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『チョコレートパン』から考える、何度も読みたくなる絵本の秘密

  • 2021.12.19
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『チョコレートパン』長新太/著 表紙

ワクワクを倍増させる現実と空想世界の“境目”。

『チョコレートパン』のように、大人が読んでも「?」となるあり得ない設定の物語。が、戸惑う大人を横目に子供たちは大熱中。それってなぜ?
「大人が読む本と絵本の最大の違いは、それが“コミュニケーションツール”であるという点です」と今福理博先生。

「子供が絵本を読むとき、絵柄にワクワクしたり、そこから得られる情報によって新しい世界を知ったりするという楽しさもありますが、最大の喜びは大人と一緒に遊びの時間を過ごせているという実感です。何度読んでも正解がなかったり、現実ではあり得ない設定だったりする物語は、大人と一緒に空想したり、自分だったらどうするかを考えたり、繰り返し読んでも会話が弾みますから、子供は大好きなんです」

磯崎園子さんによると、昨今人気なのは、「もしかしたら自分の身にも起こるかも?」という、現実と空想の境目を描く本。「パンが降ってきたり、壁の隙間から誰かが出てきたり。身近なものや場所が題材になると、空想の中に一抹の現実感が出てきて、子供はよりワクワクするんでしょうね」

『チョコレートパン』長新太/著

『チョコレートパン』長新太/著 表紙

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『チョコレートパン』長新太/著

山の中にある「チョコレートの池」。パンやゾウや自動車、色々なものが池に入り、チョコレートまみれになる、ナンセンス絵本の金字塔!2010年刊。福音館書店/¥990。

『こねて のばして』ヨシタケシンスケ/著

『こねて のばして』ヨシタケシンスケ/著 表紙
『こねて のばして』ヨシタケシンスケ/著 中面

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『こねて のばして』ヨシタケシンスケ/著

パン生地のような物体をこねたり、のばしたり、巻きつけたり。最後まで正体がわからないけど、なんだか面白い!ヨシタケワールド全開の不思議絵本は、親子で体を触りながら楽しめる“スキンシップ絵本”としても人気。2017年刊。ブロンズ新社/¥1,078。

『すいかのプール』アンニョン・タル/著 斎藤真理子/訳

『すいかのプール』アンニョン・タル/著 表紙
『すいかのプール』アンニョン・タル/著 中面

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『すいかのプール』アンニョン・タル/著 斎藤真理子/訳

大きなすいかがパカッと割れたら、うきわを持って出かけよう。巨大なすいかのプールの中で泳ぐという発想が子供の憧れを刺激する韓国発の絵本。「さっく、さっく」というすいかの果実を踏む音、写実的で美しい絵が、いっそうワクワクを刺激する。2018年刊。岩波書店/¥1,870。

『かべのすきま』中西翠/文 澤野秋文/絵

『かべのすきま』中西翠/文、澤野秋文/絵 表紙
『かべのすきま』中西翠/文、澤野秋文/絵 中面

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『かべのすきま』中西翠/文 澤野秋文/絵

一人で家にいるとき、なんだか気になってしまう「壁のすきま」。そこはかとない子供の恐怖心を題材にしつつも、そこから“大阪のおばちゃん”が出てくるという驚きの展開を見せる物語。自分の家のすきまからは何が出てくるだろうと想像が膨らむ。2019年刊。アリス館/¥1,540。

『もしものくに』馬場のぼる/著

『もしものくに』馬場のぼる/著 表紙
『もしものくに』馬場のぼる/著 中面

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『もしものくに』馬場のぼる/著

「もしも羽があったら……」「もしも小人になったら……」。子供が一度は空想する"もしも"の世界に12人の子供たちが出発。様々な個性の子供たちが、そこでどんなふうに行動するか。細かく描かれたそのリアクションを見るのも楽しい。2021年刊。こぐま社/¥1,320。

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「絵本ナビ」編集長・磯崎園子 イメージイラスト

磯崎園子(「絵本ナビ」編集長)

いそざき・そのこ/大手書店の絵本担当の経験と自身の子育て体験を生かして、絵本情報サイト「絵本ナビ」のコンテンツ制作を行う。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)。

twitter:@isozakisonoko

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教育学博士・今福理博 イメージイラスト

今福理博(教育学博士)

いまふく・まさひろ/武蔵野大学教育学部准教授。発達科学、発達心理学の専門家として乳幼児の言語獲得やコミュニケーション能力を研究。著書に絵本『どこかな どこかな?』(エンブックス)。

公式サイト:https://note.com/masa_ima/

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