思っています。本気で逃げようと思えば、逃げることだってできたのに、そうしなかった。なぜなら、逆境がなければ、私はきっと成長できなかったから。

だってね、セーラームーンは、一度めちゃくちゃに打ちのめされないと、スーパーセーラームーンになれないのです。「試練なんかナシで最初から覚醒できたらいいのに……」と思うけれど、そうはいかないのが人間の常でしょう?(笑)

私の場合、「そうか、苦難さえもあえて求めていたんだ」と気づいたら、「もう苦しむのは終わりにして、次のステージへ行こう」と思えて、すごくスッキリしました。「試練を経て開花したプリンセスのように、これからはみんなのために、苦しんでいる人のために働くんだ」って。

そう、イジワルな継母たちとたたかう物語の第一部は、もう終わり。

ガラスの靴を履いて、ここからは第二部の輝かしい活躍がはじまるわけです。

プリンセスたちの物語から学んだ教え

プリンセスたちの教えから、私はたくさんの勇気をもらってきました。

「みんながやっていることでも『違う』と思ったら、自分の心に従って進みなさい」
「つらくても、あきらめなければ、ある日いいことが起こり、未来がひらかれる」
「ここぞというときには、ぐいっと前に出る勇気を」
「チャンスが来たら、ガラスの靴を履きなさい」

私自身が“ガラスの靴”を履いたのは、「お坊さんになってメイクしたっていいんだ」「私の人生にはこういう役割があるんだ」と吹っ切れたときでした。

私がメイクしてハイヒールを履いて変身するのも、シンデレラやセーラームーンと一緒なんですよね。

昔は自分を投影できるようなLGBTQのヒーローが見つからなかったし、特に男性のからだで生まれたプリンセスなんていなかったから、「じゃあ、自分がなろう」と思ったのです。

朝日新聞telling,(テリング)

歌をうたえば、苦難も物語の一場面になる

そして、人生のさまざまな場面で力をくれたのが、歌です。

逆境に立ち向かうプリンセスたちの歌には、名曲がたくさん。
いくつかご紹介しますね。

◆「朝の風景」(原題:Belle)──映画『美女と野獣』
自分の個性が周りに理解されず、居場所が見つからないときに。

◆「乙女のポリシー」──TVアニメ『美少女戦士セーラームーン』
寂しくてもつらくても、前を向かなければならないときに。

◆“Through the Rain” マライア・キャリー
冷たい雨に打たれても、また立ち上がろうとするときに。

◆「スピーチレス~心の声」(原題:Speechless)──映画『アラジン』
理不尽な物事に対して、声を上げなければならないときに。

歌をうたえば、今ここにある苦難も物語の一場面になります。
自分の人生を、映画のシーンにするんです。

誰もが人生の映画をつくりながら生きている

私自身は、見知らぬ文化や新しい場所、変化に興味があって、それでこそ人生が楽しくなると思っています。そして、つらい試練や歯を食いしばる経験なくして、成長や進化はない──というのが私の映画の設定。だから、私はそんなストーリーを生きています。アメリカへ渡ったのも、お坊さんになる修行をしたのも、私にとって必要なプロットでした。

さて、あなたは自分の人生の映画を、どんなストーリーにしたいですか?

そして、その物語に添えたいテーマソングは?

人生の岐路に立ったとき、周りの人に何か言われたとき、悩んだとき。
ぜひ自分の心にたずねてみてください。

「もっと冒険したい」でもいいし、「私はのんきに暮らすのが一番」でもいい。
マジョリティの道を行くのがお好みなら、それだってあなたのストーリー。
自分の人生の映画は、主役も監督もあなた自身なのだから。

■西村宏堂のプロフィール
1989年東京生まれ。米パーソンズ美術大学卒。メイクアップアーティストにして僧侶、LGBTQ活動家。日本語、英語、スペイン語を操り、ミス・ユニバース世界大会などでメイクを手がける。国連、イェール大学など講演多数。NHK、CNN、BBCなど国内外のメディアに取り上げられ、Netflixの番組「Queer Eye」にも出演。2021年にTIME誌「Next Generation Leaders」に選出された。著書に『正々堂々』、2022年には英語、独語で"This Monk Wears Heels"を出版。

■原田潤のプロフィール
合同会社アーキペラゴ代表。グラフィック&WEBデザイン、文章、写真、旅する本屋など、様々な手段で価値あるコトを伝える媒介者として活動しています。外界の刺激を受け取りすぎるといわれるHSPですが、自分の特性を生かして社会と関わっていければと。慶應義塾大学法学部、桑沢デザイン研究所卒。東京生まれのミレニアル世代。好物は本と旅と自転車、風の匂い。

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