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『こくん』【今日の絵本だより 第259回】

  • 2021.12.20
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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

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『こくん』 村中李衣/作 石川えりこ/絵 童心社 1430円

今から14年前、2006年の12月20日に、バリアフリー新法が施行されました。 高齢者や障害者、妊産婦などの町の移動時や施設利用時の利便性、安全性を向上させるための法律です。 今年の法改正では、さらにハード面だけでなくソフト面、「心のバリアフリー」の推進が打ち出され、「心のバリアフリー」の教育や啓発を国が支援していくこととなりました。 そんな「心のバリアフリー」の第一歩としておすすめの絵本が、『こくん』です。

主人公は長い入院生活を終えて、大好きな「つばさえん」にようやく登園できることになった、ちさと。 「わたしは、からだを じぶんの おもうように うごかすのが むずかしい。 でも、びょういんで いっぱい れんしゅうした。」 歩行器で体を支えて歩くちさとのところに、しゅんくんがかけてきます。 「なんで そんな へんてこなの つかうんか? じゃまじゃないんか?」 「いいの!」 「てつだってやる」 「いらない」 ちさとは、はっきり答えます。

ホールで行う、歌の会。 ステージの上までは、3段の階段があります。 息を吸って、こくん、とうなずくちさと。 「よし、ぜったい じぶんで あがる。」 歩行器から離れ、階段にひじをついて、腕だけで体を支え、階段を上がろうとします。 「ちさとちゃん、せんせいに だっこしてもらえば?」 心配するみんなの声を、 「いいの!」 とさえぎったのは、しゅんくんです。 「こいつは じぶんで やるんだ。 あたまを こくんって したら、かならず じぶんで やるんだぞ!」

ちさとがなぜ体を思うように動かせないのか、ちさとの身に何があって、今はどういう経過なのか。 それは一切描かれていません。 でも、そういう背景が入らないからこそ、大人の読者も子どもと同じ目線で、目の前の、ありのままのちさとに向かい合える気がします。 お話の後半、ちさとは再びこくんとうなずき、大きな挑戦をします。 それを見守っていたのは、しゅんくん。 長い説明や理屈よりも、この絵本一冊で「心のバリアフリー」がすっと胸になじむ、そんな貴重な作品です。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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